No. 003 / Positive 03 「身近なはずの命」

「死は命の喪失でもってしか語りえない」



「自殺なんて理解できないと言い、悪人の死に納得する。

 一番に恐るべきは無頓着であることだ。

 命と向き合うことに、考えすぎるという場合はない」


「あるいは様々な人間に助けられて、人間は健やかに生きていける。

 もしくは様々な人間に影響されて、人間は緩やかに死へ向かっている。

 人の手によって産み落とされるのが命であるならば、

 人の手によって死を招く可能性があることも忘れてはならない」


「大前提の根本に立ち返れば、命は生まれた瞬間から死に向かっている。

 誕生――すなわち出産こそが死への第一歩である」


「死を遠ざけたい人間が自殺を悪であると断ずる。

 けれど、生きることを考えるだけが人生ではない。

 命の終わらせ方を考える自由は誰もが持っているのだから、考え方に違いが生じるのは当たり前である」



「最初から死ぬ理由のある者などいない。

 生きていたいと願う気力さえ失ってしまうから、人は死に近づくのだろう」


「自殺とは、命ではなく心の問題である。

 現状を拒み、心が許容量を超えてしまうからこそ、そのような行動をしてしまうのだ。

 命の大切さを理解していないのではない。

 心の問題は、時に命の重さを上回るのである」


「命を軽視したから自殺が行われるのではない。

 心が軽視されたから自殺に行き着くのだ」


「他人の意見を無視して『自殺なんて言語道断だ!』と糾弾する人間がいる。

 その発言こそが、自殺を真剣に考えてしまう当事者の心を傷つけてしまう。

 誰よりも命と向き合っている、そんな人間の切迫した気持ちを切り捨ててはならない」



「『死にたい』と願う気持ちを責めることはできないとして。

 ただ一番に悲しいのは、素直に『生きたい』と思えなくなることだ」

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