102 『ファッションではない』
「で、強引に戻ってきたのはどうしてですか?」
「そりゃ勿論、試合の為よ。初戦は勝てたけど、あと三戦あるんだから、しっかり対策とか準備はしないといけないでしょう?」
本戦の試合は、十組の中からランダムで相手を選び四回戦う、その中で勝ちが多かった上位四組が更に次の決勝トーナメントへいける、というものだった。もし、同率が複数いた場合には、負けた試合の戦闘時間の長さで決めるのだとか。
「まぁ確かに、それは一理ありますね。貴女らしくないことではありますが」
「ちょっと、馬鹿にしてるの? あたしだって、流石に戦略とか打ち合わせは重要だって分かってるわよ」
「分かっててくれるのなら、いいですけど。で、やっぱり問題は、ミーティアさんの参戦でしょうか?」
そう、先ほど知ったメイディのパートナー、ミーティアの参戦をどうするかという問題なのだ。戦ったからこそ分かる、不本意ながら認めざるを得ないあいつの強さ。
「えぇ、それもあるわ。けど、それ以上に。まさかあいつが参戦するばかりか、メイディと組んだのが問題なのよ……」
「ふむ、メイディさんが、ですか? ですが、メイディさんはあなたが一対一で戦って勝利していたじゃないですか。あの時は不意打ち染みた速攻でしたが、私もいるなら糸を使ってもっと上手くいけると思うのですけれど」
「それ、ミーティアがメイディを護ると考えてやれると思う?」
確かに、たいていの相手ならばこいつなら糸でどうとでもできると思う。だが、それはミーティア[あいつ]がいても問題なくおこなえるのだろうか?
「ふむ、それは、確かに難しいかもしれませんね……。けれど、メイディさんをそこまで警戒するのはどうしてですか? 確かにミーティアさんがいるのは脅威ですが、メイディさんの魔術は確かに中々のものですが、後ろからの援護でしたら私も出来るわけですし」
「……メイディの目、なんであんなのをしてると思う?」
「メイディさんの目、というとあの眼帯でしょうか? ファッションかなにか、魔族の貴族の方ですし、そういうものではないんですか?」
「あいつ、魔眼なのよ。簡単にいうと、見るだけで呪いを起こすような能力持ちなのよ、メイディって。んで、それが強力すぎて完全には制御できないから、普段はああして魔眼殺しの眼帯をつけてるのよ」
「えーと、なんですか、その漫画なんかにありがちな設定は。いや、最初見たとき想像はしましたけど、流石にそれをガチでやってるというのは中々予想外ですね……」
「いや、ファッションであんなのつけてると思うのもどうかと思うわよ……?」
何が悲しくて両目を覆って生活しなきゃいけないのか。確かに、アニメなんかで見てああいうのはカッコイイかもとか思いはしたけど、だからって生活の不便さを犠牲にしたくは無い。
「とりあえず、納得しました。確かに、見るだけで簡単に呪われる、なんてのは中々警戒しないといけませんね。あぁ、レイアさんが戦ったときにいきなり接近戦をしかけたのも、それを使わせないために、ということですか」
「えぇそうよ。メイディの魔眼は石化――といっても、実際に石になるんじゃなくて、身体が動かせなくなる、ってものよ。数年前の最後に会ったときは、指定した相手だけを止めるなんてほんの僅かしかできなくて、基本的にはあいつの視界に入ってる生き物全てを無差別にだったけど、今はどうなってるのかは分からないわ」
その時点ではまだ無差別だったが、ある程度コツはつかめたということも言っていた。今も使いこなせてない、と思うのは流石に危ないと思う。そもそも、一瞬だけでも一方的に止められたら、勝負では命取りなんだから。
「動けなくなる、というのは致命的ですね。もし、それを少しでも制御できたりしてたら、ミーティアさんとの戦ってる際にこちらだけ動けなくなる、ってこともありえるわけですか……」
「で、先にどうにかしようにも、メイディの苦手な近接戦はミーティアが補ってくるわけよ……」
そして、基本は魔法での支援を交えつつ、ここぞというときに魔眼で動きを止めてくる。
ミーティアの戦闘力の高さもあいまって、相当戦いづらいコンビである。
だからこそ、あたしは依織にこうして話したのだ。
「だから、期待してるわよ、あんたの作戦ってヤツに!」
こいつなら、誰も思いつかないようないい方法を考えつくはずだ。
……だって、性格悪いし。
「ここまで話して、あとは完全に丸投げですか……。なんか、相当不本意なことを思われてる気がしますし」
「気にしちゃ負けよ! まぁ実際当るかどうかもわかんないんだけど、こういった対策はしておくべきなんでしょ、あんた的には?」
「まぁ、それはそうですが。はぁ、頭が痛いです……」
結局、今日では対策が思い浮かばないということであたし達は分かれる。
そして、その二日後、三戦目の対戦相手として、メイディとミーティアのチームとあたし達は戦うこととなるのだった。
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