悪魔はずっと住んでいる
私の中に悪魔が眠っているとしたらどんな悪魔だろうか。私の夢を奪う悪魔?私を傷付ける悪魔?やがては私を殺してしまう悪魔?
私の願いを叶える悪魔はどこにいるのだろう。少なくとも今の私の心を支配する悪魔はこれらの悪魔とは違って、私の心を揺さぶるような類いのものだ。そう思って用心しておかないと、私の心を見失ってしまいそうだ。
私は昔から病弱で、病に伏すことも多かった。皆勤賞を目指そうと、入学前に意気込んでいたものの、結局この様だ。私の悩みは重いように聞こえてしまうと思うから、あまり口には出さないようにしている。
皆が部活へ行ったり帰ったりした後の教室で私は朱音に誘われた。
「月葉は明日、空いてませんか?」
「んー?暇だよー。どうしてー?」
私は動かしていたシャーペンを止めずに返事をした。休んでいた頃のノートを写させてもらっていたのだ。
「いいえ、あのー、明日は休みですよね。私とデートしましょう!」
確かに明日は休みだ。今日が金曜日だから明日は土曜日。いつも当たり前のように訪れる週二日の休みの一日目。いや、正確には日曜から週は始まるんだっけ。
デート、デートね。
「ええと……なにするの?」
私は表情を保つので精一杯だ。普段から笑っているのが救いとなった。
「この前の撮影旅行のときのようになってはいけないので、ちょっとだけ映画でも観て、そのあとは……月葉はなにかしたいことはありますか?」
やりたいことなんか欲望だけ振るってみればいくらでも思い浮かぶ。好きと伝える行動を頭の中に浮かべると、ちょっと恥ずかしくなる。
「体力のことも考えちゃうと、ないかなぁー」
少し返しにくい言葉だったかなと、少し後悔する。私のシャーペンはまだ動き続けてはいたが、授業内容を記していたはずなのに、いつの間にかやりたいことをただ綴っていた。
あわててノートを閉じながら、これが見られていないか心配になったから朱音をそっと覗くと、背面黒板に目を向けていた。
「そうですよね。なら私の家で遊びますか?高校生になってからは一度もなかったですよね。」
お家デート。お家デートだねこれは。いや、デートというのがもしかしたら私の幻かもしれない。あれだけ想像を働かせれば、暴走も仕方がないことだ。
「いっそのことお泊まりというのはどうですか?お泊まりデートです。」
デート!今絶対デートって言った!妄想ではない、本当の本当!
「言質とったよ」
「言質?私なにかまずいこと言いましたか?」
「い、いやこっちの話。」
外の天気は確認するまでもなく大きな音を立てながら、雨は地面に打ちつけている。このあと写真を撮るのもありかと思ったが、花を撮ったりするのは今日は厳しそうだ。
もちろんオーケーと返事をして、私の頭の中は明日のことでいっぱいになる。
朱音が自分でこんな誘い方をするとは思えない。こんな誘い方を勧めたのは奈由菜か柚子里のどっちかだろう。もしかしたら今も教室の外から覗き込んでいるかもしれない。今度問い詰めてみよう。
ああ、結局ノートは写せていない。まあ、また来週にでも頼もうかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます