-ピヤー ドゥ ウイユ- アイランド・ゲーム4 第四部 ⒈ 新芽

⒈ 新芽(1) とある彼女の物語

 ――あっ、どうも皆様、初めまして。


 突然ですが、私は北栖川雨目々きたすがわめめめと申します。


 華の十七歳、絶賛女子高生しています。


 お気軽に『めめめちゃん』とお呼び下さい。


 いやいや自己紹介されたって、そもそもこんなぽっと出の女子高生以前にあんたは誰?、って言いたいところでしょうが――


 まずは何も言わず、どうか私の現在に至るまでの経緯いきさつを聞いて頂きたい。


 かつて私は――秋田県由利本荘市西目町西目中ノ目にしめまちにしめなかのめ在住の………これまた何だか、《目》に縁のある住所に住んでいるってこと以外は、なんら普通のごくごく平凡な一学生………の筈でした。


 その日は、地域周辺に台風が吹き荒れ、落ち着くまで校内でしばらく待機していた私は―――、空が晴れ渡ると一人、家に向かって歩いていました。


 その帰り道、あろうことか私はぬかるみに足を取られ、これまた不運なことに目の前から水溜りにタイヤを滑らせスリップした車が迫って来て…………私は死にました。


 あまりにあっさりと、自分の人生が終わった瞬間を私は受け止める間も無く、気付けば目の前に一人の女の子が立っていました。


 ぱっちりお目々めめの綺麗なエメラルドグリーンの色をした瞳でまじまじと見詰められ、この可愛い生物は一体何処どこから迷い込んだのだろうか………?


 なんて思っていると、その女の子は一言、『貴方は生きる為なら、例外無くどんな犠牲ぎせいを払うことも出来ますか?』―――と。


 犠牲?それは何を言っているのだろうかと思っていると、それらを察してか、彼女は私に全てを教えて下さいました。


 彼女自身のこと、この場所-【天国】が如何なるところなのか、自分が如何にして死んでしまったのか、また死んだ人間が一度だけ蘇ることの出来る手段とその条件についてのこと。


 彼女の名はヘアム。何でも目の女神様らしい。


 目の女神様って、なんだよッ!…………ってツッコミはさておき、その目の女神様は私に、とある試練を乗り越えることで地球上にて今一度、生きるチャンスを与えてやると言いました。


 良く分かりませんが、生きてこの訳の分からないところから出ることが出来るならと―――私は怪しげなその試練とやらに、挑戦することにしました。


 眼球を移植するだけというその試練は、それだけ聞くと試練と言うには大それたことのようであるが、実の話、そんなことは無い。


 とにかく痛い。痛くて、苦しくて、はち切れそうで、お腹の中のものが出ちゃうんじゃないかってくらい痛くて…………って、おんなじこと言いましたね、私。


 と、とにかくっ、そう言うことなんです!


 生き返られるなんて甘い話には裏があると言うことですよ!


 どうにもそれと言うのが、死をも絶する壮絶な痛みだそうで、痛みに弱い男性ならば0%、一つとして例外があるらしいそうですが………


 片や女性でも1%に満たない確率でしか、その痛みに耐えられる猛者は、そう数としていないと言う。


 それでも私は耐えました。ええ、耐えましたとも。十七年の人生で終わらせてなるものですか。


 こんなものはもう、根性ですよ!


 意地でも生きてやるってやつですよ!


 そんなこんなで無事に移植出来た私は、趣味の悪いヘンテコ柄の眼球を手に入れました。……もうほんと、《目》にゆかり有り過ぎでしょ私ッ!


 あっ!そう言えば、後で分かったんだけど、柄かと思ったそいつは瞳孔だったって訳。別にウケる要素一つも無し。


 それで、両目に変な眼球を入れられて、これで貴女は生き返れますなんて言われて、何を言ってるんだこの人………なんて思っていたら、気付けばへと戻っていました。


 あれは何だったんだろう、なんて思っていると、腕の携帯:〈EPOCHエポック〉が赤く点滅した光を発光させながら――

 『近くに神眼者プレイヤーの存在をキャッチ』――なんて、訳の分からない音声が鳴り出して、何これ何これなんてなっていると、目の前から両目光らせた変な女性が現れて、その人は私を発見するなり襲い掛かってきた。


