星空竜グラステイガ

「竜騎士殿、それに長もご無事でしたか」「おおピテット」

「長? ともするとこの方が?」

長い金髪の男は竜騎士をみやり、

「ええ私の名はナーセフ、あらためてよろしくお願いします」

「モディグアーロ様にしては残念なことで」

「かの竜神様も虫にやられてしまってはな」

2人は竜騎士の眼を気にせず話し合い、

「ただ、あの虫はここいらで見るものではなかった」

「竜騎士どのもあの虫を直視したとおもわれますが」

「ええ、巨大なクワガタのような虫でした、ご存じでは?」

「そのような虫は、この地方では滅多に湧きません、

 何者かが持ち込んだに違いないでしょうね」

「悪竜の事といい何ものなのでしょうか?」

「狙いはなんにせよ、立ち話はなんです、

 竜騎士殿もそのままではお辛いでしょうから、

 一度、身支度をなすってはいかがかと」

モディグアーロの胃液が未だこびりついた鎧を着ていた、

これは確かに厄介だと、すぐさま、森の民の使いのもの、

とともに、水浴びをすることとなった。


「申し訳ない、このような世話まで掛けさせて」

「いえ、お気になさらず」

竜騎士は悪竜を屠るものといっても、相手は竜神として祀られていたモディグアーロ、森の民にしてみれば、リアス・カーヴィナは仇とも取れるのではないかと、内心、感じ入るが、

「我々も始めて森林竜様の姿を目にしたのですから、

 それに森の長もいっておりました、満足な形で、

 モディグアーロ様は逝かれたのだと」

「そう、ですか」

服装を整えて、森の広場に集っている民と合流すると、

辺りは静かな夕時を迎えつつあった。

「もうこんな時間です、何かお食べになりますか?」

釜戸に掛けられた鍋から、茸のスープを頂くと、

今日一日で戦った疲れがとんと治ってしまうようで、

「ふふふ、よく効いておるようですね滋養強壮によいのです」

「そうなのですか? このような味は初めてで」


「竜騎士様の戦いぶりは我々が語り継ぐものとして充分です、

 飛竜バパームどのには獣の肉などもありますゆえに」

「クェクェクェ」「ふふふ、人懐こいですね」


一同、楽にして今までの緊張がほどける、

何せ、慣れない森の中で小鬼に森の民と、

それに森林竜モディグアーロと来たものであるから、

「火の手が上がらなかったのが幸いでした、

 もし竜騎士どのがおられなかったら、

 どのようなことになっていたことか」

「いえ、礼などは」


空の下、風の音、森の木々がざわめく、

ふと広場から空を眺めると、一等輝く星が横切った!


ゴゴゴゴオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!


「隕石!?」「星が落ちてきた!?」「なんだあれは!」

「バパーム!! 出れるか!?」

竜騎士は鎧を身に纏うと急いで、

「竜騎士殿、今日のところはお休みになっては!?」

「いや、この異変、何かがおかしい!」

「星の流れた方を追うぞ、バパーム!!」

飛竜は飛び勇み、竜騎士とともに彗星の流れるほうを追って、

空高く舞い上がった!!

 「行ってしまわれた」


森の民のいる森林を掻っ切って、天体の様子を眺めながら進むと、星が落ちたのは「グウィヌア家の領地か!?」

竜騎士察するに、近く、グウィヌア家をあげた大演習があると、訊いたことがあり。

 人馬、兵、騎士などが平野に集っていることを考えると、

「急げ、バパーム!

 人の居るところに星が落ちたかもしれぬぞ!」


遠く、グウィヌア家の陣地では既に大騒ぎ!

「閣下、演習場に星が落ちました!」

「うむ、目にした、して被害のほどは?」

「人馬ともに損傷は訊きませぬが、星がいかなものか

 野次馬に走るものが幾人か多く向かっていて」

「それは面倒なことだな、星が落ちた事くらいで!」


「伝令!!」


「なにごとだ! 星が落ちたこと位既に訊いておるわ!」

「演習場に竜が現れました!」

「なに! 竜だと!?」


『カァアアアアアアアアアアアアアアアアア』


「竜の鳴き声です! 星の光に包まれ、星の光を放っております、 我々では手が付けられません! 急ぎ、陣を!」

既に明日に演習を控えて天幕を張り、

皆が、準備に準備を重ねたところに竜が現れた故に、

即座に対応も出来ぬままであった。

「こちらの手勢は2000ある、あれば手もつけれようものだが、今はもう夕時、もうじき日も沈むという時に、クソッ!」


「伝令! 飛竜がこちらに!!」


「今度は何事か!! なに?!」

「そちらはグウィヌア家のものか!恐れ入る!」

「そちは騎士? その出で立ちは!竜騎士か!」

飛竜から竜騎士が飛び降りて、一礼すると。

「私の名は竜騎士リアス・カーヴィナ

 既に、戦況を空から伺うに、竜が現れたとのこと、

 どうか私めに一番槍をお任せください!」

「そなたが行ってくれるというのか!

