⒊ 視忍(5) 殺っちゃう?
「ここなら、ひとまず
道中――、未予の【
「確かに人が集まる室内なら、相手もうかつに手出しをしないとは思うが……、寄りにもよってこの場所に逃げ込むことになるなんてな」
「ここのスーパーがどうかしたのかしら?」
「……実はな、ここは明日から俺がバイトするお店なんだ。それだから、前日にあまり目立つような行動は
「成る程………、事情は分かったわ。けれど私たちは今、命を狙われている身―――。
悪いけど、そんなことを気にしていられる程、おちおち場所なんて考えていられないわ」
「そりゃあ、そうだけどよ………だぁぁ―――っ、くそッたれっ!どうか奴が来ませんように……………」
「奴が来たわ」
彼の願いは一瞬にして砕かれ、店内へと入って来る斬月の姿を目にした未予がそう言った。
慌てて調味料が並ぶ一角のコーナーへと身を潜めた未予と悠人。
「げっ!マジかよ。追い掛けて来るとか
そこは
「色々とツッコんでいる場合じゃないわ。敵が私たちを
「なんというかあんなマヌケっぷりを目にしたら、ちょっと
……まあでも、こちら側からしたら
「そうね。でも
彼女がそう言うのも無理はない。
あろうことかこのスーパー、小さい造りな上に出入り口が一つしか無いのである。
そもそもそのことに対して、いちいち文句を言っていられる状況では無い。
場違いな格好にお店にいた人達は目の前の野菜や魚等を差し置いて、物珍しそうに彼女の方へと視線を向けている。
斬月はその原因がいまいちピンと来ず、一人頭を
それにもう一つ問題なのが、両腕に備え付けられた十字型手裏剣。
これについては本物かどうか、素人の目にはさっぱりな訳で………
ただただ不思議な子がいるという、主婦たちの都合の良い解釈とあからさまに関わり合いにならないよう、目を背ける様子を見せていた店員たちの対応が大きな要因となり――
まぁ……分からないでも無い周囲の無関心っぷりのおかげで、この格好でも不審人物扱いとして
「えっと、彼は
すでに目立ちまくりの彼女だが、これだけの人が集まった空間において
むやみに食品棚を飛び越え、手っ取り早く悠人たちを探すのではなく、順当に店内を回って探し始めた。
「……
「
何やらヒソヒソと話す二人組の女性客。
そんな彼女たちの横を斬月が過ぎ去ろうとした時だった。
先に――
すると
だが周囲には何も変化が起こらず、そのまま
はっと危険を
(さっきそこにいた人が消えている………?)
……なんてのは
使い手以外の姿も一緒に見えないようにする為には、常にその相手の存在を視界に捉え続けていないとならず、適当に動かれてしまっては目で追うのも一層大変になることが目に見えている訳で………
手っ取り早く手を繋ぐことで必然的に距離が近くなる為、最小限の視線移動で
「あいつ、どうしたんだ?……何か様子が
「良く分からないけど、周囲に目を
「そうだな」
斬月の様子を見ていた悠人と未予は、これを
それからというもの、斬月は姿の見えない二人の彼女から逃れるように、周囲の目を気にせず、悠人たちを探しながら走り出した。
「ちょっと、お客様。店内では走らないで下さい」
あらかた店内を、グルッと一周した頃だろうか――。
一人の店員が呼び止めようとすると、斬月は身長百八十センチはある、男性店員の頭上を軽々と飛び越え、そのままスルーするかのように立ち去っていった。
「……ちょっ、
「……そう言えば、前にリストで忍者がどうとかって」
「……あれマジ情報だったわけ?」
「……とにかく追い掛けるしかないじゃん」
周囲の人間に話し声が聞こえないよう、小声で会話をする二人。
そして彼女たちも同様に店内から出て行くのであった。
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