109 『準決勝』

「それじゃ、負けるんじゃないわよ?」


「ふん、それはこっちのセリフですわ。わたくし達と引き分けたのですから、程度の低い結果なんて許しませんわよ」


「あぁそうだ。オレとしても、あんな決着じゃ満足できないからな。決勝で、こんどこそ決着をつけるぞ。だから、負けるんじゃないぞ、レイア」


「ふん、上等よ。次はしっかり叩きのめしてあげるわ!」


 あたしの言葉に意気揚々と答えるメイディとミーティア。


 そんな二人とは反対方向――、右側の方の決闘場へとあたしと依織は進んでいく。


 そう、あたし達もミーティア達も、あの後の一戦をしっかりと勝ち抜き、三勝一分けで同率三位、ギリギリではあったけれど無事に決勝トーナメントへと進むことが出来たのだ。


 しかも、次にあの二人と当るのは決勝というのだから、おあつらえ向きな組み合わせだわ。まさしく、決勝で白黒付けろということね。


「それにしても、準決勝ですか。ここまでくると、なかなか思うものがありますねぇ」


「何言ってるのよ、まだ準決勝、決勝じゃないわ。さっさと勝って、次に備えるわよ。あたし達が狙うのは、優勝だけなんだから!」


 覇気のない依織の手を引いて、意気揚々と進んでいく。体調も万全、負けるなんてことは無い。そうして、辿り着いたのは前回とほぼ同じように見える広い決闘場の異空間。


「ぱっと見は、あんまりかわらないのよね」


 けれど、あたしのあの一件を経て、見た目は同じでもその耐久や安全性をより強固に――ジェーンだけでなくママの協力までも受けて、この決勝トーナメントのために生み出されたものらしい。あの自爆術式をぶっぱなしても、びくともしない――はず、というのはジェーン談だ。


 ……できれば、アレはもう使わないで、とも言われたけど。


「大丈夫なのかしら、ほんとに……?」


「ほら、なに呆けてるんですか。もう相手も来てるんですし、しゃきっとしてください」


「ん、そうね。他所事なんて考えてたら相手にも失礼だったわね。そもそも、ここまで残った相手、相手にとって不足は無いわ……!」


 私達の前に佇むのは、漆黒の鎧に身を包みその手に頭を抱える首無し騎士[デュラハン]と、短い真紅の髪に同じく大きな翼を翻す竜人[ドラゴニュート]の少女の二人組。


 種族としても高位の魔族。おまけに、あたし達とは違い四戦四勝と、戦績の上では書く上の相手だ。こうして相対するだけで、その実力は確かなものだとすぐに分かる。


「それじゃ、サポートは任せたわよ、依織」


「勿論、レイアさんの出番がなくなるぐらい、働いてあげますよ」


 隣の依織[あいぼう]に声をかける。


 そして、ジェーンの声が響き渡り、あたし達の戦いが幕を開ける。


 決勝でメイディとミーティアと再び合間見えることを夢想して――それが、適わないなんてことを予想することもないままに。

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