竜の大市場
「悪竜が現れてからというもの息をつく暇もない、
どこも逃げ出してきた村人の話でもちきりですよ」
「やはり、悪竜が多く出ているのだな、問題だ、
ただ私には飛竜バパームがいる、どこへでも、
ひとっ飛びに行って竜を狩ることが出来るぞなあバパーム」
クエエっとひと鳴きする飛竜は竜騎士の勇ましさを、
一層引き立てるもので、市民は安心して彼らを見守った。
「ところで、悪竜モシェイドの
残すところは骨と皮と鱗と牙、ツメと棘といったところ、
竜の宝石袋にあった宝石はもちろんですが」
「ふむ、お手数掛ける、私には全部は持ちきれないよ」
「それで、竜を大市場に売りに出すことを考えまして
荷馬車に馭者、大キャラバンでこれを商人のところまで
売りに出すことを街で決定したのです」
「なんと、それは良かった、
竜の遺骸余すところなく使ってくれ」
「もしよろしければ竜騎士殿もご一緒に?」
リアス・カーヴィナは大きな市場は初めてだったので、
すこし興奮気味に「行ってもいいのですか?!」
「ええ、ご都合さえよろしければ、馬車も手配します」
さっそく荷馬車に乗せて、道中無事に大市場にたどり着いた。
「ここが大市場!!」
見渡す限り商人たちが露天売りをし、大きな天幕を揃え、
居並ぶ商品の数は幾万を数えるか、店屋も何千とある。
「場所は取って在ります、竜の遺骸をセリに出しますよ!」
ものめずらしい、竜の全身骨格とそのきらびやかな鱗は、
たちまち、高い値段がつき、部分を残すところなく、
買い取り手がついていく、代金代わりの行商品は山のように、
竜の干し肉で作ったスープなどの振る舞いも行えば、
誰もが、あっという間に竜を装身具にしてしまう職人に廻し、
目まぐるしい風景に目が回る
「竜騎士殿はすこしお休みになっては?」
「ああ、ちょっと休もうかな」
鎧は荷馬車に預けているものの、得物だけは手から離せぬと、
竜騎士槍を片手にして、大市場を見てまわる。
「おっそこな騎士様は竜騎士様かな?」
「いかにも、そちらは」
鍛冶屋の様である。「見ればかなりの業物、が痛んでますな」
「刃を整えてくれるか?」「お任せあれ」
職工はたちまちに見てとるとその特殊な形状をした弓なりの、
刃を持つ、竜騎士槍を整えると焼きを入れ始めた。
「時間はちとかかりますが、その間、物見を」
「うむ、まかせた」
悪竜がお金になるのは分かっているが、
竜騎士の身の上、あまり蓄財もしておけぬから、
このように竜は人々のものとなっていく。
首飾りや、彫刻を施したもの、短刀の柄などに細工された、
竜の遺骸は高値で取引されたらしく、
前あったキャラバンが帰りには倍になるというのは、
よくある話らしい。
「バケモノだ!!!」
「なんだ!?」
「見世物小屋から何か逃げたか!?」
「いいや違う!! こいつらは!?」
突如として商人を投げ飛ばしたと思えば、
現れたった何体もの巨体、フードがめくれたところは、
「リザードマン!とかげおとこだ!!!」
「にげろっ! こいつら市場を荒らす気だ!!」
竜騎士リアス・カーヴィナの前を商人たちが手にものも、
抱えられず、走り去っていくのを目の当たりにし、
「
このような場所で相手が何の狙いで暴れるのかは分からずと、
人だかりの中を分け入って、リアス・カーヴィナは、
「はっしまった!?」 得物を忘れて出てしまった。
「ギシャア!!」 トカゲ男のしっぽの一撃!!
「うわっ」 ダメージを受けるリアス・カーヴィナ、
「大丈夫ですか!」「気をつけろ、これを受け取れ!!」
見守る見物客から飛んできた長槍をすかさず受け取ると、
トカゲ男リザードマンからの追撃をすんでで躱して向き直る。
「相手は複数、五体か、こい!!」すばやく長槍振り回し、
各方向に散った敵を牽制して、向かってきた一体に一撃、
見事貫くと、二撃目を与えんと次に向き直るが、
「さすがに素早いな!」尾を振り回しながら猛進する、トカゲ男たちを前に、手元定まらず、翻弄されるリアス・カーヴィナ
「隙アリ!!」手早い一撃が、もう一体を貫いて歓声が沸く、
「あ、あぶねえ、騎士様!!!」「なっ!?」
両手で持った長槍で受けるも、
リザードマンの尾の一撃で二つに叩きおられてしまう!! 「くそっ!!」 すかさず短くなった長槍の先端を向けて、
投げ返せば、三体目のリザードマンに突き刺さり仕留めるも、
残る、トカゲ男は二体、「このままでは!!」
「竜騎士様! 得物が仕上がりましたぜ!! ほらっ!」
襲いかかる二体のトカゲ男の前に
投げ入れられたのは竜騎士槍、矛のような形をしたそれを引き抜くリアス・カーヴィナは勢いよく引き切って一体を、
すれ違いざまに、槍をひるがえして!「ギィヤアアアフ!!」
見事、五体のリザードマンを打ち取って観衆、大歓声!!!
「やったぞ!!」「すげえ!!!」「さすが騎士様!!」
「返り血を浴びてしまってどろどろだ」
「おお、ご無理を為されて、ささ、お召替えを」「うむ」
竜騎士はテントに通されて、着替える。そのシルエットは、
「なんとこれは女物ではないか」服は上衣とスカート、
「女性なのですから、あまり無理な決闘をお控えになったら」
「余計な世話をかけさせたな、だが、男物に変えてくれ
スースーしてかなわないからな」
「はい、そのように致します」
悪竜騒ぎにトカゲ男か、
トカゲ男にどのような狙いがあったにせ、
油断はできないな、バパーム。
飛竜は静かにうなずいた。
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