 それが私にとっての、【Pilleur de oeilデスゲーム】の始まり。


 あの女神様ときたら、ロクにこのゲームのことの説明もせず、蘇生したての世間知らずな女の子を、こんな危険地帯に放り出して………そう、ここはすでに私の知る


 確かにここは、元の世界ではあった。


 周囲には家などの建築物があって、誰しもが良く見るカラスが空を飛んでいて、道路も外灯も明らかに元いた世界ならではの景色が目に見えて映っている。


 だけど、それらの景色は地元の景色それとはまるで違う。


 あの目神様は人を蘇生させても、人を元いた場所に戻すことはしないらしい。


 そもそも、そんな約束はされていないのだから、それまでと言われたら…………なんて素直になる気は無いが、そもそもの目神様との連絡手段が無いのだから、こんなのはただの愚痴だ。


 だけど生き返ったのなら、まずは両親に顔を見せて上げたいって、思うところがあるの。


 はぁ〜………、私が地元にいないって気付いたら、どんな反応するんだろう。


 両親からしたら、今の私って《神隠し》にでもあったとか思われるのかな?


 心配だなぁ……二人とも、歳が歳だから。


 ……えっと、実に個人的な話で本筋から脱線してしまって、その――ごめんなさい。………話、戻すね。


 そんなこんなで、私はその変な人に襲われてしまい、そこで色々と…………


 そう――例えばそれが、目を奪い合う理不尽なゲームであることだとか、私が授かった変な目の特殊な力に目覚めたりだとか…………


 と、とにかくッ!色々なことがあったのだけど、結果を言うと―――何とか私のことを襲ってきた、その人物の対処に成功する。


 たかが一学生でも、やる時はやるんだから!


 そうして………取り敢えずの危機を脱した私は、そいつとの闘いを通してEPOCHエポックからゲームについての知識を得られることを学び、ざっと読んだ中で私なりにこのゲームについて簡単に説明しようと思う。


 まずは基礎知識として、私のようなヘンテコな目を持った人達のことを―――、何でも『神眼者しんがんしゃ』と言うらしい。


 と言うことは、ですよ。私がずっとヘンテコな目と言ってたあれは――、『神眼しんがん』って言うんですね。ここで初めて知りました。


 話を戻すと、その神眼者同士が互いの目を賭けて闘い合い、奪えた者だけが生存権を与えられる。


 奪った神眼一つにつき、一日の生存権を獲得でき、また奪われた側も片目の神眼が残っていれば、今の相手が無理でも別の相手から奪うことが出来れば、生き残るチャンスは存在する。


 だが、二つの神眼を両方とも失ってしまえば、強制的にGAME OVERゲームオーバー


 神眼を失うことは神眼者にとって死―――、そのものであるそうです。


 何故ならそれは、一度死んだ人間の心臓が動くかって話ですよ。


 つまりはその神眼ってものが、心臓の役割を担っているらしいです。


 もう、なんなのこの目。


 あとは………そう――、何もこのゲームは《必ずしも、ソロプレイを強要とするもの》――なんて、デスゲームものだと有りがちな、理不尽過ぎる要素……俗に言う、『縛りルール』が掛けられている、という訳では無い。


 確かにそこはゲームらしく、一日における、ゲーム終了までの制限時間なるものは存在し、時間内までに神眼の一つでも回収出来なければ、その最期には《無慈悲な死》が待っているというもの――。


 ただし、他の神眼者と手を取り、協力して一人の参加プレイヤーから神眼を回収しようが、そこは自由と言うことだ。


 自身を含め、最大七人からなる集団でワンチームを結成。複数の神眼者と協力体制を取って良いとのこと。


 更には誰かとチームを組むことで、《自分かどなたか》――


 チームの誰か一人が回収に成功し、神眼を得ることさえ出来れば、たとえ自分が神眼の回収に失敗したとしても―――、結果として、その神眼一つを差し出すだけでチームの皆に生存権が与えられるという。


 正直言って、そのルールは己の生存率を高める上では、非常に助かるものである。


 助かる?何を言っちゃっているんですか、私は?


 そもそもこの時点で――、神眼を手にして生き延びることが出来たのが、運の尽きだったってことなんですよ!


 こんな胡散臭い目に手を出してしまったがばかりに………生き返ったとは裏腹に、命懸けのゲームに巻き込まれてしまったのだから、なんの為に生き返れたのかほんと分かったものじゃありませんから!


 これはあれです。とんだものもらいでも貰ってきた、って感じですよ!


