101 『予想外なパートナー』

「ふふふっ、どうやら貴女達も勝ちあがったようですわね!」


「あら、当然でしょ? ていうか、その様子だと、あんたも勝ったみたいね、メイディ」


 試合が終わり戻ってきたあたし達に近づいてきたメイディの姿からは、特に汚れもなく苦戦した様子は無い。つまり、彼女の方も危なげなく勝利した、ということだろう。


「勿論ですわ。貴女へのリベンジの機会、逃しては堪りませんもの」


「ふん、リベンジなんかさせてあげないわよ。それで、あんたのパートナーは何処にいるの? 試合を終えてきたんなら、一応あんたのパートナーもいるんでしょ?」


 予選の始まる前はパートナーがいなかったメイディだけど、こうして本戦に出ている以上、誰か相手を見つけたのだろう。あたしほどでは無いとはいえ、メイディも中々やる相手ではあるし、一応走った仲だし少し気になるところだ。


「ふふん、いいでしょう! あたくしを選ばなかったことを後悔するがいいですわ! あたくしの、最高最強のパートナーを紹介してあげますわ!」


 なんて、胸を張って前置いて、ディアが少し離れたところにいた相手の手を掴んでつれてくる。けれど、その相手はあたしにとって初対面の相手ではない、というか対先日顔を会わせたばかりの相手だった。


「そう、この方があたくしのパートナー――」



「どうしてあんたがここにいるのよ、――ミーティア!?」



 そこにいたのは栗毛の髪を後ろに束ねて流した半人半馬の少女。

 ――まさかのみーくんこと、自称彰の幼馴染のミーティアである。


「む、お前は確か、彰のところにいた、自称婚約者……!」


「自称婚約者って何よ!? あたしは正真正銘彰の婚約者よ! あんたこそ、自称幼馴染でしょうが!」


「なっ、自称じゃない、オレと彰は幼馴染だ! 勿論、それ以上の関係になるがな!」


「ハァ? 何言ってんの、自称でも他称でも、そもそも幼馴染は負けフラグなのよ! だから、彰と結ばれるのはあたしに決まってるわ!」


 そう、幼馴染の恋は報われない。それは漫画やアニメではほぼ確定的な事項だ。それに、現実でも、あの空亡に巫女扱いされてる娘を考えれば、幼馴染なんてものがプラスに働くことなんてないと分かりきっている。


「はいはい、お二人とも、そこまでです。無駄に騒がないでくださいよ。まわりの目もあるんですよ、一応令嬢なんですから、試合のとき以外は大人しくしましょうよ……」


 呆れたような様子で依織があたしとミーティアの間に入ってくる。

依織の言葉の通り、周りの視線はあたし達に完全に集まっている。流石にそれに気づいてなお言い争うわけにもいかず、あたしもミーティアも勢いをそがれてしまう。


「えっと、その、お二人とも、お知り合いですの? というか、婚約者って、えっ、そんな、なんですの、それは……?」


 そして空いた空白の間に、あたし達の事情も知らないメイディが声を差し込む。


「あー、話せば長くなるからパスで。あとでこいつにでも聞いといて。パートナーなんでしょ、メイディの?」


 ……というか、言って気づいたが、ミーティア[こいつ]がメイディのパートナーとなるなんて、洒落にならない気がする。流石に、これは無策でいくと詰みかねないわ。


「依織、いったん戻るわよ!」


「はぁ、今更ですね。まぁ、確かに必要なこととは思いますが……」


「それじゃあ、メイディ、ミーティア、次は試合で会いましょ」


「えっ、ちょっと、レイアさん、お話はまだ終わってませんよ……!」


 メイディの声を聞き流し、依織と共に部屋へと戻る。

 思った以上に厳しい戦いになりそうだ、なんて思いを胸に抱きながら。

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