⒈ 新芽(2) 新しいスタート

 五月三十日(金)布都部高校三年二組 朝のHRホームルームにて――


「はいはい、みんな席に着いて!今日は伊駒先生から、重要なお知らせがあります」


 その日の朝――、クラス教師の小暮真木奈こぐれまきなは教室に入るなり、何やら忙しない様子で第一声を上げながら両手を大きく叩いて音を響かせ注目を集めると、一斉にクラスの生徒達の視線は教壇に立つ小暮先生と伊駒先生の方へと向け始めた。


「それでは………三週間という短い期間ではありましたが、多くの先生方・生徒達の支えがあり、おかげさまで充実した教育実習になりました。

 これから教員を目指し、教職に就くにあたって、幾つもの困難があるとは思いますが、布都部高校で学んだ経験を宝物とし、必ずや教師になってこの学校に戻ってこられればと思います。三週間、大変お世話になりました!」


 本日は伊駒先生の最後の教育実習の日。


 先生の人柄に心打たれた生徒は数知れず、当然のようにクラスの生徒達も彼女との別れを惜しむ姿があった。


「せんせ~!今日でお別れなんて寂しいっすよぉぉ~~~~ッ!」


「俺もだよ、せんせ~!」


「ぼ、僕だって」


「私も」


 ………………


 …………


 ……


 数々の生徒達の別れを惜しむ声が、次々と皐月の耳へと入っていき、それまで笑顔で最後を迎えようと、心の奥底で我慢していたものが込み上げるかのように――、うるうると涙を浮かべ始めてしまった彼女。


「せ、先生っ!泣いてるじゃないっすか」


「やばい、もらい泣きしそう」


「もっといて下さいっす、伊駒せんせ~!」


 皐月の涙に釣られて、同じように涙を流し始める生徒達。


「……あはは。しんみりした別れにならないよう、最後は笑顔で迎えたかったんだけど…………ごめん。そんなこと言われたら私、我慢出来なくなっちゃったや」


「そんなの、我慢しなくたって良いじゃないですか!」


「そうだよ。俺たちも同じ気持ちだったんすから!」


「これ、クラス皆で書いた色紙です。受け取って下さい!」


〈〈〈せーの、伊駒先生!この三週間での実習、お疲れ様でした!

 短いようで大変だったと思われる時間の中、私たち生徒一人一人の相談に乗ってくれたりして、本当にありがとうございました。

 伊駒先生のおかげで、実に充実した日々を送ることが出来ました。これからの教員試験、頑張って下さい!〉〉〉


 クラス全員が一斉に声を揃え、皐月に贈る力付けの言葉メッセージを乗せると共に、一人の女子生徒に手渡された色紙、そこにはびっしりと文字やイラストが書かれた、クラス全員の沢山の思いが詰まった素敵な品があった。


「皆、ありがとう!先生、一生大切にするね」


 皐月は色紙を胸の上でぎゅっと握り締めると、最高の笑みを浮かべるのだった。


「あ、先生、笑った!」


「サプライズ、大成功~!」


「やったね皆、イェ~イ!」


「ちょっ、皆パリピ過ぎませんか?

 陰キャにはきついこの環境………でも今日のところはそれもありだなッて、思う僕がいる」


「何、言ってんだよ。

 変なこと言ってねぇで、しっかりと俺たちで先生のこと、元気に送ってやろうぜ」


「ふッ、確かに」


「くすっ……ふふふっ…………ん?これは何かしら?」


 何やら生徒達で盛り上がり、皐月もまたそれらを眺めながら微笑ましく笑っていると、ふと手渡された色紙の裏に何か……小さな字で書いてあるものに気付く。


 そこには、こんなメッセージが書かれていた。


【放課後、屋上でお待ちしています。 M.K.】


 突然の、謎の人物からのお誘いメッセージ。


 これが意味するもの、それは一体何なのだろうか?


「おーい!伊駒先生との別れを惜しむのもいいが、来週日から六月。衣替えの準備は出来てるだろうな」


「何ですか、小暮先生。何もこのタイミングで言わなくても良いじゃないですか」


「そっすよ、先生。言われなくとも、用意してますって」


「はいそこ、まだ本格的に夏が始まる訳じゃないからと、油断しないこと!

 昔に比べて、気象の激しい世の中なのだから、そうやって軽い気持ちでいると、脱水症状はおろか――

 熱中症に掛かって死亡するケースが年々増加しているんだから、それこそ、普段通りにクリームを塗ったりでもしたら………言いたいことは分かるな?」


「あれっしょ、先生。

 夏服に合わせて、NEMTD-ACの塗る量をおこたったら、それこそあっという間に身体の方がまいっちまって、最悪――

 それで命落としちまっても、全て自己責任だからとでも言いたいんでしょ?