 最早もはや、こんな状況に巻き込まれてからではこんな………愚痴みたいなことを言っていても、現状が打開される訳でもありませんから。


 仕方無く現実を見ることにし、元はと言えば自分自身生きたいと思って生き返ることが出来た手前――


 生きた心地がしない生活状況であろうと、命を粗末にするような真似は何ともし難い………と言うより、何かそれこそあの神様の思う壺のような気がして……………


 そもそも、生き返って早々に命を亡くすようなら、何の為に生き返ったのか意味が分からないし―――、


 こうなったら何が何でも生き残る為に、協力関係を築く能力者たちの重要性にあたって考える訳ですが、立場上―――大層にも、誰彼構って仲間を選べるような状況に無いというのが世の常リアル


 だって、そうでしょ!


 何も私、このゲーム開始当日からいる、ベテランプレイヤーでも無いんだよ。


 とんでもなく突出した部分でも無い限り、何日も生き抜いた実力者たちが新規プレイヤーを招待してくれますか、って話ですよ。


 新規プレイヤーは新規プレイヤー同士、分からないことだらけで協力し合ったところで、幾つもの戦場を潜り抜けてきたベテランプレイヤーチームには敵わないって。


 寄せ集めの弱者グループと選りすぐりの強者グループ、まさにそんな組織図が私がこの場に繰り出される前からそれはすでに出来上がっているんだよ。……何とも言えないけれど。


 けどそれこそ、ベテランプレイヤーの恰好の餌ですよ。


 ………………


 ………あ、聞いちゃう?


 聞いちゃう感じですか?


 ええ、そうですよ。お察しの通り、私はぼっちプレイヤーとして、ギリギリの中を生きている状況ですよ。


 何が悲しくて、一人で命張らなくちゃならないんですか!


 強力な能力を持った神眼者は―――生き残るべく、同じように強力な能力を持った相手と手を組む傾向が目に見えて分かる。


 かと言って、思考を変えて自分の持つ能力と相性の良い能力者を探す………というのは、一体いつどこでそんな恋愛漫画ばりの出逢い保証運命的な出逢いがあるというのか。正直に言って現実的では無い。


 そもそもこの島に飛んでそう日が経ってないんだから、信頼し合える神眼者の一人や二人、そうそう簡単に出会える訳無いでしょうがぁぁぁぁ!


 友達作るのも、ままならないって言うのにぃぃぃぃ!


 誰か、誰か私と手を組んでくれ~!(切実な思い)


 ………えー、大変お恥ずかしいところをお見せしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。


 ……何と言いますか。色々と変なことになってしまいましたが、ゲームの概要と致しましてはそんなところでしょうか?


 ……あっ、待って待って!なにぶん取り出してしまったものだから、重要なことを言い忘れておりました。


 現状として、このゲームから降りる方法は無いみたいです。


 ま、それは当然だよね。


 もしもそんな穴があるとすれば、さっきの人みたいに命懸けで私のことを襲ってくるような人はいない筈だもの。


 そもそもの話、この土地から出ることすら敵わない状況となっている。


 何故ならば私が飛ばされた場所は…………本土とは離れた、、その存在自体が幻とされていたであるのだった。


 十二年前、日本列島を突如として襲い掛かった史上類を見ない大震災。


 それによる被害は凄まじく、それは大陸の一部が割れる程の勢いで日本国民を様々な意味でどん底へと突き落とした厄災中の厄災。


 割れた大陸のニュースは今でも最近のことのように覚えている衝撃的なものであったが、それはだけに、こうしてその大陸の上に足を付けているこの現実に驚くばかりである。


 幻の島、その名は島の住民に聞くところによれば、『布都部島ふつべしま』………と言うらしい。


 どうやら外部の人間には、一部しかその存在を知られていないらしく、時折ときおり――、船でこの島へと渡ってくる運搬業者の人間と会うことも少なくは無い。


 にしても何故、この島の存在がこんなにも秘密裏になっていたのか?


