てふてふ

青海

てふてふ

 枯れ草匂う十一月。ひらひらと舞う一匹の蝶々。黄色のはねはぼろぼろで、雲ひとつない空を彷徨さまよう。


「ひとりぼっちなんかじゃないのよ」


 蝶々は瞬きをひとつする。それから、小さく小さく微笑んだ。


「だって貴方がいてくれるから」


 蝶々はふわりと一輪のコスモスにとまる。秋の風にゆらゆら揺れる薄桃色の花。

 蝶々は身を任せてゆらゆら揺れる。


「貴方と一緒なら何もいらないわ」


 そして、コスモスにそっと口づけする。蝶々は照れたように笑った。

 ふわりと空に舞い上がる。黄色の翅が太陽の光でキラリと輝いた。

 空高かく旋回すると、ゆっくりゆっくり降りてくる。

 コスモスの少し上で何度か羽ばたくと、今度は枯れ草へと止まった。


「貴方に会えて嬉しかったわ」


 蝶々は寂しそうにコスモスを見上げた。

 コスモスはただただ風に揺れる。

 それから、ゆっくり目を閉じる。長い睫毛が涙に濡れた。

 もう一度蝶々は笑う。


「叶わないって分かってるけど、まだ貴方を好きでいていいかしら?」


 蝶々の涙が風に飛んでいく。


「私にも沢山お友達がいたのよ。恋だってしたわ。でも、いつのまにか私だけになってたの」


 蝶々はため息をついた。

 そして、自分の翅を見つめる。


「こんなにボロボロになってしまって。恥ずかしいわね」


 コスモスが秋の風にさわさわ揺れた。

 どこまでも続く青空を見上げて、蝶々はため息をつく。


「それでも貴方は、いつもここで、私と一緒にいてくれた。ありがとう」


 恥ずかしそうに笑って、翅を動かす。


「あら、そろそろ時間ね」


 力なくひらひらと飛ぶとコスモスの足元にとまる。

 そして、目を閉じた。

 枯れ草がサラサラと音をたてて揺れている。柔らかな枯れ草のベッドに身を委ね、ボロボロになった翅を弱々しく動かした。

 もう一度だけ目をあけると、コスモスをみあげる。うっとりと目を細め、微笑む。


「あいしてるわ」


 コスモスが優しく揺れた。

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てふてふ 青海 @chad008

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