 ……んなの言われなくったって、分かっわーッてますって!

 自分の身体の自己管理ぐらい――もう高校生どころか、この一年で卒業する立派な大人なんすから、心配いりませんって」


「ほんとですよ、先生。

 毎年、この時期になれば、誤ってクリームを塗る量を間違えるなんてこと、しませんから。

 女の子は特に肌とか気にするんですから。

 クラスのがさつな男子とは違って、そこのところの細かいケアの部分はよっぽど、うちら女子たちの方が信用出来るかと思いますよ」


「なっ、馬鹿にしてんのかおめぇ!」


べっつに~♪そんなんじゃないですよ~っと」


「やっぱ、馬鹿にしてんだろ」


「ちょちょっ、お前らやめろって」


「あ……あれです。見送りの日に限ってクラスで喧嘩してたら、空気が悪くなるというもの。

 僕達は伊駒先生を元気良く送り出す者として、一旦ここは抑えて頂くのが、双方にとって良い形になるかと。

 こ、ここここ………こんな冴えない出しゃばりな一意見に、耳を傾けて頂けると思えず、ど、動揺しているからして―」


「……ははっ、こいつの言う通りだわ」


「ええ、そうね。私も言い過ぎたわ」


「……お前、いつも根暗なのに、こういう時はガツンと言えるなんてスゲェよ!」


「……ふッ、学生の間で舐められてしまっては、社会に入ったら真っ先に、負け組の人生を辿ることになり兼ねないかもしれませんゆえ

 最低限、舐められない程度には、周囲の人間関係で上手くやっていく為のユーモアさは持ち合わせているつもりです」


「あははっ!なんだそれ?お前、面白いな!俺たち、友達になろうぜ」


「なっ、高校生活三年目にしてついにこの僕が脱ぼっちデビュー、とな」


「おまっ、それまじかよ。寂し過ぎんだろ。あはははっ!」


「………ちょ~っと、盛り上がっているところ悪いんだけれど、き・み・た・ち、まだ先生の話は終わってませんからねぇ(怒)」


「「「「ひぃぃ、すみませんでしたぁぁ――ッ!」」」」


 ………………


 ………………


 ………………


「……あー、何度も言うようだが明日からは衣替えだ。

 それでさっきはクリームの話を出したが、何でもこの夏に合わせてクリーム………NEMTD-ACに変わる、新しい商品が発売されたらしくてだな。

 〈NEMTD-PF〉って言う、首から下全身を覆うタイプのProtective保護 Filmフィルムのような、形状記憶型密着質の《着るフィルム》なんてものらしく――、

 まだ発売されたばっかりで、私も持ってないから良く分からないが、意外にも着た時の違和感が無いとかで、人気があるんだってな。

 何でもフィルムの裏部分に、特別な仕様がされているとかで、±90度近くの環境下にさらされても、活動が可能だとか何とか―――」


「あっ、それ知ってるぜ、先生」


「おお、そうか。確か……その時その時の気温に合わせて、温かくなったり冷たくなったり、常にそれを身に付けている使用者の体温を一定値にキープさせる効果があるって、ニュースで聞いた気がするな。

 ……あ、それとここで言うのも何だが、勿論――これも大事な情報だ。

 首から下全身を覆うからと言って、ちゃんと用を足す為の開口部がなっている仕様だから、それを着たままトイレが出来る代物らしい。

 ちょいと調べた方が話が早いか。あー、なになに……、会社公式ホームページの商品紹介文を引用させて頂くとだな――、


『まるで始めから身に付けていなかったような、実に身体にストレスフリーな体感。


 全身タイツや競泳水着のようなピッチリとした強い締め付けが無い、優しく全身を包み込むような通気性抜群の着心地にこだわった極上の一体感!


 《軽量化・動き易い・コンパクトな宇宙服》をコンセプトに、我が社独自の技術力を結集し開発した次世代型快適調温スーツ。


 これ一着で寒暖調整万全、一年中ご愛用頂けます。


 NEMTD-PFは、皆様の快適なお出掛けライフをお届け致します』――だそうだ。


 ……とまぁ、夏だけで無く冬でも、季節関係無しに使えるような、すぐれ物のNEMTDPFだが――、

 これなら従来の面倒だった、防熱・防寒保護の効果をしっかり得る為の、日々のクリーム分量をはかる手間がはぶけて、忙しい朝の準備を大きく短縮出来る。

 まさに画期的とも言えるその商品の使用について、すでに学校の方では許可が下りたから、もしも持っているやつがいたら、明日から早速それを着て問題は無いぞ」


「よっしゃ!あの最高着が校則違反にならないとか、まじラッキー!

