森林竜モディグアーロ
森の民ピテットに悪竜モシェイドがいかにして、
屠られたかを説明するが、その血肉、
余すことなく人が売買したと訊いて、
「人の業ですね、仕方ないことではありますが、
出来れば、どこか元あった場所に墓を作りたいもの、
なにせ我々にとって竜は神聖なものですから」
「そうですか」
本来、竜は神仏のように崇められ、それを祀る文化、
さえあるというが、竜を倒すことを生業とする、
リアス・カーヴィナにとっても、出来ることなら、
竜と意思の伝達がはかれれば争わずにも済むわけで、
正義の竜がいたならば、意思の疎通のひとつもとりたい、
そんな考えに至ったが、
「我々が崇める竜は森林の奥深くに眠っている、
モディグアーロという名の竜です、
とても大人しい竜だと伝説では語り継がれています」
「そのような地で悪竜を作り出すものがいるとは、
一体、どうなっているのでしょう?」
「ここのところ、侵入者が絶えませんから、
警戒には当たっているのですが、
彼らの狙いはわかりません」
森の民とともに歩いて、
飛竜ともについて行ってどれくらいたっただろうか?
カンッカンッカンッっと森の中に音が鳴り響いて。
「合図ですか?」「いや様子がおかしい」
ドスンドスンと、バキバキと木々が折れる音まで続いて、
「これは!?」「係りのものに訊いてみましょう、おい!」
おーい!と大きな声で遠く仲間のものへ伝えると!
「竜だあああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
と帰ってきた。
「竜!?」「竜ですと!?」
その言葉を耳にして竜騎士リアス・カーヴィナは飛竜に、
「バパーム!音の方へめがけて飛ぶぞ!!!」
薄暗い森から、飛竜が飛びのいて、
「竜騎士さま!危ういです、相手はモディグアーロ様やも」
「わかっている! 確かめに行くのだ!!」
飛竜に乗った竜騎士は、
木々が押し倒されて、
鳥が飛び退くその場所を見定めると、
飛竜で飛び勇んでその地の上を迂回する。
「あれが竜か!?」
そこに浮かんだ姿は木々を体から生やした、
巨大な深緑の龍がつぎつぎと周りの気をなぎ倒して、
猛進する姿であった。
「たすけてくれー!」
人々が住まう地域めがけての進撃を見た竜騎士はすかさず、
かの新緑の龍の前に飛び降りた!
「我名は竜騎士リアス・カーヴィナ!
そちらは森林竜モディグアーロと見受ける!
なぜこのようなことをするのか!?」
竜は、名乗りを訊いたか否か、
長い尾で竜騎士を薙ぎ払おう、と木々もろともなぎ倒す!
「くっ! 闘う気か!?」
「竜騎士殿!」
長髪の森の民が、樹上から、
竜騎士リアス・カーヴィナに声を掛ける、
「かのモディグアーロ、どうやら虫にやられているようで、
どうか、その虫を退治してください!」
「なに!? 虫!?」
モディグアーロの姿をみやると、からだの表面をはしる、
大ムカデのような虫の姿、
動くたびに鱗の隙間から垣間見える大きなダニのような虫、
これを見知ったリアス・カーヴィナは、
「喰らえ!!」一閃、刃を閃かせ、モディグアーロの、
表皮の上を走りながら、虫退治を始めるが、
その猛進、留まることを知らず。
吹き出す血などからみるに、
「体内まで食い破られているのか!?」
「竜騎士どの! 何を!?」
「森林竜モディグアーロ、失礼するぞ!」
大口を開けて暴れる森の竜モディグアーロの口に、
跳躍して飛び入ったリアス・カーヴィナは!
「ああ、なんてことだ!!」
モディグアーロの体内へ入り込む、
体内は竜の特殊な肉質か、光輝き、明るく、
体内の炉に近い、胃の中で敵を探す竜騎士、
そして目にした!
「神聖なる竜の肉を貪るクワガタ虫め!」
肉を貪っていた巨大なクワガタは、竜騎士に向き直って、
飛びかかり、「くらえ!!」竜騎士の槍で一刀両断され、
その邪気とともに黒い煙を吹きだして四散した。
「これで大丈夫なはず、うぉっ!?」
森林竜モディグアーロ、体内で起きた様々な事象に、
堪えきれず、胃液とともに竜騎士リアス・カーヴィナを、
吐き戻す。
「竜騎士どの!ご無事で!」
「何とか無事だ、だが、モディグアーロは無事か!?」
『おのれおのれおのれ! 私にこのような醜態を!』
「モディグアーロどの!?」
『みたものきいたもの一人残らず許してはおかぬ
捻りつぶしてくれる!!!』
「乱心なされたか!! くっ!!」
森林竜モディグアーロは一撃一撃がより激しくなり、
虫の毒でやられているとは思えぬようなその動きに、
辺りの森は震撼し、あらゆる人を押しつぶさんとする勢いに
竜騎士は、「仕方あるまい! いざ勝負!!」
竜騎士槍を持つ手を構え、モディグアーロに戦いを挑む!
「森林竜モディグアーロ!わたしはここにいるぞ!
我が名は竜騎士リアス・カーヴィナ!
いざ、我と尋常に勝負を!」
『おのれ竜騎士め! わが一撃にて崩れ去るがいいわ!』
森林竜モディグアーロが走り寄ってくるのを、
迎え撃つ構えで、槍を持ち直し、すんでのところで!
「竜殺剣!!」槍の長い刃を翻して、
森林竜モディグアーロの首に斬撃を通した!!
『がふっお見事!』
「モディグアーロ、どの?」
『このような形で屠られることとなったが、
我に悔いはない、我が心臓竜麟、好きにするがよい』
森林竜モディグアーロは崩れ落ちて、
その遺骸は森の民総出で、森の奥に祀られた。
神木を抱くようにして眠るその遺骸に、
竜騎士リアス・カーヴィナは与えられた心臓竜麟一枚を、
手に、物思いに耽る、
(死期を悟られての最後の猛進であったのか)
竜騎士、背姿で、
ただその亡骸をその戦いぶりを称えるばかりであった。
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