 それこそ島の人たちが動画やメール、SNS等、何かしらの投稿をきっかけに、世界にこの島の存在が知られてしまう発信がされることがあってしまっても、そう可笑しくは無い筈。


 実はそれに関して、この島のある謎を耳にしたことがある。


 なんでも、島にいる人達同士での連絡等のやり取りはこれと言った問題が無いものの――島外とうがい………それこそさっき言った動画やメール、SNS等を送信しようとすると、どういう訳かそれが出来ないという。


 とある電波塔から謎の妨害電波を島一帯に飛ばしているだとか、島の頭上に無人飛行体、空飛ぶ基地局が浮かんでいて、それが何かしらの電波を流しているだとか、何かと色々ささやかれてはいるが、詳しいことは良く分かっていない。


 これって、私の親の立場からして見れば、自分の子が神隠しにあってしまったかのような感覚だよね。


 この島に飛ばされて来てしまった以上、地元には私の痕跡は一切残されていない訳だし。無事を知らせたくとも、連絡は付けられない。


 お父さんおどお母さんおがマジでほんこに心配掛けて申し訳ないしかたにゃとは言えんだども私が悪いって訳では無いけどんでねぇが………


 ……ごめんなさい。家族のことを思い出したらなんか、その……自然と直接的に方言なまりが出てしまって……………多分、私自身心細いのだと思う。


 かく言う私もこの島に飛ばされた初日、のがれられないと頭では理解はしていても………


 あっ!なんでどうすることも出来ないと思ってしまった、その理由についてはこの後話すから、まずは順序立てて話を進めようと思うからちょっとだけ待っててね!


 ええと、続き続き!


 それでも限られた可能性を信じ、助けを求めて実家に電話を掛けようとしたのだが、携帯は圏外と表示され、連絡が出来なかった。


 メールでも試してみたが、送信エラーが出っぱなしでそちらも駄目に終わった。


 これも今の時代の発達したテクノロジーによるものとでも言うのだろうか。


 何にせよ、その謎の現象がここにいる島の住人と一部の関係者のみが知り得る幻として、島の存在が伏せられてしまっていることは確かなようである。


 更にはこの島で、ある発見があった。


 それは現代の厳しい地球環境において必須とも言えるNEMTD製品を生み出し続けている、現在一番の波に乗った会社-〈NEMTDネムテッド株式会社〉のがここ、布都部島に存在したことである。


 今や世界中の人の支えになっている、必要不可欠な生活必需品を製造している会社だけあって、当然のように海外支社進出を果たしている訳だが………色々と謎な会社であり、それほど大きな組織であるにも関わらず、何故なにゆえに支社の数は二つ。


 場所は東アフリカの〈エチオピア〉とロシアの〈オイミャコン〉にそれぞれ建てられてはいるが、あくまで製造については本社でしか行われていないという話だ。


 あまりに本社の存在を伏せられているだけに、一体どこにそれは建てられているのか、無類の都市伝説マニアからしてみれば、これは世紀の大発見と言ったところだろう。


 にしても、何故なぜこの島の存在は、現在進行形で隠蔽され続けているのだろうか?


 ただ言えるのは、この島の住民ごと、上の金の力で島の存在もろともお迎え込まれているってことでしょうね。


 一体誰が、何の目的の為に…………


 何もかもが謎だらけに包まれている島だけに、早いとこ地元へと帰りたくとも空港施設も無い以上、空からの脱出が出来ないとなれば、実質この島から出られる交通手段はどうやら船のみ。


 だがその船も旅客船は一つとして来ず、精々せいぜい、運送業者の扱う貨物船にこっそり乗り込むことぐらいでしかそれは無理な話だろう。


 だがそれも、ほぼ不可能なことである。


 何故なぜなら船が停泊する港はこの島で一ヶ所のみであり、その周辺にはパッと見で分かる範囲でも数十個はくだらない数の監視カメラが設置されていて、まるでこの島の存在を機密漏洩せんとばかりに、厳重な警備で固められているのだ。


 その日はカメラの点検をしている人がいて、大方動作チェックでもしていたのか、どうやらカメラには警報装置アラーム機能が付いているようで、誤作動で鳴らしちゃっている様子を見たことがある。


 ブゥ〜ン!っとけたたましい高音が鳴り響き、あまりの五月蠅うるささに思わず耳を繋いだものだ。


 港の前では一切の隙を見せぬ関門の如く、四六時中構えている出入港管理局の目もあるので、それらをかいくぐるのは現実味が無さ過ぎて、まさに脱獄不可能の牢獄のような場所である。


 ならばと港からの脱出を諦め、泳いで日本列島を目指そうものなら、この島の詳しい位置情報が分かっていない以上、それは現実的とは言えない。


 私は島からの脱出を諦めることにした。


 そもそも………と言うより、このゲームのルール説明的なものの中に赤文字で書かれた、如何いかにもな《注意書き》という感じでこのようなことが書かれている。


【注意】

 もしも、島からの逃亡をされた神眼者がいましたら、島を出た時点でゲームリタイアと見なし、即刻排除と致しますので予め御了承下さい。

 また、冗談とお思いで万が一にも島から出て行ってしまわれた場合、全ては自己責任になりますので、それでどうなろうとも覚悟のおいででしょう。

 くれぐれも下手な行動は起こさないよう、痛い目を見たくなければ…………ですが。


 ………………


 ………………


 ………………


 ……ちょっと~~~~ッ!


