⒊ 孤憂勢威(3) 元能力者の女
……ウチは…………どうなったのだろうか?
あの団子頭の女に最後の神眼を奪われ、ウチは…………ウチは…………………
死んだ…………のか…………………?
……けど、
彼女はゆっくりと目を開いた。
「あ、れ………ウチ、死んで……ない…………………?」
三日月斬月が創り出した雷獣の攻撃を受けて気絶してから数十分後、意識が目覚めた《
「こいつは……………ブシュラさんの実験が成功したってことか?」
紛れも無く、神眼が失ったと分かる感覚である。
「……ってことはぁ?ウチ、
【
『―♪』
そんな時、彼女の腕に付けられた
「
有見はEPOCHの電源を入れると、空中に浮かぶタッチパネルが現れ、そこに表示された《お知らせ》のコマンドには通知バッジの1という数字が表示されていた。
最早、彼女の中でゲームは終わったのだが、それでもこの通知が気になった有見は、《お知らせ》のコマンドをタッチした。
「へっ?〈神眼者:針海有見様への大切なお知らせ〉だって?」
何やら気になる件名が書かれたその中身を見てみると、有見は驚愕した。
「……な、何で……………こんなのって………冗談じゃねぇぞ!何勝手にふざけたことズラズラと……………」
それにはこのようなことが書かれていた。
『はじめに、このお知らせは記述通り貴女のデバイスにのみ送信されたものになります。
何故このタイミングで貴女宛てにお知らせが送られてきたのか、大方見当が付くといったところでは無いでしょうか?
何せ、神眼を失ったにも関わらず、ご存命なされているのですから…………
私が全てを視点に視ている限り、如何なる隠し事も意味を成さない。
それは貴女のみならず、世界で――宇宙で――リアルタイムで起きている物事一つ一つが常に私には視えている
表示された文字がここで切れていた為、画面を下へとスライドしていく。
『私が目神の名を冠する
この私に授かりし最上の目に見通せないものなど、決して訪れることの無い天則にして、無限の視界を持ちしこの目から永久に逃れられることは絶対的に不可避。
今や
は?、という感想が第一に出てきてしまう意味の分からぬメッセージが書き連ねているが、ひとまず通しで最後まで文章を閲覧していった
『ある一柱は【
相変わらず意味不明な文章が続く中、問題なのはこの下。
『―さて、このお知らせで一番に伝えたいことがまだでしたね。
結論からして、神眼を失ったからといって貴女にはゲームから降りられるとは考えないで頂きたい。
邪魔者には即座にご退場頂くことも私の手によって出来たが、だからと言って折角生きた命だ。そう安易に命を取ってしまうのも実に惜しい。
命とは実に尊きもの。そこで本当ならばこのような知らせを送ることも無く、処分していたところだが、私は考えを改めることにした。
貴女のようなルールの檻から外れた存在がゲームに新しい刺激をもたらすかもしれない、と―』
続きをスライドする。
『神眼の無い人間が
貴女が神眼者の新たなる脅威となる
これにてお察しは付くことだろうとは思いますが、要は貴女には今後、神眼を移植せず、これまで通り
勿論、一般人に口外するような行動もこれまでと変わらず取らないように。
その時は……言うまでも無く分かることでしょう。どうか私の慈悲を無駄にしないことを期待していますよ』
《お知らせ》の内容はここで終了していた。
「……何が…………何が、神眼者でも無いのにゲームを続けろと………………神眼抜きであんな
この最悪な《お知らせ》の内容に怒鳴らずにはいられなかった
そんな彼女の様子を上空より見つめる一匹のカラスがいた。
カラスの足にはプラスチック製の黒い
「……まっさか、神眼を失った状態で生きている奴をヘアムちゃんは処分しないとはねぇ。にしても、あの目は一体
そうだねぇ〜、あの眼球の周りにある妙な金具からして、明らかに人工物だよね。彼女が作ったのかなぁ?で・も・で・も、そんな凄いものを作ったような、彼女には失礼だけど、ぶっちゃけ頭が良さそうな感じには見えないんだよねぇ。これは何か裏がある予感。
まっ、ヘアムちゃんなら知ってるかもしれないけど、こいつは
例の六階建ての建物、そこの地下室にて、
「とか言って、すでに目を光らせてるんだけどな」
「ちょっ、また勝手にこの部屋に入り込んで来るとか、ほんっと、デリカシー無いよね、あんた」
「まぁまぁ、僕と冴子の仲じゃない。それにしても、相変わらずその能力は便利だよね。【
一度見たカメラや動物、そのものの目線といつでも好きな時にシンクロすることが出来る能力。
とどのつまり現在、有見の近くにいるあのカラスと目線を共有しており、早江子はそのカラスの目線を通じて有見のことを見ていたという訳であった。
「と言うか、そもそもこうして私が監視せずとも、あの神様は全ての動物の行動パターンを見通すことの出来る目をお持ちな訳で………
即死んだ人に神眼を享受する例の儀を
それって私いらなくない?いらないよね?いらないじゃん」
「そうでも無いんじゃない?だって、全てを見通せるって、結構目を酷使しそうで長いこと保たないんじゃないの?」
「な〜るほどねぇ。確かにそれは一理ありそうかも。けど話、変わるけど、人の手で命を与える眼球を作り出してしまうとかそんなの。
明らかにこのゲームが始まる前々から《神眼》の研究をしていたとしか思えないよねぇ〜!」
……そしてその頃、自分の屋敷にいたブシュラ――
「さて、あの眼球の実験は上手くいっただろうか」
分厚い扉で閉ざされた地下室内にて、一人結果を心待ちにしている様子があった。
ブシュラが何気なく植え付けた、この一つの人工眼。
それをキッカケに、
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