⒍ 洞視(9) その約束、忘れないでくれよ
「マ・ジ・か・よ!」
予想もしなかった奇襲に対し、あまりの急展開に驚いて変なリアクションをしてしまった悠人。
彼のみならず、周囲のカラスまでも巻き込むように襲い掛かってくる一匹のサメ。
すぐに次なる障害として、目の前に迫り来るサメの脅威から
こればかりは手立てが無いとばかりに、ただ危険を感じて一直線に
明らかにこちらに向かって、慌ただしい足音を聞かせて走って来る悠人に自然と目がいけば思った通り、野生に生きる動物としての危険信号が――生存本能に駆られたエロ
何とかタヌキを引き離すことに成功し、飛び出したサメの方は
どうにかあの大口の飲み込まれずに済んだ悠人は、ほっとした瞬間にドッと疲労感に
「あっ…あんなの、動体視力と反射神経でどうにか出来る相手じゃねぇぞ。
って、うぼっ…………うわっ何だ!前が見えやしねぇ」
サメに引き続き、今度は海からひっそりと一匹のイカが顔を出し、いきなり水面から飛び跳ねたかと思えば、勢いよく真っ黒なイカ
さっきのサメ騒動による全力疾走での疲労の影響で動けない彼の顔面に
視界を塞がれるのは目を武器にする神眼者にとって、これはかなりの痛手である。
これでは抵抗しようにも、周りが見えず神眼を奪われる恰好の的である。
一直線に略奪行為には走らず、
それ
それが今となっては目を封じられてしまい、相手の開眼した神眼を目にしなければならない絶対的な発動条件が満たせないときたものだ。
だがここは幸運にも近くに海がある。
海水で顔を洗いさえすれば、簡単に視界を取り戻すことが出来るはずだ。
しかし、奴の能力からして、そう
なんせ海にも沢山の動物が潜んでいるからだ。
一瞬で良い。奴に隙を与えることが出来れば………
彼がそんなことを思っていると、たぬきの拘束から解放された季世恵が奴に反撃を開始した。
「さっきはよくも」
そう言って、パーカーのファスナーを開けた彼女は内部に忍ばせていた、いくつか
「くっ!視界が……」
「今の内に早く顔を洗って下さい。私が
視界が真っ暗な彼は何が起こったのか分からず、季世恵に引っ張られるがまま海に連れられると、彼女は『すみません』の一言を口にしたのち、彼の背中をドンッと押して海の中へと突き落とした。
「ごほごほっ、ちょっ、突き落とすなら突き落とすって先に言ってくれよ!おかげで貴重な服がビショビショに………」
「服ならこの戦闘が終わった後にでも私が代わりのものを買って上げますから、今はそんな文句を言ってないで、この闘いにのみ集中して下さい」
「マジで!その約束、忘れないでくれよ」
「それに、今は呑気に話をしていられる場合じゃないようですしね」
そう言われ、季世恵と同じ方へと目を向ける悠人。
二人の視線の先には、頭を抱えながら怒りを向けるかのごとく、こちらを
「テメェら、私を怒らせたことを
……その頃、下水道内特有の
それからだいぶ歩いた彼女は、とうとう目的の場所へとたどり着いた。
目の前には川が流れ、
「現在地を登録して……と、これで迷うことも無い筈。早いところ、こんな場所は抜け出すに限るわ」
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