ラピスラズリを探して

乙葉かなめ

第1話

 なんだかどうでもよくなって、そらから無性に甘いものが食べたい。という考え事をしながら歩いていた。あまりにも下を向いて歩いていたので、看板がぶら下がっているのにも気付かず、目の前のぎりぎりのところで止まった。何かに集中しすぎていると、世界は無音になり、物質さえ見えなくなる。そして、何らかの形で接触が起きると、音が響き、物質が見えてくる。私の場合は今だった。うわっ!とかうひょっ!というような感情で2、3歩下がる。

 「ムーン?」

 看板にはmoonと書かれていた。やけに古ぼけてるなぁ。どうやらカフェのようだ。いつも通るこの街に、古びたカフェなんてあっただろうか。窓ガラス越しに中を覗いてみるとショーケースの中に美味しそうなケーキがずらりと並んでいた。うわぁ!美味しそう!あいにくお小遣いは貰ったばかりである。今日くらい奮発してもいいよね?カフェがいつからここに在るのか?という疑問は空腹でどこかにいってしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ラピスラズリを探して 乙葉かなめ @jepwtcjmgd

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る