 クリームでは色々面倒臭いって、思ってたんだよ」


「えっ!まさか、持っていると言うの?

 あれはまだ発売されたばかりで、それなりに値段を張る代物だった筈じゃあ………ひょっとしてお前ん、意外にもお金持ちだったりなんかして……………」


「ちょっ、意外とは何だよ、意外とは。これでも俺の姉ちゃん、会社の社長秘書してんだからな。我が家で自慢の姉ちゃんだぜ」


「自慢の姉ちゃんって………それって言うなれば、姉のスネかじっているだけじゃない」


「なっ、おまっ、ただの高校生が姉ちゃんの脛を齧るも何も無いだろうが。

 ……と言うか、姉ちゃんのはなしして思い出したけどよ。

 ここ一、二ヶ月ぐらい前からやたらお金下ろすことが多くなったんだよな。まさか、男かっ!男がデキたんか⁉︎」


「脛は齧らなくとも、姉の恋路には突っ掛かるって、いい歳して姉のこと好き過ぎでしょ」


「なななっ、何言ってん…………」


「そこ、静かに!」


 色々と話は脱線していたようだが、彼らの会話としてあるように、今時の若者はこの時期にもなると、外出するにも手間暇で面倒臭いこともあり、嫌う者が多い。


 女性ならば日焼け対策も込みで、敢えて長袖で外出する方も、そう珍しくは無い程だ。


 とまあ、現代女子の細かい季節事情はそれとして――話は戻り、皐月は謎のメッセージを受け取るがそのまま、こうした時間も過ぎていき、気付けば先生方に向けて職員室で最後の挨拶を済まし、放課後を迎えていた。


 これにて、皐月が学校絡みでやるべきことは全て終わり、彼女は素直に何者かの呼び出しに応えるかのように、屋上へと向かおうとした時のこと。


「………先生…………」


 廊下を歩く彼女の背後から一人の声が彼女を呼び止めた。


 振り返ればそこには、見知った一人の生徒の姿があった。


「……さん、どうしましたか?」


「………今日でもう、この学校には来なくなッちまうンだよな。

 なんつーか、その、寂しくなるッつーか…………ははッ、ガキじゃあ、あるめェし何言ッてんだよッてな」


「……決して、そんなことはありませんよ。でも、そうですね。

 少なくとも朱音さんがこの学校を卒業なさる前に、この学校の教師として就くことは最短でも、それは叶わないでしょう。

 ………けれども、私たちが住んでいるここは孤島なんです。

 列島とは違って、島の大きさにも限りありますから、また何処かで会う機会は幾らでもある筈です。

 なんなら、これも何かの縁です。良かったら、連絡先でも交換しましょうか?」


「………イッすね、それ」


 そう言って、互いは携帯の連絡先を交換した。


 と、この場面にて疑問に思えた方は実に鋭い主観である。ここで一つ、補足するとしよう。


 何気なく、これまで悠人が未予や斬月などに連絡していた場面が、多々あったかと思うが、別段連絡先を交換したとか、そう言う訳では無い。


 これも一種のゲーム仕様とでも言うのだろうか。どういう認識で互いが手を組んでいる者同士だと判断されているのか、いまいち神眼者の立場からしてみれば疑問にも思うだろうが、このEPOCHエポック――、自動的に使える機能として、仲間との連絡が取れる機能が付いている。


 言うなれば、ボイスチャットに似た機能ではあるが、ボイスチャットとは少し違う。


 ボイスチャットのような、特有の相手が話し終えるまで自分から話す事は出来ない、といったことが無く、IP電話さながら、快適に通話を交わすことが出来る。


 更には、音声がクリアに聞き取りやすいだけで無く、FPS【ファーストパーソン・シューター】ゲームなどに良く見られる、複数人の仲間とリアルタイムに連絡を取ることも可能で、何かと神眼者同士、連絡を取り合う手段として、良く使う便利な機能の一つである。


 だが今回は、すでに【不目吊ふめつ】として、七人組のチームを組んでしまっている朱音には、皐月とのその機能を使った連絡のやり取りが出来ない為、普通に番号の交換をしたということになる。


