第6話 愛を確かめる行為

あなたは私のどこを愛してる?

全部以外で具体的に教えて。


彼女からのチャットを一瞥して、

10秒考えた。


全部以外に彼女を愛している事ってなんだろう。


①一緒に過ごした時間へのノスタルジー

②児童相談所に連れて行かれた4歳になる娘のママである事

③俺の事を何でも知っている気楽さ

④性格は苦手だけど、もう慣れた。

⑤真面目なところ


愛してないじゃん 一つも 笑

彼女からの返信


全部愛してるといつも言ってたし、

俺を愛してくれるところと最後に言ったら、

それは愛ではないと言われた。


愛してくれるから、愛していると言うのは

愛してるのではなく、愛されたいのだと。


俺の関心は彼女ではなく、常に自分に向いていて、

愛してなどいなかったのだ。

自分にすら向いていたかも怪しい。


自分を愛して無い人は、他人なんてなおさら愛せないと

彼女は言った。


本当は体調が悪く、愛が一つでも残っていたら、

頼りたかったと。


取り繕う事すらもはや出来ないくらい、何度も出口を探し回ったこの迷路の堂々廻りを、続ける気力がもう無かった。


だから、今でも全部愛している。





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