 こんなことが書いてあって、冗談………なんて思う訳無いでしょ!


 馬鹿なの?駄目って言われる程、それをしたくなっちゃう人間の心理を揺さぶったつもりなの?


 フリじゃないよ?ヤダよ!折角の命を無駄にするかもしれないようなこと、やる訳無いじゃない!


 無理ったら無理っ!誰がなんと言おうと嫌だからね~ッ!


 危険な橋を渡ろうなんて、度胸無いからっ!あくまで私は堅実な選択をとる!


 そうして私はこの島、布都部島にこのまま移住することを決意した。


 移住と言えば、大事なことがある。


 突然、右も左も分からない土地に飛ばされたものだから、初日にしてそう簡単に住む場所を見つけることが出来るのかって話!


 でもそこは、安心して頂きたい。


 もしもキミがひょんな事からヘンテコな目を手に入れて、生き返るようなことがあった時の為に覚えておくと良いだろう。


 この知識もEPOCHエポックから……………そうそう、なんか当たり前のようにこの機械使ってたけど、あくまでこれは私が元々持っていたものでは無い。


 生き返り、この地へ飛ばされた時から、EPOCHそれは何故か私のに取り付けられていた。


 私がだから?


 もしそれを知ってだとしたら、まるで監視されているようで恐い話である。


 このEPOCHは無理に外そうとしても、一切ビクともしなかった。


 良く分からないが、ロックが掛けられているのだろうか?


 何かこう、目覚めたら腕に機械めいた装置が付けられていたって展開―――、


 如何いかにも、デスゲームにあるあるのアイテムではあるが、あくまでもこれは携帯な訳だし、危険なものというものでも無いとは思うけれど…………


 あっ。でも知らないでGPSとか飛ばしていて、位置情報とかバレちゃってるのかも?


 そうじゃなきゃ、毎日みたく、あれやこれやと神眼者と出会うことなんて、偶然にしては…………


 もしかして私が知らないだけで、この端末にはまだ秘密の機能があったりなんかして……………ううっ、考えただけで、とてつもなく恐ろしく思えてきた。


 は、話戻そう!ねっ!ねっ!


 ……と、言う訳でですね。


 そうしてあの目神様の勝手によって、理不尽に爪弾きにされた神眼者たちに僅かな助けとして、ちょっとしたサービスを―――、元より住める場所の手配はしてくれるという。


 これはどうもご親切に………って、あの目神様も、親切にする部分が色々とズレてない?


 ――何なの?一度死んだ人間に対しては、神様ってのは対応が悪くなる訳?


 言うなれば、『死人に口無し』ならぬ『死人に無し』みたいな?


 いやほんと、扱いという扱いがなっていませんが、用意してくれる部屋だけは良い感じで―――


 中々に眺めの良い、高層ビルの一室を用意してくれるらしく、海風に当たりながら、快適なお部屋を満喫出来るとのこと。


 だがそれでも、光熱費・水道代等々生活していく上で、どうしても発生する出費に関しては自分の手で稼がなければいけない。


 そこは人として当然っちゃあ、当然ではあるが………


 学費の面は………まぁ、一応の奨学金制度もあるし、借金背負って生きることにはなるけれど…………


 そこはコツコツと未来の自分が稼いで、返済することを祈るしか無い。


 これが生きる、ということなのだから。


 それでも、高校生な訳だし?


 バイトの出来る歳とは言え、社会人でも無い以上、なるべくなら出費を減らせるなら減らしていきたいところ。


 そんな学生の方に、朗報です。


 この手配してくれるというマンションですが、学生の神眼者に限り、会社の寮みたく家賃、電気代、水道代が掛からないという。


 何処どこからか、裏の金でも回っているのだろうか?


