第12話

そして、彼は僕の目の前から消えた。


真っ赤に染め上げて。


僕のことも塗り潰すかのように。


目の前で・・・。



無機質な塊に潰され、呆気なく死んだ。


彼から、生きた証が流れ出す。


ドクドク・・・


彼をこの世から、消し去ろうとするように。


それを、周りはただ観てる。


誰かのBad endを、嘲笑うかのように、横を通り過ぎて行く。


どうでも良いのだろう。


関係の無いものだから。


暫くして、時間が経ったのだろう。


彼の血が顔にかかる髪の毛を固めた。


辛うじて見える表情は、笑みを浮かべていた。



「なぁ。


そんなに死にたかったのか?


確かに、全ての生き物はいつかは死ぬ。


まだ、未練はあると思うのだけど・・・。



それなのに、何故笑えるんだよ。


死んでからも、こんな扱いされて嫌じゃ無いのか?


まわりだって、そう思ってる奴が大半だ。


それなのに、人には同じ思いをさせるんだな。


人間って、分かんないよ。」


そう小さく呟いた。


僕が呼んだ警察のサイレンが遠くに聞こえてきた。


そうして、僕は目を閉じた。


何も見たくなくて。


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