「……ウチ、先生のおかげで一歩前に進むことが出来たよ。だから先生には感謝してもしきれねェ。

 ほんと先生に出会えたこと、先生がウチにくれた言葉全て何もかも。

 ――だァァー、恥ずかしィ~!こんなの、ウチらしくェって言うか……、と、とにかく……………ありがとな」


 朱音は頭を下げ、素直に気持ちを皐月にぶつけたのだった。


「こ……これだけは学校離れる前に伝えたかッたんだよ。

 えっとそれじゃあ、先生目指して頑張ッてくれよ。あんたみたいな人が先生やッてくれりゃあ、この先色々な生徒が助けられるにちげェねェからよ……………」


 そう言って、朱音が照れ臭そうにその場から立ち去り、一人残された皐月は小言で言うのだった。


「そんなこと言われたら…………また涙が出てきてしまうじゃないですか」


 ………………


 ほんの少しだけ時間が過ぎ、皐月は流した涙を拭うと、ついにその足は屋上へと進ませるのであった。


 ガチャリとドアを開け、中へと入っていくと、開放的な空間が広がり、奥にはその人物の姿が、奴の姿があった。


「………薄々予感していましたが、やはり貴女でしたか。


「……何だバレてたのか」


 外風に髪なびかせ、真木奈は姿を見せた皐月にそう答えた。


「いやでも……あのクラスの生徒さんにいらした、小林美智子こばやしみちこさんという可能性も、あり得なくも無いとは思いましたが…………、

 貰った色紙には、がっつり小林の名で書かれていましたので、となれば――あのイニシャル的に残った人物は、小暮先生ぐらいなものかと、思いまして。

 そもそも、生徒さんが一人だけ、わざわざ裏面にメッセージを書くなんて、必要がありませんし。

 ………それで、こんな人気ひとけの無いところへ呼び出して、私に一体――、何の用が…………」


「それは……………」


 ………………


 ほんの数秒のが、皐月の胸をざわつかす。


 緊張の一瞬。皐月はその答えを待つように――緊迫した空気の中、ゴクリと生唾を飲み込んだ。


 その時である。


「……お願い!貴女の実力を見込んで頼みがあるの。どうかこの私と、手を組んでは貰えないでしょうか?」


「………へっ?」


 人気ひとけの無いところへ呼び付け、一体どんな返答が返ってくるのかと、構えていただけに、その内容を聞いて拍子抜けしてしまった皐月。


 もっと何か、重要なことかと…………


 皐月にしてみればそうなのだが、真木奈にしてみればそうはいかない。


 彼女には皐月ほど、強い力を持っていなかったからである。


 彼女には、守るべきものがあった。


 夫、子供………独り身である彼女には、そのような存在が無い。


 だが、しかし。しかしである。


 それでも守りたいという、家族とも言えるがあった。


 愛情云々もそうだが、物理的に守らなければならない存在。


 それもまた、なのだから―――。


「……非常に情けない話だけれど、私には君のように力を持った人の助け無しでは、そう長いことやっていけない。

 何故なら私には特別闘える力が無いから…………。

 そう……いつまでものことを守って上げられないから…………」


「それって、どういう…………」


 すると真木奈は、懐から一枚の写真を取り出して見せる。


 そこには奇妙な形の瞳孔を持った、両目共に光輝かせた一匹の動物の顔が写されていた。


「これは………、なのですか?」


「ええ。正真正銘、私が飼っている愛犬のメスの『アイちゃん』よ」


「えっ………けど、この犬の目………これって…………………」


「そう言うことでしょうね。何も神眼で生き返る存在は、人間だけに限らないということよ」


 彼女たちが知るよしも無いが、神眼が人間以外を蘇生させる例は――確かに存在する。


 現にあのブシュラ・ブライユが謎の人工神眼開発の時に実験で使ったという、モルモットでの蘇生実験には成功していると、彼女は言っていた。


 だから例え……この写真に写っているのが本物の犬だったとしても、あり得なくは無いのだろう。


「……この犬はね、昔から白内障をわずらっていた、亡き私の父の面倒を見てくれていた盲導犬だったの。

 と言っても、盲導犬としてつかえるだけの歳は越えてしまっていてね。

 今となっては、普通の犬となってしまったアイを、特別にうちで飼っているという訳なの。

 だからアイは――、その命落とすまで支えて貰っていた父だけに無く、私からしても共に父を支え合った仲として、我が家かぞくにとっての大切な一員きょうだいなの。

 私はそんなアイを――、家族を支えてくれたこの子に、目を奪われるなどと言う、むごい死なせ方はさせたく無いから…………。

 父と共に、一度は死んでしまったアイだけど、その後の生涯は、ゆっくりさせて上げたいじゃん」


「………小暮さん」


 お人好しの皐月はそれを聞くと、深く感慨に浸っていた。


 涙の流し過ぎで、涙もろくなってしまったのか、今にも溢れ出しそうな様子でウルウルと涙目を見せる。


 そんな歪んだ目元を見せながら、それを見かねた真木奈が口を開く。


「………iPS細胞を用いた最新鋭の眼球手術って手もあったろうけど、あれに掛かる費用が馬鹿にならないから、うちでは盲導犬を使っていたのよ。

 そもそも、その技術が一般向けに導入されたのも父が仕事から離れ、定年を迎えた頃ぐらいの話だったしな。

 『そう長い命じゃないんだ。一度は外の世界をこの目で見たかったものではあったが、娘の将来に掛かる費用を残しときたいと思うのが親と言う者だ』、――なんて言ってね。

 お金はどうにか工面するから、その夢を叶えさせてやりたいと言っても、超が付く程の頑固親父だったもんだから、かたくなにそれを拒否って、そのまま帰らぬ人となってしまってさ。

