140 『フラグ』
「……なんにせよ、やることは決まったってことか」
「ふむ、それではどうするかの?」
「なに、ほとんどさっきと同じことだ。悪いが、また付き合ってもらうぜ」
核を壊せというのが、核にいるレイアを起こせと変わっただけなのだ。ならば核の近くを蹴り裂いて、そこから内部に入って起こしにいけばいいという話だ。
「あ、あの、彰さん、私にも何か出来ることは……」
「あー、依織には……」
やはり、依織も今回の件に思うところがあるのだろう。けれど、その申し出の返答に、俺は詰まってしまう。
平時であればその糸で支援してもらったり、時間があれば紡いだ何かを織ってもらうということもできるのだが、今回に関しては時間もないうえ、彼女の支援でどうにかなりそうな相手ではない。そもそも、周りに何もない海上では糸をかける場所もない上、空亡の支援のお陰で空中を自由に動けることを考えると彼女に頼めることは無い。
「そう、だな、依織には……」
寧ろ、巻き込まれないようにどこかに避難していて欲しいというのが正直な気持ちだ。けれど、それは中々口に出しづらい言葉である。
「いやぁ、正直お主では足手まといであるぞ? この戦いにおいては、流石に役不足というか、戦力不足というかな。ぶっちゃけ、どこかに避難しておいて貰った方が、気を張らなくて済む分一番楽と言えるの」
「空亡、お前、そんな言い方は……!」
「しかし、事実としてはそうであろう? それとも何か、お主にはおやつに対する何かいい支援の手立てでも思い浮かんでおるのか?」
「それは……」
俺は、空亡の言葉に何も言い返せなかった。
依織の気持ちは無碍にしたくない。けれど、依織を戦いに連れて行くことは、ただ彼女を危険に巻き込むだけで、その実、協力してもらうことで助かることはほとんどないのは事実なのだから。
「分かりました、私はここでお二人の成功を祈ってます。確かに、私がついていっても足手まといにしかなりませんよね、気を使わせてしまってすいません……」
「いや、そんなことは……」
「いいんです。ですから、そのかわり、レイアさんを絶対助けてきてくださいね? 私、あの方に色々と文句を言いたいこともあるんですから」
納得したように語る依織だが、その表情はどこか寂しげだった。
「……分かった。安心しろ、絶対依織は連れ戻してくる。戻ったら、一緒にあの馬鹿娘に説教してやろうぜ? あぁ、それと、いい加減腹も減ってきたから、今日は帰ったら美味しい夕飯を考えておいてくれ。依織の飯も、いい加減恋しくなってきたからな」
「はい、任せてください! ですから絶対帰ってきて下さいね、レイアさんも連れて……!」
「あぁ、勿論だ。じゃあ、いってくる……!」
レイアの言葉を背に受けて、空亡と再び合体した俺は空へと飛び上がる。
向かい来る金色の大蛇、レイアがいるであろうそれを睨みつけて。
『なんというか、死亡フラグ全開であるのう』
……思っていても、それは言わないで欲しかった。
こうして、俺は再び、大蛇と向き合う。そして、最後の戦いが幕を開ける。
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