⒈ 目交(2) 内密

 NEMTD株式会社 社長室にて――


「確か今日であったな、元本社で働いていた社員達が来るというのは」


「はい」


 スーツの上からでも良く分かるそのガタイの良さと白髪混じりの髪をした、いかにもな貫禄かんろくを感じさせるNEMTD株式会社社長-『本間凞彦ほんまてるひこ』は、如何いかにも高級そうなチェアに深々と腰掛けながら、何者かとお話をされているご様子。


 お相手は黒のストッキングがなんともえる美脚を持った、ミディアムヘアーの茶髪美人社長秘書で、何やら二人は今日入ってくる社員達のことで話をしているようであった。


「それで彼らには、あのことを伏せておくのですか?」


「それが良いだろう。二年前、ここで起こったあの事件を知ったところで、来て早々に彼らを悲しませるだけだ」


「そう言うことでしたら、他の社員達には私の方から注意しておきます」


「ああ、頼んだよ」


「それと、本日のご予定はこのようになっております」


 女秘書は、その手に持っていた手帳の中身を社長の凞彦に見せた。


「ふむ、ご苦労。それで例の新作の開発は好調かね?」


「はい、商品テストはすでに完了しており、一般販売化に向けて最終調整といったところです」


「ならば良い。では、下がって良いぞ」


「それでは、失礼しました」


 女秘書が頭を下げて社長室を退出されると、一人残った凞彦はこれからむかえる社員達を歓迎すべく、立ち上がるのだった。


「さてと、私は社員達を迎え入れる準備をするとしようか」

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