 義眼って選択肢もあったが――、『体内に人工物を入れるっていう、その感覚が好かんのだ』の一点張りだったよ。

 そうして私には兄弟もいないし、残った家族はアイだけで……………」


「………う、ううっ、なんて、なんて寂しいんですかぁぁぁぁッ!うわぁぁぁぁあぁぁんっ!」


 その瞬間、皐月の涙腺が見事に爆発した。


「えっ!ちょっ、ちょっと、何だよそんなガキみてぇに泣いちゃってさ。

 うわっ、鼻水まで垂らしちゃって。ほれっ、ティッシュ。これやっから落ち着けって」


「ううっ、ぐすん。す、すみません。取り乱してしまって…………。それではお言葉に甘えて失礼して…………ズズズ――ッ!」


 真木奈が言うように本来であれば、最新の眼球移植手術を受けようものなら、相当なお金が掛かる。


 悠人達がお世話になっている石井眼科であろうとそれは同様に言え、あれは特別なご縁があってのことであり、一般のお客様に対してはそれ相応の価格を取って治療する訳で――


 それは勿論、友永おじさん自身の生活費や妻の治療費のことだってある訳で――


 結局のところ、真木奈の父が手頃な金額で手術出来るようなことは、無かっただろう。


 そこは石井友永でもちゃっかり………と言うより、店を経営していく上で――、生活していく上で――、家族を支える上で――、至極当たり前なことであるが…………


「………さてと、何やら感情があらぬ方向へと湧いてしまっていたが、大丈夫か?」


「……すみません。今日は研修最後ということもあってか、何度も泣くような機会があったもので………その、お見苦しい姿を見せてしまい、申し訳ありませんでした」


 一頻ひとしきり涙を流し終えたのか、すっかり落ち着きを見せた皐月はペコリ、ペコリと何度も繰り返し頭を下げながら、そう言って来ていた。


「………それで、小暮先生と協力体制を作ることには問題無いのですが、共に闘う仲間となる以上、あらかじめ先生の目力を知っておきたいのですが――、

 確か……闘える力が無いとか何とか言っていましたけど、それって一体どんな能力で……………」


「……敵情視察」


「……えっ?」


「……てッ………敵情視察よっ!」


「敵情……視察………?」


「あぁぁあぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜ッ!どうせそんな反応するだろうと思ったから、今みたいに聞かれでもしない限り、言いたくなかったのよぉぉぉ。

 こんな、微妙過ぎる能力を持った私と手を組んだって、なんの役にも立たないって、他でも無い自分が一番知っているよ。

 けどさ、これ言っちゃえば伊駒さん、私と手を組まなくなるだろうって、早かれ遅かれバレるのは分かり切ったことだろうけど――、

 でも………でもさ…………あぁぁあぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜ッ!けどやっぱり、今はまだ言うんじゃなかったぁぁぁぁ〜〜〜〜ッ!」


「ちょっ、ちょっと。今度は先生の方が慌てていますって」


「あぁぁあぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜ッ!私はもう駄目だぁぁぁ~〜〜ッ!」


「ちょっ、だから気を落とさないで下さいって。別に私はそれでも、手を組むのはやめるだなんて言いませんから、ねっ!元気出して下さいよ。

 そもそも、微妙過ぎる能力なんて言っていましたけど、先生のその力について、詳細にどのようなものなのか――、

 まずはそこのところを説明して頂かないと、何とも言えないじゃないですか」


「……ま、まぁ?それもそうね。……そ、そう言うことなら?説明しないことも無い、か。

 《敵情視察》、【シー・エイム】なんて私自身、格好付けた呼び方しているけど――、

 その力は《目で見た相手の持つ目力、その能力がどういうものでどんな発動条件なのか、それら全てを知ることが出来る》、言うまでも無く非戦闘向けの能力よ。

 どうかしら?それを聞いたら、やはりその程度の能力だと幻滅して、手を組むのはやめようかと思ったでしょうね…………」


 一人勝手に落胆する真木奈だが、対する皐月はそうでも無かった。


「……えっ?それって、結構強いじゃないですか!

