⒉ 開眼(3) ゲームスタート
「おい、どうなったんだよ」
走行する未予に腕を引っ張られながら、彼は【
「付いてくれば分かることよ」
そう言うと、未予が【
予知通り、そこには金髪と茶髪の二人の少女が存在していた。
だが、始めに視た二人の闘っている姿は見られず、何か話している様子だった。
「あのどっちかが未予の言う、
何も知らない悠人は未予に聞く。
「どっちもよ」
「どっちも?いやいや、複数なんて聞いてないぞ。本当にこの二人から目を取ろうって言うのか?」
「生き延びるにはやるしかないわ。そういうことだから手伝ってくれるわね」
「何だって俺がこんなことに…………」
出来ることなら、この状況から一刻も早く逃げ出したいのが彼の本心だった。
それに今は、まだ自分たちが
だがその思いもすぐに打ち砕かれることになる。
二人の少女は腕に付けられた
「あんたら、
そう言ってきたのは、金髪少女の方だった。
「あら、何を馬鹿なことを言っているのかしら?答えは言うまでも無いわ」
未予は反抗する。
「ははっ、そりゃあそうだ。ここで、『はい、良いですよ』、なんて言う馬鹿がいた方が可笑しな話だ。
……けどあんた、言い方にはちと気を付けるべきじゃねぇのか?」
「機嫌を
その上で貴女には、更に
「テ……テメェ、喧嘩売ってんのか?良いか、俺には『
「これはこれは、どうもご親切に。ですがそもそも他人の名前を覚えようとしたところで、そんなの
「おい、未予。
「そうかい。どうやらあんたには口でどうこう言うより、実力行使が一番手っ取り早いようだな」
そう言って、瀬良は未予の眼球を奪いに飛び掛かった。
奴の手が彼女の右目を
この時――、瀬良の瞳が
「すっげぇ、俺との手合いの時は本気出してなかったんじゃないのか」
だが近くで見ていた筈の悠人はその異変に気付かず、それ以上に未予の突拍子もない対抗に目を奪われ、驚きの声を上げるばかりだ。
「がはっ………」
未予の
腰を強打し、
それでもどうにか上半身だけ立ち上がると、彼女は意味深な言葉を口にする。
「な……
彼にはその言葉の意味が分からなかった。
そう、未予がその意味を話すまでは。
「どーよ、自分に投げ出された気分は。それにしたって、いきなり投げ出されそうになった時はびっくりしたぜ」
「未予……なのか?」
彼女の突然の
「私は確かに金髪を投げていた筈………」
「わっかんねぇーよなぁ、このカラクリが。良いぜ、少し
「……つまり、投げ出される寸前に神眼を開眼………そして私の姿を見て精神を入れ替えたと…………」
「ああ、そういうこった」
未予の身体を手に入れた瀬良の精神は、
これを聞いた瀬良-〈未予の精神〉はその話が本当であることを
「でもそれなら、今度はこっちがその力を利用しない手は無い筈………」
「バーカ。そんなことも考えず能力をバラした間抜けだと思ったのか。
残念だが、その目は私以外の精神が入り込んだ時、入れ替わった相手がその力を使うことは出来ねぇーんだよ」
「……
「
転移した先の身体から神眼が奪われたとして本当ならば、相手方の身体に入っていた私の精神が死んじまうのが道理ってやつだが――、
まるで
どうせなら、今ここで試してみようか?」
なんて冗談のように言いながら、本当に未予の身体から両目を抉りに掛かるように、勢いよく両手を突っ込もうとしたその瞬間――、
「やっぱお前は未予じゃなかったんだな。良いからこんなことは
「なっ!どうして
そう言って、彼女-瀬良の
「あの野郎、どっか行きやがったな。クソっ、その手を離せこの野郎!」
「こんな争いに巻き込まれるのは正直に言って真っ平御免なんだが、
そう言うと悠人は、未予の前頭部に勢いよく
「イッてぇな、このクソが!どうやら先に、てめぇから始末されたいようだな」
頭突きの反動で
彼は驚異の動体視力でその動きを捉えると、身体を
「チッ、避けてんじゃねぇよ」
「いやいや、命を奪われるって時に棒立ちしている方が
「御託はいいからよぉ、さっさとこの俺に大人しく奪われてりゃあ良いんだよッ!
仮にも俺本来の身体から両目を取り除けば元の肉体に戻れなくなるからと、直前で魂を入れ替わざる得なくなり、
そうなったらそうなったで、俺の魂は自身が死んだ直前で最後に宿っていた身体に停滞するような仕様になっている。
ッても、口の利き方がなっちゃあいねぇ、生意気女の筋肉の一つも
ま……、さっきから一向に手を出してこないてめぇを見てっと、人の眼を奪う度胸があるようには思えねぇけど」
「―――ッ!」
まさしく最後の一言は、ブスリッと彼の核心を突いていた。
命懸けで〈未予もどき〉――、瀬良は執着するように目を狙い続けるのに対し、悠人は眼前に迫り来る手を何度も避けては
(たとえこの
などと言うのは、単なる建前なのかもしれない。
だが、それ以前に人の目を奪う
それが人として、同族として本来思うべきことだと――。
しかし、この場にいる二人の少女は違った。
互いの命を賭けて闘い、そして目を奪ったところであのいかれたゲームのルールに従った者が、本当に生きて明日を迎えることが出来るかどうか分からないというのに…………。
いや、未予はそれを知っているのかもしれない。
「何をそこまでして………」
〈未予もどき〉の迫り来る
その時だった。
「ぃぁあああああああああああぁぁぁぁ――――ッ!」
突然、悲鳴を上げた未予………〈瀬良もどき〉に反応した両者に
左眼が抜かれ
「きゃはははは、楽しぃ~♡」
そこにはいなくなった筈の茶髪の少女が――、血まみれの眼球を手にしながら
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