第三部 ⒉ 処憂餓威
⒉ 処憂餓威(1) あの時の女
時は昼休み終わり近くの時間、ほとんど午後一時に近い時のこと――
『―♪』
そんな三日月斬月の元に、一本の電話が掛かってくる。
着信音と共に着信パネルが投影され、彼女はそこに表示された発信者の名前を確認すると、すぐに応答ボタンをタッチした。
すると画面は切り替わり、発信者である《目崎悠人》の顔が表示された。
「……どうかしましたか?」
『ああ、良かった。斬月さん、電話に出てくれて。今って時間、空いているか?』
「……何かお困り事でも?」
『ちょっとした
厄介なことに、その人達は敢えて危険になることを避け、確実に神眼の略奪成功を
情けない話だが、俺一人の力でどうこう出来る相手じゃない。助けが欲しいんだ。
場所は俺が通っている、【布都部高校】という名前の学校。
他の仲間のメンバーは皆、その学校の生徒達だから、そいつらにいつ狙われても
出来るだけ慎重に、人に気付かれないよう、忍びらしく隠密………に、外から様子を見て、タイミングを伺って助けに入って欲しい。
この状況では唯一、
「……私にしか…………ですか?」
『そうだ。これは斬月さんにしか、頼めないことだ』
「……そう………ですか。私しか…………………えへっ、えへへへへっ」
『大丈夫か?
「……だ、大丈夫です、はいっ!」
『そうか?大丈夫ならそれで良いのだけれど………。
取り敢えず、高校の周辺地図と念の為に学校の外観の写真――、それとリストに載っている、メンバーの一人一人の顔写真を送っといたから、それを頼りに今から来てくれ。待ってるぞ』
そこで通話は切れ、プツンッと画面は消失した。
斬月は両の刀をそれぞれ鞘に仕舞うとすぐにメールを開き、布都部高校周辺の地図を表示させると、それを頼りに移動を開始した。
歩いていると、そこそこの高さはある建物を発見し、斬月は一度高いところから大まかに場所を確認しようと、建物の屋根の上に難なく飛び乗っていった。
「ええと……この外観の建物はあそこに見えますね。でしたら、あっちの方向へと進めば良いのですね」
学校の写真を提示し、目視で目的の場所を確認してしまうと、
「あれは………」
斬月の滑走していく姿を見た何者かが口を開く。
瞬間、その者は突如として瞳を光らせると、斬月に向かって何か先の
タイミングにして、目の前の屋根の上に飛び移ろうとジャンプした瞬間である。
空中では避けようが無いと思われたが、流石は歴戦を潜り抜けてきた忍びと言ったところだろうか。揚々と軽快な動きで障害を難無く切り抜ける。
身体をぐるりと回し、上手く狙いから外れると、そこから立て直して近くの屋根の上へと着地を決めた。
「何者!」
斬月はキョロキョロと周辺を見回し、襲撃してきた相手の存在をその目で捉えようとする。
「あれあれ?酷いこと言うじゃん。前にウチの目を一つ奪っといて、何者とか言っちゃって、能力まで見せといて忘れちゃうとかマジのお馬鹿さんって奴ぅ?」
声のした方へと視線を向けると、そこには悠人のバイト先であるスーパー前にて、かつて斬月に右目を奪われた
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