⒊ 視忍(6) その実力は本物
「ふぅ~、あの店で何も問題を起こすこと無く、無事に立ち去れて良かったよ」
「ほらそんなこと言ってないで、いつ奴が店に出てくるか分からないのだから、話してないで早くここを離れるわよ」
店から出た悠人と未予は即座に
その何分か後だっただろうか、
その正体は斬月の目を狙う二人の女。
一人は視覚的に捉えることの出来ない《
もう一人は未だ能力を使用していない
両者は
だが長年の
「「~~‼」」
予想もしなかった重い一打を受け、二人は思わず声が出そうになるところをどうにか
直後、伸ばした片手が
それらは一直線に斬月の方へと伸びていき、まさに針千本のごとく向かっていった。
だが、斬月は突然の出来事に
謎の回転の秘密は二つの手裏剣に仕掛けられた目に見えるか見えないかぐらいの〈
だがここで一度、《ゲーム内容》を思い返して欲しい。
このゲームには一般人にこのような特殊な能力を見られてしまってはいけないのだというルールがあったことを。
ここはスーパーの言わば駐車場である。
こちらが現在の店内の様子である。
『ただ今よりタイムセールを始めさせて頂きます。こちら、本日のみとなっておりますが、どうか駆け込みのないよう、お一人様一点のみお買い上げ可能になります。数に限りがございますので、無くなり次第終了とさせて頂きます』
本日のみと言われ、それに揺るがない主婦が
一人の店員-少し前に斬月が飛び越えていった、身長180センチぐらいはあるように見える長身の男性がそのように店内放送をすると、そこでは当たり前のように主婦たちによる戦闘が
外では命懸けの戦闘、店内では主婦たちのプライドを懸けての戦闘が同時進行していた為に、彼女たちの闘いを見ている者は誰一人としていなかった。
その闘いの
「……う、うう、うぁあああぁぁァァ――――ッ!痛ェェェ………痛ェぇえぇぇぇええええェぇ――――ッ!」
今にも腕が外れそうな勢いで肩からピューっと血が噴き出す程にガタガタなその姿から想像が付くほど、痛さのあまり思わず声が漏れ出る。
反射的に
「あっ、ああっ……ああああぁぁぁ………」
「まずは一人、姿を現しましたね。どうやら貴方は私と同種のようですし、今日の生存分だけでもその目は回収させて頂きます。……って、私なんかの分際でそんなの許されませんよね」
「くッそ……たれがっ………マジでなん、なのよぉぉおおおおぉぉぉぉ――――ッ!」
斬月のツンとくる言葉に彼女は
考えも無しに今一度生成された数十本の針を斬月のいる地点へと
そう、これまでの闘いの中、何故、針状化させているものがある一点を除き、モノだけにあったのか、ここにその秘密があったのだった。
ハナっから何でも針状化させることが出来たのなら、能力の対象を単に神眼者の肉体そのものにすれば早い話である。
相手の肉体を内側から強引にしっちゃかめっちゃか引き伸ばして………それこそ、
腕の針状化現象のカラクリはその腕が本物ではなく、本物のように精巧に作られた腕だから。
《義腕》と一言では言い表せない程、作り手のこだわりが詰まった上質な人工腕。
使用者が違和感なく動かせるよう、人間が筋肉を動かそうとする《筋電位》と呼ばれる信号を感知し、装着者が動かしたい方向へと常に――腕や指の関節の細かい動き一つ一つをとって、それら全ての動きをコントロールする為の高度な人工知能を搭載。
これまでのアームやらケーブルやらに繋がれた義手とは異なり、本物の腕に近づかせて動きを与える骨組み部分をコンパクトに、それを覆い隠すように人工皮膚、そして中では実際に血液がドクッドクッと流れる神経の流れを作り出している。
その為、一部の神経系は実際に繋がれており、元々は正確な神経信号をキャッチする為の仕様として採用されたこの手法だが……、これがまさに彼女が痛がっていた原因――、繋がれた一部の感覚神経が手裏剣の刃先で傷付けられたことにあった。
どこまでもリアルにこだわったその腕を誰が作ったのかは不明だが、少なくともそんなものが今の時代に存在するだなんてニュースは聞いたこともない。
つまりは何者かが秘密裏に開発し、それを奴に与えたのである。
そして奴の能力には続きがあり、距離感が
もしもこの場に未予がいたならばここは、目力-【
さて、四方八方から迫り来る針を前に斬月はどうなったのか。
彼女は裏腰にぶら下げていた長方形型の木筒に手を付けると、中から小刀を引っ張り出しその場で高くジャンプをすると、勢いのままに回転切りで
「これで終わりです」
この時、浮遊状態にいた斬月は腕に取り付けられた十字型手裏剣を空いていた左手で掴むと、そのまま相手の右目を狙いに投げ始めた。
「ぎぃやぁあああああああぁぁぁぁ――――――ッ!」
見事な
すぐに着地した斬月は走り出し、飛ばされた眼球を見事にキャッチする。
「では、こちらの目は頂いていきますので」
斬月はそう言って、即座にこの場を去っていくのであった。
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