 わざわざ、相手とエンカウントする前に、遠くから相手を見さえすれば、事前にその相手の能力を知れるのですから、前もって色々と対策もしやすいですし。

 ――例えそれが、相性の悪い相手だったとしても、即座に距離を取って戦闘になる前に、離脱することだって出来ますし」


 皐月の反応が意外だったのだろう。それを聞いて真木奈は何とも照れくさそうに、良い歳した大人がモジモジし始める。


「そ、そう………?

 いやぁ……、ま……まさか、そんなふうに言われるだなんて―――。

 こんな能力、私が持っていたって戦闘向け能力を持っていない以上、ただの逃げにしか使えもしない、対策もクソも無い無能な能力にしか過ぎないって………、そう――、思っていたから。

 あっ、そうだ!この際だし、これまで私が遭遇してきた神眼者プレイヤーで個人的に付けた、『めぢかランキング』:最も危険視すべき力、その能力は目に見えない…………」


「あ、あのぉ………小暮先生?」


「えっ?何………っ?」


「話の趣旨………外れてません?」


「あっ……えっ……そっか…………」


 そこには何処どこか………少し寂しい顔をした真木奈の姿が―――。


 己が持つ能力に価値を示してもらえたことが、嬉しく思えただけに………すぐに真木奈の話を遮ってはしまったが、ほんの……少しの間だけで良いから、話を聞いて欲しそうにしていた様子を心の内に感じてはいた。


 だが、皐月にとっては、そんな真木奈の機嫌取りをしている場合では無いくらいに、先程までのやり取りの中で一つ、気になることがことがあった―――。


「そ、それよりも………!さっき『逃げにしか―』なんて、じゃ……じゃあ、これまでロクに闘って来なかったってことに―――

 そんな状態で一体、一日最低でも一個は提示しなければならないという、確かなゲームルールに縛られている以上、神眼の回収が付き物な環境の中、今まで………あッ!ごめんなさい。こんな失礼なことを言ってしまって……………」


「いや、気にしないでくれ。……本当はさ、それこそ能力を使って、私と同じ無害そうな能力を持った人間を見つけては、力無くとも人並みにあらがって掴み取ろうって…………

 初めのうちは、それでどうにかこうにかやってきていたけれど、力のある目力でも無かった以上、一人でどうにか出来る限界も来てしまって…………。

 そんな私には、ある一人の存在にすがる他、残されていなかった。

 君は――、〈代行屋〉なる存在の名を聞いたことがあるかい?」


「………〈代行屋〉?」


「……そう。腕に自信の無い方や、仕事が挟んでどうしても神眼を回収出来ないって人達の代わりに、金さえ積めば神眼を回収してくれる―――

 自らを〈代行屋〉と、そう名乗る一人の人物がいるの。

 その者は、時に神眼者を助け――、時に殺し――、敵にもなれば味方にもなる謎多き存在。

 お金にものを言わせ続ける限り、それは非常に心強い仲間になるけれど――、

 そんなこと………いくら収入が安定している、教師という国家公務員の立場と言えど、いつまでもこんなことを続けていたら、自分の生活費のことだってある。いずれは、破綻してしまうことだって……………。

 そんな時、貴女と言う強力な神眼者と出会って――、このまま何もせず学校を去られてしまったら、こんなチャンスそうそう来ないだろうって、つい……………」


「……それで最後に会って貰えないかと、色紙の裏にあんなことを……………」


「あっ!えっと、こう………何か、良い方法無いかと、色々と考えては見たんだよ。

 仮にも実習で来ている、一人の大学生の勉強の邪魔をしてしまうのも悪いし、どうしたものかと………あれこれ思っている内にズルズル引きずって、結局は最終日に―――」


「……ああ、それでこんな日に……………仮にも気を遣って下さったようで」


 自分の命が関わっている――、大事な問題だと言うのに、そこをギリギリまで気を待っていたのにも、これは真木奈なりの気遣いだったのだろう。


「貴女が不良生徒をめたところを目にしたあの時――、これは運命の出会いだと思ったの。

 だって私、神眼者の友達いないし。あっ、勘違いするなよ。

 あ・く・ま・で、神眼者に限っての友達だけがいないだけだからな。神・眼・者、の。普通の友達ならいるからな。本当だからッ!」


「そ、そんな必死にならずとも、分かっていますから…………」


(……小暮先生、実は友達の一人も、いないんだろうな…………)


「と、とにかくッ、協力体制が築かれたところで、これからはお金を出して依頼することも無くなる。

 つまりは今後、〈代行屋〉に目を付けられて、戦闘にもなることだってあるかもしれないってことだ。

 それは私………ましてや、貴女だって神眼者の一人なんだから、いつ狙われても可笑しくは無い。

 そこで、だ。私が知っている限りの〈代行屋〉のことについて、今話しておきたいと思う。

 まずは外見からだけど、常に決まった恰好をしているのが特徴ね。

 それには〈代行屋〉との取引方法が関係していて、まず奴と依頼の連絡を取るのだけれど、その連絡先ってのが実は島のあちこちに転がっている」


 真木奈は続け様にそれらを告げる。


「身近なところで言ったら、公園のトイレの壁や電柱の張り紙の上から直接手書きで記していたり、SNSや自身のブログとも思える宣伝手段それにも、堂々と載せていたりするわ。

