水竜ミヌァンテオ
『星空竜グラステイガよ』
『森林竜モディグアーロか、よくもやってくれたものだ』
『最後に会いまみえたは我が幸い、友よ』
「御二方は」
『竜騎士リアス・カーヴィナと言ったな、人間よ、
グラステイガの心臓竜麟、しかと受け取るがいい』
「よいのですか?」
『くれてやる、
どのみちお前くらいしか使えるものはおるまいて』
星空竜グラステイガは自らの心臓竜麟一枚をはぎ取って、
リアス・カーヴィナに与えると静かに息を引き取った。
「――――――」
竜騎士は一日のうちに名のある竜を二体も屠ったこと、
そしてそのチカラを引き受けたことに義務を感じたか、
ただ押し黙って立つままにした。
「竜騎士殿!」「リアス・カーヴィナさま!」
返事は無い、
「これはいかん! 立ったまま気を失っておられるぞ!」
「急ぎ運んで、休ませるのだ、かの人こそ英雄ぞ!」
グウィヌア家の従者や、馬車の馭者などが急いで彼女を、
運び込み、鎧を脱がせ、安否を確認し、侍女に
身支度を任せると、日を改めて、再度会うことを誓った。
「今日は、これにて」
休日は数週間に渡るものになるだろう、
リアス・カーヴィナは連戦のちに疲れ果てていた、
「あれ! なんでしょう?」
侍女が声をあげるのも訊きとおしてしまいそうな具合だが、
そのことを遠くで訊きつけたものがいたのか、
「リアス!」「ヴィチャームか!」 頭上を、
巨大な飛竜が羽ばたいて、竜騎士は笑みを浮かべた。
「ルルクトも! 懐かしいな何をしにここへ?」
「竜使いは自由さ! もっとも竜騒ぎを訊きつけて、
ってところかな?」
竜の頭蓋を頭飾りにした竜使いを名乗るヴィチャームは、
「ところで随分な戦いぶりだったんだろう?
鎧も相当傷んでるらしいし、僕に預けてくれないか?
竜使いの里のものが鍛え直してくれるだろう」
「ああ! たのんだ! あれは普通の鍛冶屋の手では
なかなか、みれぬものだろうからな」
「バパームにも無理をさせ過ぎだ、
僕が鎧と一緒に連れて行くからね」
「そ、それは困るが、しかし」
「じゃあこれで僕は行くけど、また会う時まで、
きっちり休んでおくんだよ!」
「ありがとう、ヴィチャーム・ヴィンターラ!」
2人の再会もつかの間、リアス・カーヴィナの休息の予定を、
グウィヌア家のものが話を進めて、魚漁を楽しむことと、
なったので、しばし川で過ごすこととなった。
「グウィヌア家は豊かな自然で囲まれているのだな!」
リアスは川上の散策を自由に楽しんで、登って行った。
それ知らずと川下でキャンプの準備をしたグウィヌア家は、
「竜騎士どのは?」
「レティクスか、ちょうどいい!!
川上の方に向われたようだ! こちらは飯の支度も出来た、
そうだ、みにいってはくれんか?」
少年騎士レティクスはヤリを持って川上を上流を、
「滝まで行かれたのだろうか?」
思案のうちに、川から何やらしぶきが上がる。
「――――――よもや」レティクスは身構え、
と、大魚とおどりでた!!!「リアスどの!?」
「む――――――」
想像以上に大きかったのか、その魚、
「ヤリを!」レティクスは差し出した。「助かる!!」
大魚はピタピタと暴れるままに、強く、ヤリを突きたてると!
今度こそ!!「やった!!」
「手伝ってくれ、えーと」
「レティクスです、お見事!!」
豊漁に一尾で家の口がどれだけ腹ふくれるものか?
これをもって帰ると、グウィヌア家のものも大驚き!
「これを調理するといっても、牛刀や大カタナがいるな」
「いや丸焼きにしてしまうのもわるくはないが」
「私がしましょう」奥から、服を乾かしおえたリアス・カーヴィナ、
「これで? ですか?」レティクス、竜騎士の槍を手にしようと、
がんばるも重く、それを見かねてさっと手にして振るえば、
たちまちにさばきやすい大きさに三枚おろし!
