岩壁竜サンザクパラゲ


竜騎士は海竜シィバニックの肉を切り分ける様を

見て何を感じ取ったかも分からぬが、

先だっての駄賃にでもと与えられた海竜の

心臓竜麟一枚を手に、気持ちの整理がつかない。


が、しかし

 船は港より出航した、バニパラータが指揮する

船団である。


船旅を決めたのはアルマゲスト姫、

その人であって、バニパラータはそこまでの

手引きをし、ジェイディアの裏手から川下りに、

ここまで連れてきたのだというが、姫は―――

「私の話を訊いてくれますか?リアス」「はい」

「竜の教団には、文通も交わす友が居ます、

 その総本山、主体ともいえる場所が、

 東の騎士団や王家の支配地より遠くにあって、

 今、原因を突きとめなければ、争いの火種と、

 なりかねません」


「危険です!!!」


姫が話すたびにそれに従う、

リアス、ヴィチャーム、レティクス、ブアッテ、

四人がかりで「危険です!」とやるので、

話も進まない、

「ほら、船主が安全な旅を保証してるんだから、

 外野が野次飛ばしてちゃ、金も出さずに、

 もの言いは無しだよ」


「―――もとはと言えばバニパラータどのが

 引き受けたことにも問題がある」

「なんだい?船に乗っていうことにしては・・・

 説得力がないやね」

と流されるまま、竜騎士は人の争いに関わらず、

手を出さずという第一の決め事も・・・・・・

守る守らぬを決められる状態にあってはじめて

為すことが出来た、今は船旅にあって・・・・・・

とふと、「船主が船に乗って旅を?」

「荷が荷がで重いし、騎士と話を港で?

 御免だよ、つかない話なんてのは」


「地図?どこへ向かっている?」海の先も知れず

となるは不安、

「はは、船の旅なんだし、試合の相手はこっちで

 日程組んでやるさ」

「あなたは!人を奴隷のように!」

「少年に言われたくはないかな、なんにせ、

 タダ乗りってのはナシだよ、長旅、

 ラクに過ごしたいだろ?」

ブアッテは諦めがついたのか、姫野の警護に

かかりっきりで「姫さま、姫さま」と、

レティクスの従者とはどうしたものか??と

飛竜ルルクトが飛ぶ?「ヴィチャーム!!」

「おー!!おおよそ検討がついたぞ!!

 火山島と名高いパラゲイオ島だ!!!」


「――――――バニパラータ」

「どこの島も、どこの町も、港を開きたい、

 事情があるんだ、ただ、竜の祟りだの、

 港に適した入り江が竜の根城にされちまったり、

 して、それが適わない、―――私としては、

 商売相手に恩を売るのも悪くないさ」

バニパラータは手を合わせると、

「まあ、ひとつ頼むよ、

 無理しない程度にね、ヒヒッ!!」

「火山島ですか!止まっていければ火炎龍の

 話が訊けるやも」と姫まで言うからに、いや、

「人の時代によみがえった竜の数、幾千か知れず、

 竜の想いをその姿を見てとらずにどうする!」


シィバニックの無残な最期は戦を己のものと、

引き受けず、流れのままとした竜騎士そのもの、

ではなかったか?死んだのは海竜の心ばかり、

ではない、竜騎士が竜と一番に対してこそ訊ける、

声がある、人づてではいけないのだ!!

「飛竜!! いやバパーム!!火山島へ!」

リアスを見て

「おお、やる気になったかやれやれ」

船団を離れた二つの翼はバパームとルルクト、

これをみやる一同、

「竜騎士は飛んで行けるから、―――そう、

 レティクス、ブアッテ、バニパラータも、

 すこしいいかしら?」「は、はい?」


飛竜が飛ぶのを遠景にして、

船でなされる話とは?

「竜騎士の話や噂は東の国にもあるそうなのですが、

 どうも教団に仕える竜騎士が現れたという話が、

 あって」「なんと!!」「竜騎士は中立だと・・・」

「騎士が主を持つのは自然なことですが・・・

 竜騎士がとは」

「ええ、とてもまれな話が続きますが」

「竜の教団は元はといえば竜にまつわる、

 自然を信仰するものでしたが、宗派をとりまと

 めようという動きが近年あって、少しずつ

 竜を信仰の中心にすえたものに変わって、

 行きました、ただ徐々に竜の祭司を竜の

 代行者、預言者として中心とするうち、

 悪竜までもと拡大したようで」

「竜の歴史を踏まえずに拡大するをままにし、

 続ければ、竜を産み出し殺すも自由に、

 おそろしいことですが」姫の面持ちも真剣にと、

「そのような集団へと成り代わってしまえば、

 どの国も許しておかないでしょう」

「元は穏やかな信仰を中心としていたのですけれど・・・・・・」


これを訊いたバニパラータは、

「まあ、私としては」悪竜が廃材と、ガラ石から、

出てくれれば、金になるから構わないんだが、

竜をそこいらに放り出す輩に仕事場を荒らされる、

のは厄介極まるからね」


皆の話を先に、


遂にぞ、


「火山島だ!」「たしかに!」

進んでいったは、竜騎士と竜使い、


ヴィチャームと竜騎士が眼にしたのは、

火山島の火山だけでなく、その大きな洞穴であった。

「岩壁にこれだけ大きな・・・・・・!?」

違和感は岩壁うごめいてようやくの~

「これは!竜だというのか!」「らしいな!」

と、ヴィチャーム退くと、竜騎士は、

バパームの翼ごしに相手を伺う、

「これは、大きいが―――刃がとおるのか!?」

崩れる岩とつぶてで落石があやうく、

「ええい!!」と勢いをつけて―――


星の鱗一枚で素早く流星一閃に敵を突くが!?

「!?はやさだけでは」岩壁は砕けない、

竜の全身は岩でできて、岩肌にしがみつくその姿、

名を岩壁竜サンザクパラゲという寡黙な竜だが、

「ならば」高さと跳ね上がり機会を!


高い位置からの一撃も通らず、二撃、三撃と、

星のきらめきを消耗して、一等星落ち!

「力で行くしかないのか!?」

森の鱗に手をかけると転身し、


岩壁をドンと大ナタで撃ちつければ、樹木が、

うっそうと茂って歩むも跳ねるも楽となるが、

「重い一撃も通らない!?」岩は


カタく頑丈で!?「ほら!ひきつけるかな!」

「ヴィチャーム!」飛ぶルルクトの翼が翻ると、

岩壁竜は首を伸ばしてそれを追い、にともない、

体は浮きはじめ、「落ちるのか??」

「おとすのさ!!」ヴィチャームのかけ声を!

受けて、竜騎士の一撃とともにザブンと!!


「やったか・・・水竜の鱗に!!」水の中で岩壁竜、

なおも存命と海底にリアス・カーヴィナを

引きずり込む、「よくも、こんな―――ぐっ!!」

岩壁竜静かにおもしとなって海底へ!!


「かくなる上は!!海竜シィバニックよ!!

 そのチカラを――――――!!」

 胴にしたうろこの力か、大きな渦潮を前に、

「リアス・カーヴィナ!!」


「なんだ!?あの渦は!!」


船上からも目視できるその渦は?


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