 そうして見掛けた神眼者が、半信半疑で電話を掛けたりなんかして、そこで初めて〈代行屋〉との依頼のやりとりが始まるのだけど―――

 【神眼一つの回収につき、1万円】という価格で、いくつ回収して欲しいか話を進めていき、それと一緒にあらかじめ知り合いに神眼者がいれば、そいつから回収することは止めて欲しい、などのある程度の『要望』も言っておいたりする。

 もしそれを伝え忘れてしまったら、それは依頼主の連絡不足による責任として、それが悪い形で、偶々回収して貰った神眼が、知り合いのそれだったとしても――、その時はその時。

 忘れてしまったら、後が無いと思った方が良いわ」


 長い話に一時いっときの区切りが付いたところで、真木奈の話は続く。


「………とまぁ、ここまでの話からして、〈代行屋〉の恰好の話とは随分脱線しているように思うかもしれないが、知識を付ける上で、ここからさっきの話をしたことが関係してくる。

 連絡をし終えると、〈代行屋〉はその日の内に必ず持って来てくれて――

 回収が完了次第、あちらから連絡を寄越してきて、適当に何処か待ち合わせを決めたら、そこで神眼現物とお金を交換して依頼完了、というのが一連の取引方法。

 つまりはその〈代行屋〉と直接対面する訳だけど、そもそも取引相手の顔も分からない以上、何か特徴的な恰好でもしていない限り、そいつが一目で〈代行屋〉だと分かる情報が、こちらとしては何一つとして無い。

 その為の決まった恰好………と言いたいところだが、普通に考えれば再度連絡する時に、その時その時で恰好を変えて伝えれば良いものを。

 恐らく奴が〈代行屋〉として活動しているに至って、毎度決まった恰好をしているのは、それが〈代行屋〉として、奴の中で決まっている〈正装〉とでも言った方が正しいのかもしれないわね」


 その後、真木奈が話す奴の特徴的な格好というのが、実に変わった話だった。


「それでその恰好というのが、何とも可笑しな恰好なもんで――、

 何と言うか……悪魔ような二本の逆立った、白のとんがり角の飾りが付いた、黒い薄手のフードパーカーを上に着ていて、下はド派手なピンクスカート。

 素性バレを防ぐ為のか、奇抜なマスク…………詳しく言うなら、奴の話す口の動きに合わせて、機械音に声を変えて小さく開閉しながら口を動かす、犬の口のような形をしたSFチックのボイスチェンジャー機能付き可動式マスク。

 それも目元まで覆われた、完全なるメカメカしい犬面いぬマスクを被った人物像と言ったところか」


「えっ?……何ですそれ?」


「まぁ………そんな反応するだろうな。

 その可笑しな恰好から、奴の存在をすでに知っている神眼者の中では、【執行犬の亡霊ブラック・ドッグ】なんて呼び方もされている。

 ふざけた恰好をしているがその腕は確かなようで、神眼狩りを金儲けにもっていこうと思える程によほど腕に自信があるのか、今の今まで依頼が失敗したことは無いとの噂を聞くわ」


「成る程………見かけによらず油断ならない相手と言う訳ですね」


「さてと〈代行屋〉についての話をしたところで、今度はそちらの方で一つ聞いても?」


「一体、何を………?」


「今の今まで聞きそびれていたけど、伊駒さんは誰か手を組んでいる者とかいるのかなって?」


「そうですね。実は一人、同じ大学の教育学部繋がりの友達に、神眼者がいまして――、

 そいつは今、小学校教師を目指して頑張っているので、厳密にはそれぞれ違う教職課程を学んでいることもあり、校内ではすれ違いが殆どではあるのですが、それでも一緒にお昼を取ったりと交流はありまして………