「軽いもので!」「これならあとで調理も簡単です!」
「いや何から何まで客人にすみませんな、まさか、
主菜の調達までしてしまうのですから、かないません」
「皆さんも気遣いありがとう」
酒や果物と、パイなどデザート辺りに差し掛かるとそろそろ、
「竜退治に関する武勇、実際に眼にいたしましたが、お話、
より深くうかがいたいと、グウィヌア一同思っております」
「歴戦のグウィヌア家の方々の合戦模様もまた訊きたく」
無いキズやある傷、合戦の話をしたら尽きることも無い、
グウィヌア家の者達と語り合うことに相成って、
争いに備えていること、演習の事、仔細、細かく話すもので、
「ここでは領地争いで小競り合いなどする位のもので、
国を挙げての大戦、ましてや竜退治など皆目経験に無く」
「竜騎士どのも人の戦に参加なすったことは?」
「竜騎士は竜と同じ目線に立って戦うもの、
人の戦に手助けしては、
倒された龍も怒ることでしょうから」
「なるほど」
「竜の言い伝えは多く訊きますが、この地方でも、
どこであっても悪竜揃いで人のためになったためしは、
ありませんな、あの星ととも現れた龍もまた―――――――」
星空竜グラステイガ、
「おろ?竜騎士どの?」
「少し風をと」
数も多くない竜の話も人の数だけのうわさとなればその数を、
増して、やがて飛竜なども悪竜だとされてもおかしくは無い、
人にとってはあの星空竜グラステイガも悪竜なのだと、
竜騎士は、川を前にして考えを振り切れずにいた。
「!?」
滝壺のほうからだろうか?
水音強くはねるようにあって、
「すこし駆けてみるか」
足で早くゆくさき行程どれほどかは知れずとも、
竜騎士の勘というものを確かに向かう。
一方のグウィヌア家では話のタネが尽きかけていたところを、
「このあたり――――――たしか水龍の伝説もあったかと」
「レティクス!それだ!!きっと竜騎士どののこと!
探しに行ったのだよ!」
「水龍とあれば――――――武器を!レティクス!」
「はい!」
岩の数かけ上がっては進み、目の当たりにした、「これは?」
さざなみたつ滝壺の広さ、岩穴の奥に見た尾っぽの長さは!
「―――――――水竜ミヌァンテオ」
レティクスはお家にあった伝記などを調べるうち、
近くの聖堂仕えが目撃し仔細書き留めた文書ありと、
家の年代史から見知って、一度、その本を見に行ったことがある。
「これは・・・・・・!!」 水龍のヒレがたてる波しぶき!
体のさばきに、ヤリを片手に来たものの、どうするか、思案?
「飛び込んでみるより!!」
岩を飛んで移動し、こちらに寄ってくるところを、
ヤリで激し合家の動きを挑発して、うまく、さそいやると、
岩を砕くかの動き!「川の主か!!竜騎士が話を!」
水の中から現れた顔がぬっとこちらへなだれて突き進むや、
『――――――小坊主め、言わぬ約束と、このままきゃつが
暮らす村ごと我が波の勢いで潰してやろうっ!』
竜は誓いを破ったものを罰するべく、滝壺の水ととも、
下流へなだれようという!
「この地に立ち入れるものも少ないが、神の啓示と、
己を試したとあってか、むっ!!」
水の流れにのまれるままにあって苦しく、、うまく体を!
こなすこともかなわない、
「鎧があっては沈むのみのところ、悪運とはおもうが」
人の身であては体がうまくかわせず、弾かれてしまえば
それまでのところ、
(つよい流れだ、息をつがせぬ)
がヤリをぐっと水龍の体に突き立てると、
水龍の体が水面ぴしゃっと、飛び跳ねるようで、
うまく水の外へ! 岩場に着地した竜騎士は、
「水竜に突きたてるヤリも」
折れてしまえばどうしようもない、短刀を引き抜いて、
岩場におびきよせようとひたはしっていくも、
「追いつかれるか!」
一足先に水に飛び込んで、水龍のその長い身体の体当たりを、
避けると、泳ぎ切れるかもわからぬまま、一段川を、
流れ下る。「思うもかなわぬとは! しかし!」
リアス・カーヴィナ、力を振り絞り、水龍の苔むした体に、
取り付き、短刀の刃を突きたてる、何度も!
「ここなら!」うろこをさけて刃が入ったか、川の水が、
もやとにごり再び水龍跳ねると、
丸い石に転げ飛ばされもする、リアス・カーヴィナ
「技が通らぬ・・・・・・」 鎧も無ければ、
「竜騎士どの!」「レティクスか!?」
竜騎士槍、一振りを運ぶのも一苦労だが、持ち手をうまくこなしてここまで、「水竜ミヌァンテオですね!!」
『おのれ!!水龍の名を軽々しく!!もはや人っ子一人残さず根絶やしにしてくれる!!』 「レティクス!!」
騎士と騎士、うまく岩場を飛んで、
竜騎士槍を受け取ったリアス・カーヴィナ、
体さばきもすばやく、水龍がとびくるう胴を、
おもいっきり裂いて流れを下る。「レティクス!無事か!?」
「お気をつけて!! まだ!! 息が!」
『その太刀その刃!! 我が流れを、血で染めに来たか!
悪竜殺しめ!!』
「今一度、引き戻り、そん身いやされよ!!