 怖いもの知らずめ! 勝手にするがいい!」

「閣下!」


「ありがとうございます閣下!

 私めが必ず、この戦い、成し遂げます!では!」

竜騎士はすかさず、飛竜バパームに飛び乗ると、すぐさま、

身を転じて、星の光が荒らす、合戦場へと飛び行った。

「勇ましいことだ、ものの衆、この戦いを見届けるぞ!

 天幕より出でて、我々も、敵襲に備えよ!」

「御意に! 伝令! 伝令! 急ぎ陣を立てよ!」


本陣より離れた場所で逃げ遅れた野次馬達が、我先にと、

駆けだす戦場に飛び入れば、


『カアアアアアッカアアアアアアアッ我が名はグラステイガ』

『星空竜グラステイガなるぞ!! 我相手はおらんのか!!』

「御相手願おう!」『何者か!!』

「我が名は竜騎士リアス・カーヴィナ! だがその前に、

 何故、このような場所で名のある竜である貴方が、

 暴れることとなっているのかお聞かせ願いたい!!!!

 星空竜グラステイガどの!」

『おろかな! 人間ごときが我の相手だと!!?

 数百年ぶりに星の怒りを受けて立ち上がってみれば

 腰抜けどもが戦の真似事なぞを我が大地でしおって!

 もう許してはおかぬ、一人残らず血祭りにあげてくれる!』

「お怒りの事はわかるが!どうか夜分にて静まりたまえ!!」

『黙れ!!!』

星空竜グラステイガは全身に星のマークをして輝き、

首のエラをシャッと開くと、エラを星型にし、熱線を放った!

「くっ!」

たちまち草原に火の跡が残り、星形にくぼむ!

『竜騎士! 威勢のいいのはこれまでだ! くらえ!!』

何度となく火を放つ星空竜グラステイガに気圧され、

なかなか隙をつけない竜騎士であったが、

徐々に間合いを詰めての一撃は!!

『危ういな! だが浅い!! 喰らえ!!』

グラステイガの尾の追撃を槍の刃で弾き、すんでのところで、

反撃に転じ、これを幾度も繰り返し、攻防は進む!

「なかなかに素早い! これが竜の本気といおうものか!!」


2人の戦いは大地を震撼させ、平坦であった合戦場は崩れ始め

大地に、穿った、穴の中から、斬撃と、業火を放つ熱線がこぼれる様を、本陣よりグウィヌアの家のものは皆、伺い、

「よくもやるものだ!」

「あそこまで戦い抜くとは!」

「くそっ援軍をよこすことはできぬのか!?」

と一同感心し、竜騎士の健闘を称えた!



『おのれ竜騎士リアス・カーヴィナ!!』

竜騎士の槍でなした一突きが、竜のひとつ星を貫いて傷を負わせることが出来たが、「このままでは!?」

すでに避ける足場が崩れて戦い抜くことが難しい状況で、

進み来る星空竜グラステイガ!

『もらった! くらえええい!!!』

尾の一撃が竜騎士をとらえると、岩壁に竜騎士を叩きつけた!

「くっ!!」

『カッカッカッカッカッ!! 恐れ入ったか!! むっ?!』

竜騎士はモディグアーロの心臓竜麟一枚を胴にあてがうと、

「森林竜モディグアーロよ、かの心臓竜麟一体となってそのチカラを我に貸し与えたまえ!」

竜騎士が叫ぶと、そのチカラは竜騎士の鎧、そして竜騎士の槍に宿り、姿を変える!!

『おのれ!人間め!どこでその鱗を!ウッ!!!』

森林竜モディグアーロの力を身に受けたリアス・カーヴィナは、そのフォームを、森の力を引き継いだ鎧を身にまとい、

静かに大地を一突きにした。すると!!


『木が、樹木が!! 森が!! おのれ魔術をつかうか!?』

星空竜グラステイガが発する炎を回避するために、樹木を生えさせるそのチカラ、確かにモディグアーロのものにして、そしてその一撃は! 「大木をも絶つ!!」

 グラステイガの眼前に立ち、得物を構え直すと、

森林竜モディグアーロの力を見とった星空竜グラステイガは、

一撃に備えながらも、飛びかかる!!

『くらえ!! 竜騎士リアス・カーヴィナ!!!』

「くらえ!! 星空竜グラステイガ!!!!」


2人の一閃はすれ違いざまのもので、

竜騎士リアスカーヴィナの太刀がグラステイガの喉をかっ裂いた!!


『ガフッ おのれモディグアーロめ、

 鱗となっても我の前に立ち塞がるとは』


星空竜グラステイガは地に伏し崩れ落ちた。

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