 のちほど、時間が合う時にでも紹介しますね。

 それで………私の方からも一つお聞きしたいのですが、その……アイちゃんでした、か?愛犬の方は一体どんな目力を?」


「あー、それなんだが、悪いが私の愛犬の方も、戦力としては考えないでくれ。

 その為、いつも家の中で大人しくさせているんだが………まぁ、あれだ。

 実際に会ってみれば、目力については分かるから、何処どこかのタイミングで協力者の友達とやらの紹介があった際には、会わす機会もあるだろうさ」


「分かりました。そう言うことでしたら。………時に、お話はいつまで?」


「えっ?あ、ああ、悪いもうこんな時間だったか。

 変に呼び出してしまって、悪かったな。また今度、折り入って別の機会にでも、よ」


 すっかり辺りは暗くなりつつあり、それに気が付いた真木奈が、ようやく話の腰を下ろした。


「そう言えば………私個人では言っていませんでしたね。

 ……この三週間での実習、お疲れ様でした」


「はいッ!こちらこそ三週間、お世話になりました!」


 その返事を最後に、皐月は最後の学校生活を終え、彼女は帰路に着く途中、ふと目に付いた公園を見て、真木奈の言っていたことを思い出す。


 そう言えば、公園のトイレの壁なんかにも書いてあるって…………


「丁度、トイレにも行きたいと思っていたところだし………いっか」


 気が付けば皐月は、公園の方へと足を動かしていた。


 そうして比較的綺麗なトイレの中へと入り、腰を下ろすと、ちらっと横の壁に書かれた文字に目がいった。


 そこにはこんなことが書かれていた。


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 神眼の回収、貴女の代わりに肩代わり致します!

 ご連絡先はこちらまで

 〇〇〇-△△△△-□□□□

 詳しい詳細はSNSにて参照 https://〇〇〇.com/Agent

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 真木奈が言っていた通り、本当に〈代行屋〉と思しき者の連絡先が書かれていた。


 それとご親切に、自身のSNSと思しきURLも書かれていて、試しに皐月はそのSNSを開いてみることにした。


 左腕のEPOCHエポックを使って見てみると、ちらほらと書き込みもされていて、最新の投稿にはこのようなことが書かれていた。


【今日は5人〇ルったー!

 無事3名様にお届け完了♡】


 〇で伏せてはあるが、恐らくは………そういうことなのだろう。


 後に書かれている3というのも、依頼者の人数のことを指しているに、違いなかった。


 これの前も、もっともっと前も、似たようなことが書かれていた。


 何とも悪趣味な、書き込みようである。


 その日は〈代行屋〉の――中身の無いSNSをまたちょっと見ながら、用を足して住まいへと帰った。


 その僅か、二、三日後のことである。


 まだまだ梅雨始めだというにも関わらず、その日は燦々さんさんと太陽が照り付ける猛暑日のこと――


 ふと、外を歩いていた皐月の前に、例の格好をしたそいつは現れたのだ…………


『おやおやぁ?その顔、リストに載っている神眼者であるとお見受けします。

 確か………名前は、う〜んと、う〜んと…………あッ!インコ摩擦まさつちゃんだ!

 そうだ!そうだ!ギャハハハハハッ!』


 軽快な機械音の声を流しながら、こちらへと話し掛ける。


「……話に聞いていた通りのふざけた格好。

 いくら熱さ暑さを感じない神眼者だからと言って、こんな天気の中、そのような暑苦しいスタイル性を守っている―――

 確かに小暮先生が言っていた通り、あれが奴の〈正装姿〉であるのかも。

 にしても…………なんですか、その売れなさそうな芸人のような名前の人は。

 私には『伊駒皐月いこまさつき』って、立派な名前があるんですよ」


『何だよ。何だよぉ。ほとんど間違ってぇじゃねぇか。

 けどまぁ…………人の名前は間違えるもんじゃないわな。

 ――失敬、謝罪させて貰うよ。すまんすまん』


「………はぁ」


『どうにも貴女おめの目にゃあ、私がおちゃらけた変人程度でしか見てねぇんだろうが、これでも依頼だけは絶対に守る女だぜ。

 身なりはこんなでも中身はクソ真面目だからよ。――さぁて、お仕事だ!

 早速そのお目々めめさん、抜き取らせて頂くぜ』


「こいつはまた………とんだお調子者やろうのご登場って訳ですね。

 ……しかし、こうなることなら、前持って先生から奴の目力を聞いておくんでした」


 少し、後悔をする皐月であった。


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[あとがき]

◼︎能力解説◻︎


目力:【敵情視察シー・エイム


神眼単体、もしくはそれを持つ者-〈神眼者〉を目にすることで、その神眼に宿る目力の解明。

 どのような力があり、その発動条件、その全てを知ることが出来る。

 言うなれば目利き――、鑑定の力を持った異能である。


           監修:小暮 真木奈


※M.K.=目ン玉M.恐いK. さん の略では無かった訳ですね。ある意味では合っているのかもしれませんが………


〔補足〕

 ちなみに……、記録している各目力の名称ネームについては、基本的に使い手が呼称しているものから取っているが――、

 特別、使い手が何も名乗っていなかったりする目力については個人的にしっくりときた名称ネームとして残しているのだとか。

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