⒊ 武視(7) 鉛は刀と為すべからず
「それは大変だったな、栞奈よ」
あれから栞奈は客室へと再び案内され、そこに集まったブシュラたちにこの血だらけの格好に至るまでの出来事を語っていた。
全てを知ったブシュラ。
彼女が消滅しなかったことに対し、素直な喜びを
「……
とは言え、
ここで話に割り込む栞奈。
「ちょっと待て。殺されるのが決まり事項ってどういうことだ?」
「だからゲームだと言ったであろう。奴は言うなれば
「お前、発音良すぎ。ピなんて言ったんだ?」
「すまない、栞奈に合わせてゆっくり言うべきだったな。
【ピヤー ドゥ ウイユ】、それが意味するのは、私たちの命である目を奪う者達の総称――
つまりは、私たちのような神眼を移植された者同士で命の奪い合い………
と言っても、栞奈はすでにそれを目神が見ていた映像で見たそうだから、
これは奴が持ちかけたゲーム、従わない者は死――あるのみだ」
「確かにあの映像を見た時から、
そういや、一つ思ったんだが、お前の使用人やそこの小学生がこんな話を聞いてしまって良いのか?一般人にバレたらやばいとかそういうのって…………」
「良い考察力だ。確かに奴の
「えっ!ちょっ、マジで!あの小学生も
「信用出来ないか?ならば
「はーい」
間髪入れずに閉じた目を開くと、世にも奇妙な眼球が
先程までは見られなかった瞳が、かまぼこ型の瞳孔をした赤い瞳が開かれると、突然の現象に栞奈は驚かれた。
「うおっ!一体、何がどうなって…………」
「私たち
「ってことは、私も
「ああ、神眼にプログラムされた情報が視神経を通して脳に直接伝達され、自分に移植された神眼がどういうものなのかを知った時、
「へぇ~、でもそんなことを知って何か役に立つものなのか?」
「あくまで真の神眼を知ることではない。
重要なのはその先――あのゲームを生き延びる為に欠かせない特殊な力-『
「特殊な力-『目力』?そいつは一体なんだってんだ?」
「神眼にはそれぞれ『目力』と呼ばれた、言うなれば特殊能力のような力を一つだけ、その身に宿している。
人それぞれ能力は異なり、例えば
「うん、分かった」
突然として独りでにゆらゆらと
すると影は人型に立体化しては、適当に踊り始めた。
「わ、私の影が立体化して勝手に動いて………こ、これが『目力』…………ゆ、夢じゃないんだよな」
そう言って自分の
「いててててて、
なんだってこんなのが現実だとか、色々と衝撃がデカ過ぎて整理が追い付ける訳ねぇだろが。私の頭をパンクさせる気かよ」
「深く考えようとはせず、素直に受け入れたらどうなんだ?楽になるぞ」
「とか言って、家の中で白衣を着ている奴のことだ。
自分の目に
「それを答える前に一つ言わせてもらうが、白衣で人を判断するのはどうかと思うぞ。
……とは言え、実のところ目力について一通り研究をしていたことはあった。成果としては、神眼の角膜から未知の組織を発見してな。
独自に解析を
だがそれも、神眼を開眼出来る時というのが限定されておりそれは、【他の神眼者と遭遇した時】――、
「そ……そう、なのか?」
「考えても見ろ。無意識に目を開いて、気付けば力を使っていましたなんてことがあったら、能力によっては危険なんてものじゃない。本当に良く出来ている代物だよ、神眼は。
先程挙げた例以外の用途で使用しようと目を開閉させても、ピクリとも反応しない。
開眼に値する状況下にのみ、力を使いたいという意思が尊重され、神眼はその力に応えて初めて使用可能となる。
そして、力の使用を終了するという意思を脳がキャッチした瞬間、神眼者は瞼を閉じることで『目力』は
ただし、そのコントロールは常に可能と言う訳ではなく、ある時間帯を
こればかりは解析出来なかったが、そもそも神眼は目神へアムが創り出したもの。
例えばエネルギーが常時開放状態にあると、人間の身がそれに耐え切れないと考えるとして、肉体保持の為の何か目力の制御機関のようなものを忍ばせていると考えるのが………」
ちょっとおちょくっただけだったのだが、想像以上に長々と話をする彼女を前に、そろそろ耐え切れなくなった栞奈は止めの一言を掛ける。
「だぁー、んなこと説明されたって余計理解に苦しむわ」
「おっと、そいつはすまない。どうもこの手の話をし始めると、私自身面白く歯止めがきかなくなってしまう。……それと
実はあの長話の中、ずっと踊り続けていた栞奈の影。
「ちぇ~、面白かったのになぁ…………」
そこはかとなく名残欲しそうに
「さて話は変わるが、お前がジョジョに渡したって名刺を借りて一目見たのだが……小さい字で書いてあった《手裏剣の製造も
「おまっ、いつの間に名刺を見たのかよ。……まあ、説明はするさ。
実のところ、ウチの家系は代々鍛冶屋を
それも普通の鍛冶屋じゃなくて忍者の集落に
だから鍛冶屋稀街はその
………そういや、手裏剣で思い出したのだがあいつ、今どこで何をしているんだろうな……………」
「…っくしゅん!」
場所は屋敷から少し離れた、海辺が見える三階建ての空きビルの屋上。
携帯用の
三日月のアクセサリーが付いたヘアゴムで、左右に
黒髪の中で異彩を放つ、目と目の間の垂れた白髪と大きな瞳が特徴的な彼女。
相変わらず
「……変ですね。神眼を手にしてからというもの、寒さは感じなくなってしまったというのに…………まさか誰か、私の噂でもしているのでしょうか?……って私なんかが、誰かに言われる程の人間かと思ってしまうのは良くないですよね」
自分を
彼女は
だがそれはまだ語られる時ではない。
彼女の前に一つの障害が現れたのだから。
「おや?こんなところにNEMTD-PCを着ていない奇妙な
突如として屋上の扉より出て来るは、まるで真上から見た渦のような形をした瞳孔で、彼女の顔を見つめる――、
奇形な目をした人物。それすなわち、
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