⒌ 秒視(2) 小さき殺戮者
足音一つ立てぬまま、
「―――ッ!」
間一髪それに気付き、ギリギリのところで眼球を狙ってきた
「何がッ………」
「あちゃ~、いけると思ったんやけどなぁ~ッ!」
「……そうか。テメェらも神眼者か」
「バレちゃあしゃあない。この際、隠し事は無しや。
実は
いっつも誰かの下に付いている印象あってなんかこう………あくまで勝手なイメージやけど、なんやそのせいでどうにも下っ端臭
どっかのタイミングでバッタリ遭遇したらその時は、簡単に奪えるものかと思っとったんすけど、少々
「……チッ、どういうことだ。まるで殺気が感じられやしなかッた。………あれは一体……………」
「……殺気て?ぷっ、あははははっ、おもろいこと言うなや
だいたい、みな自分の命の為だとかで、どうにかせないかんと目ン玉奪いに必死なるあまり、これでもかと殺気立ち過ぎなんや。
逆に何故、殺気立つ必要があるんや?だってそうやろ?ゲームはどんな時も楽しむもんさかい」
「楽しむ………だと?こんなゲームのどこに楽しさがあるッてんだ。頭沸いてンじゃねェのか?」
「ちょいちょい、人を変人扱いするなや。まるで
「チッ………自覚症状の
「……なんでや?そこですぐ謝ってくれんなら、さっきの発言を取り消してやろかと思っとったちゅうに……………気ィ変わったわ。
これでも初めは片目だけで勘弁しとくつもりやったんやけどなぁ~。
そなこと言う先輩にはお仕置きをせなや。
瞬間、
「うっ、なんなんだこの強烈な輝きは――」
「どや、このドカーンッと
こいつはな、
見たまんま、強い光で相手の視界を奪う、これまた芸のない能力っちゅうやっちゃな。
だからと言ってこれだけやない。右の目はこれまた強烈やで」
「何を言ってやがん…………」
瞬間、見桐は右目を開眼し、何やら持っていたカバンのチャックの隙間から何かを覗き込む様子を見せる。
「さあさあ、こいつは見逃し厳禁やで!」
すると彼女の肩に掛けていた通学用のカバンが突如として不気味に
中から出てきたもの、それは――
「…………んだそれ?……おもちゃか?」
「せや!……けど、
その言葉の通り、中から出てきたおもちゃ達は、ニコやかな表情を浮かべた愛くるしいお人形さんだったり、可愛らしいコミカルなデザインをした動物のぬいぐるみ、ディスプレイからライトアップした二つ目をキョロキョロと覗かせるトイロボットやビックリ箱らしきプレゼントBOXだったりと、一見なんてことない一般的なおもちゃにしか見えないようだが………
まぁ確かに、それらが動いているのは気味が悪いが、今時のおもちゃは色々と進化していて、例えばリモコン操作では無く携帯などを用いた無線通信によるコントロール操作であったり、声や音に反応して動かす音声操作であったり、おもちゃが動く理由には様々な要因が考えられるので、ここではやはりなんてことないおもちゃではないかと、そう唯羽が思いかけた時だった。
可動式おもちゃの動きとは思えない滑らかな動きで人形やらぬいぐるみやらが次々とカバンの中から上半分しか見えていなかったその姿・全貌を露わするかのように、おもちゃ達は次々とバッグの中からジャンプして飛び出していく。
すると、そこにあった姿はとんでもなく異様なもので、カバンの中から覗く顔から上半身の姿だけを見た時は本当におもちゃの外見をしていたのに、そこから下の姿はおもちゃに似つかわしくない刃物や鋭利な針などが縫い付けられ露出した、なんとも
『『『『ギャハハ、クヒッキヒヒヒッ、ハハハウヒィヒャハハハhッ!』』』』
気色の悪い、狂ったように耳障りな笑い声……微妙にクリアでも無い声は玩具の音声モジュールから発せられた、傷付きノイズまじりの音の集合体。
「…………なんだそのおもちゃ?趣味悪すぎンだろ」
「さぁさぁ、《
針や刃の指をした両手を重そうに地面に引きずりながら、不気味にケタケタと頭を左右に揺らし接近してくる人形。
自らの腹を
恐ろしく安全基準に反する、一般的に考えればディスプレイが壊れているとしか思えない、万が一にも直接目にしてしまったら失明しても可笑しくないと思ってしまえる程の、やたら強烈な光を発しながら、電動ドリルへと差し替えられた改造腕を高速に異常回転させて急接近してくるトイロボット。
そしてコロコロとBOX状のまま転がりながら、時に飛び跳ねるなどの動作をしながら不気味に迫り来るビックリ箱。
その中で一足先に唯羽との距離を縮めてきたのはその箱。
箱は一定の距離まで転がりながら近付くと、中身が展開。
勢いよく蓋が開かれ、そこから飛び出して来たのは長いバネの先に付いたピエロの顔、ユーモラス溢れるU字スマイルを浮かべる十字目の可愛いらしいデザインをしたピエロの顔が現れたかと思うと、その可愛らしい顔からは想像も付かない恐ろしく大きな口があんぐりと開かれ――
ズプリッ!
必死に抵抗を試みようと神眼を開眼しようとする唯羽だったが、目力-【
少しでも光を
「ぐあぁぁあああ………………ッ!」
数十本のナイフが右腕に喰い込み、その痛さに苦痛を上げる唯羽。
だが、ビックリ箱の攻撃はこれだけに収まらなかった。
ガッチリと右腕を咥えると、箱の底に仕掛けられた回転盤が作動。
バネと一緒にピエロの顔が回転を始め、力強く咥えられたその口が離れようとせず、そのまま腕ごと強引に回転の力が働こうとする。
ギチギチッと肉が引き千切られていく音が聞こえてきたその直後、反動で勢いよく右腕が変な方向に捻じ曲がり、そして――
「ぎぃやぁぁあああああああああぁぁぁぁぁ――――――ッ!」
腕は変な方向に曲がるどころか、唯羽の右腕はもぎ取られた。
あまりの痛みに最初に噛み付かれた以上の悲鳴が上がる唯羽。
腕をもがれ傷口からは多量に流血し、神眼を略奪されていない以上こんな状態でも取り敢えずは死ぬことは無いが、それでも事態は最悪でしかない。
「どや、
玩具や器物、無生物に対し、命を与える力を持っていて、この通り玩具本来の可動域を超え、生物のような軽やかさと変則的な動きをとる奴らの前には最後、誰にも予測が付けへん行動パターンに為す術なくやられてまうことや」
「……テメェ、よくもウチの腕を…………………………」
「……こいつは私が加勢するまでも無いな」
彼女の仲間である例のエビフライもといポニーテールの少女がそう口を開く。
「パ-リーは
そうして彼女の元に接近して来ていた他の玩具達全てが目の前から一斉に飛び掛かるのだった。
それはまさに地獄のような光景が唯羽の眼前に広がる中、彼女は―――……
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[あとがき]
【
今回、【
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【
生遺物を操る異能
(魂が宿っていたものを対象とした能力)
【
無機物を操る異能
(魂が宿っていないものを対象とした能力)
◼︎互換性◻︎
【
操れる対象となる種類の数の違いからこのような評価をされている。
※ちなみに目狂は愛嬌をもじった造語になります。
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