 社会の恐さである。


 何でも――とある金持ちの私有地にあるマンションだとか何だとか、そんな噂を耳にしたこともある。


 そうそう!先程、生活費の話を出したが、私物でも無い、EPOCHエポックの月々の携帯料金は一文足りとも掛からないときた。


 いやほんと、そうでないと困る。


 契約したものならまだしも、勝手に私物化―――ましてや、こんな腕から外れない不良品携帯の請求なんてきてしまっては、とんだ詐欺ぼったくりである。


 とは言え、家賃もお安く、都会でもまして今時いまどき、田舎でも見ないような―――その激安賃金には驚きはした。


 まさか生き返って、デスゲームをさせられるなんて一言も聞かされていない以上、そのくらい配慮はして頂かないと。そのくらいの配慮はして頂かないと?


 あれ?感覚が可笑しくなっているぞ?


 これだと私、頭イッちゃってるな。


 …………こ、こほんっ!


 ……ま、まあ、あれですよ。訳も分からず、右も左も分からない場所へと飛ばされ、行く宛も頼る宛も無い以上、そこに手を引かれてしまうのも無理は無いって話ですよ。


 だがしかし、だがしかしだ。


 安易に、そこで騙されてはいけない。


 それほどの住む所を手配してくれるのは良い話だが、正直言って――それを素直に受け入れることは出来ない。


 考えて見て欲しい。


 とどのつまり、そのビルには私と同様の人達が住まう、いわゆる巣窟となっているのだという現実――。


 それら同種神眼者との命のやり取りがある以上、とてもじゃないが、ゆったりくつろげるものじゃないだろう。


 とまぁそういうこともあり―――多少の値が張っても、そのビルから離れた質素なマンションを借りて住んでいる。


 勿論、高校生活に支障をきたさない程度のバイト内で、どうにか生活していけるぐらいの、それなりに家賃のラインを落としたそこそこのマンションですよ。


 ええ、無理してませんとも。


 それといくつか、EPOCHから確認した情報によると、今の私は飲まず食わずとも生きてはいけるらしいが、栄養が回らず活動限界が超えて、まともに身体を動かせなくなるのはどうしようも出来ない。


 だからこそ、これまで通り食事を摂る生活を送っている訳だが、まぁ…………そないな話はどうでも良いことである。


 そんなこんなで私、北栖川雨目々きたすがわめめめはこうして神眼者生活ライフを―――かれこれ三週間は送っているということである。


 そう言えば、この島に来てからというもの、色々な方言で話す人達を何かと目にするようになった気がする。


 ある日は博多弁、またある日は大阪弁を聞いたりと、一つのところでごった返しに色々な方言が入り交じるのも、やはり私のような他県から四方八方、この島へと飛ばされて来た人が存在するということだろう。


 そう言えば………この間、どこぞのヒーローみたいな姿に変身した人を見掛けました。


 あれは一体………何だったのでしょうか?


-------------------------------------------------------------

[あとがき]

まずはちょっとした復習回みたいなものから入ってくる形ですが、意外とまだ読み進めていて謎だった部分が多々出てきたことだろうと思います。


これを機に読み返してみると、新たな発見があるかもしれませんよ。


なので今回は復習回ということで、ここで神眼の特徴として見られる目力以外の《性質》についておさらい


【超視力】◇ちょうしりょく◆

一般の人間が持つ視力を優に超える高い視力を持つ

(人類で最も視力が高いと言われているのは、アフリカのタンザニアに暮らすハッザ族と言われ、そこで暮らす人達の中には視力11.0を持つ方もいるとのこと。ちなみに視力11.0ってどの範囲まで見えるのかと言うと、なんでも14階のビル屋上から地面に立てて置かれたパスタ麺を数えられるぐらいにまで相当するとのこと。ヤバいの一言に尽きます)


【暗視】◇あんし◆

その名の通り、暗いところでもはっきりと見える

(暗視と言えば夜行性動物であるネコが一番に上げられるとは思いますが、元より人間とネコとでは視界に映る色の見え方が異なり、人間は赤・緑・青の三種類の錐体をもつ3色型色覚だが、ネコは緑と青の二種類の色覚受容体しかもたない2色型色覚とされている為、認識できる色の種類が少ない。

しかし神眼における暗視力は高いレベルで優れており、まるで昼間見ている景色の色を暗い夜でもはっきりと捉えられるぐらいの暗視力を普通に有している。暗視ゴーグルの比では無い、神眼の眼光の凄さよ)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る