人智におかされまいと身を抗せば、
人々は災いとして口々に!悪竜と!」
水龍は身を翻して『我を悪竜として!切るか!竜騎士!!』
「この一番をもって怒りをしずめたまえ! 竜騎士リアス・
カーヴィナ、竜に勝っても負けてもあなたを悪と断じは、
しない! 川の主よ!!!」
『ならば!!受けてみよ!!』ミヌァンテオの大きな動き、
からの波しぶきで、「あっ」
レティクスは竜騎士が飛び込むを、水中にあってひらめくを、
竜騎士の槍で素早くかわすが、不思議と身をこなせ、
二撃三撃とうろこを弾き飛ばして薙ぐ!
「が生身で受ければ命は無いか!!」
水龍が繰り出すヒレの一撃を刃で薙いでかわす、
ミヌァンテオをさそいこむため、体を水中で早くこなして、
「この刃、水を切るのか?」
水の流れを切って進めば、
ミヌァンテオに近づくも遠のくも自由!
『自然に手向かう!岡の竜め!!』身をかわし、水深く、
けずれた岩壁にミヌァンテオをおびき寄せると、
ミヌァンテオをこれをひどくうちのめすが、竜騎士の刃が
ズズッと、血を水煙と吹き出す、その痛み『オオオ!』
「渦か!?」『このままとられるものか!!』
ミヌァンテオのさけびは、レティクスの元にも届く渦潮、
『このまま、飲まれろ!! 竜騎士よ!!』
(む、強い、強い・・・・・・)『させるか!!』
(すごくおも苦しいものだな)
渦に入ると、刀で素早く切ってとおるが、
『またその手か!!』ヒレと棘の猛追も、刃を回して、
切りむすべば逆巻いて!
『!逆手をとられたか――――――』旋回し、
竜騎士槍、水車と転がして薙げば、渦潮沿いにうろこは爆ぜ!
『うむ・・・・・・』「!?」流れが弱くなったのを竜騎士も見てとった、刃は薄く、水龍ミヌァンテオををかすめて切った、
『とればいいものを』「どちらも好条件でない中でのこと」
『この川流れはくれてやる、我が心臓一枚竜麟も
取りてゆけばいいだろう』「ありがとう・・・・・・?」
『ミヌァンテオ、元はこの川の主ではない、流れも三度、
四度変わって、
今やこの身には合わぬ、欲しければ好きにしろ』
「・・・・・・あなたを追いやるようで」
『その地にしがみつくのはそちらの役目じゃろうて、
さらば! 二度も合うまい、忘れよ、じゃが、
名を語るものが消えた後、おのれらの顔に縁があれば再び』
水龍は去った。
静けさとともにチャプンと――――――
「心臓を護る鱗まで、なぜ?」
「あらそいを避けたかった? いや――――――」
『――――――竜の血がいくつも流れればいずれどの川も、
悪竜まみれ、海の底ででも眠るわ』
『いずれでよい、滝を逆らっても魂が落ちても、
心をさらせる水底が今は――――――』
「ミヌァンテオの名を語ったり、水龍の話をすること
嫌ってのことと言っていた、このことは―――」
「グウィヌアの家では語ることも無いでしょう・・・・・・と、
すると、これは二人の秘密ですね」
両者、水の流れを見てとると、
「名も無き滝と誰の名もない川底、か」
「で、どう致しましょう、今回の件のことは」
「そうだな、代わりのものを取るのも悪くは無い!」
大魚ありと知れた川なれば大ナマズの一尾もいるだろうとの、
こともあって、すばやく身を構えて、川に飛び込み、
目を凝らせば、
「竜騎士槍は水も裂くと知れた」
岩場の影を探すのも楽に出来る。
「不思議だが、水竜の鱗の加護か? 息も長く続くな」
「ん?」大ナマズが静かにたたずむを、
一撃で仕留めた!
「お見事!」「気を失ってるだけで生け捕りに出来たよ」
「ならば急いでタルにでもフタして、縄で縛りましょうか?」
リアス・カーヴィナとレティクス・アーレナーは、
水龍の身代わりと持ってかえった大ナマズを、
グウィヌア家一同に示して、
「なんと大ナマズでしたか」
「城へ持ちかえる土産が出来ましたな」
すぐさまとは言わぬものの、大ダルを担いで荷馬車はゆく、
水龍の話は水底に隠してしまおう――――――と、
「ヴィチャーム!」
「竜使いだ!!飛竜ももう一頭連れてか?」
「リアス!問題が起きた、飛竜に乗って来てくれないか?」
「何事だ」
「鎧を下ろす、ともかく急ぎの事なんだ」
「わかった、すぐに向かおう」
周りの慌てふためくのをよそに、
竜騎士は具足一式を着こむとバパームに乗り、
竜使いヴィチャームの操る、
飛竜ルルクトに引き連れられ、
大空高く飛び去った。
「リアス・カーヴィナどの」
グウィヌア家の者と同じくに、
見守る騎士レティクス・アーレナーは、
自らに翼が無いことが無念に思えた。
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