第六話-6
「よくやったわユキヤ!ご褒美に焼き焦がしてあげる!」
「マ、マリカさん!?」
今まで見たこと無いようなハイテンションで、頬が紅潮したマリカさんが、僕の首に両腕を絡めて抱きついてきてる!
なんで!?
「今日は、自分でもビックリするくらい最高のライブだった!本当に!こんなに心を焼き焦がすような感覚初めてよ!」
なるほど、どうやらライブの興奮でだいぶハイになられている様子だ。
これだけ喜んでくれると、こちらも嬉しい。
自分の応援に意味があったのだと、噛みしめる。
マリカさんがパッと抱きつきを解除したかと思いきや、頭部をぐっと掴んで、無理やり僕を振り向かせ、向き合う形になった。
「ユキヤ!」
「は、はい!」
だから、いつの間に呼び捨て!?
「ご、ご褒美に、あなたを私の婿として迎えてあげてもいいわ!感激に心を焼き焦がしなさい!」
………ん?なんて言いました?
「婿……ですか?」
キョトンとした僕の返しに、自分の言ったことの重大さに気付いたのか、興奮状態で見開かれていた目が、一瞬キュッと小さくなり……顔全体が鶏のトサカくらい赤くなるのと同時に、再びグワっと見開かれた。
「そ、そうよ!ここここここ光栄でしょ?わたわたわたわたくしの婿ということは、国王の座すら狙えるのですわよ!?嬉しいでしょう!嬉しいって言いなさい!」
今更引き返すことも出来ずに突っ走り始めてしまった感じが凄いよマリカさん!
っていうかそもそも婿って!
もしかして、マリカさんも!?マリカさんも僕のこと男だと思ってるの!?
いやまあ確かに、マリカさんに直接言った事は無かったけども!
「ま、待ってください僕はその…」
ちゃんと説明しようとしたその時―――
「お、お待ちください!」
再び横やりが入る……って…え?
ちーちゃん!?
「マ、マリカ様!無礼ながら申し上げますが!ユキヤくんは、その、私の大事な友達っていうかその、大事な人ですから!そういうのは困ります!」
こちらも真っ赤な顔で叫びながら、僕の右腕に抱きつくように腕を絡ませて、マリカさんから引き離すようにするちーちゃん。
………え?なにこれなにこれ?どういう状況!?
「な、何を言ってますのあなたは!?どこの誰ですの!?ユキヤは救世主ですのよ!一般人がそんな馴れ馴れしく!離れなさい!」
ち―ちゃんと逆側の左腕は、マリカさんに絡めとられ、両側から引っ張られたり押されたりしている……。
待って待って、どうかしてる、この状況どうかしてる。
なんで!?なんで僕に突然モテキが来たみたいになってるの!?
いやまあ、こんな可愛い子二人に好かれて嬉しい気持ちもあるけど、男だと思われてるならそれはマズいよ!
早く誤解を解かないと!
「ま、まってください!僕は、実は――」
「ひ、酷いわ雪猫さん!」
今度は何ですか!?
「私が一番好きだって言ってくれたのに!私を愛してくれるって言ったのに、あの言葉は嘘だったのね!」
……いつの間にか近くに居たそーりゅんが、なんか凄いわざとらしい泣き演技で誤解を招く発言……いや、そーりゅんは知ってますよね!?僕が女だって知ってますよね!?
「ちょっとユキヤ、どういう事ですの!?返答次第では焼き焦がしますわよ」
「ユキヤくん…?」
「いや、そういうことじゃなくて、あのですね……」
「あんなに素敵なデートもしたのに、酷いわ酷いわー!」
二人に詰め寄られる僕に、もはやニヤニヤした顔で声だけ作ってそんなことを言うそーりゅん。
楽しんでますね!?
二人が勘違いしてることを完全に理解したうえで、この状況を存分に楽しむつもりですね!
酷いやそーりゅん!
でもそんな意地悪なところも好きぃ!推しの弱み!!
とか言ってる場合じゃなくて!
「私の心を弄んだのだとしたら……それは真っ黒に焼き焦げる以外の選択肢は無いと思うのだけど……いかがかしら?」
「だから、話をですね…」
「ユ、ユキヤくん?私たち友達になったんだよね?まずは友達から始めよう、っていうことだよね?」
「そういう解釈なの!?」
ホント何この状況!?
どうすればいいの?僕どうすればいいの?
いやどうもこうもない!ちゃんと説明すればそれでいい話!
「あのですね!僕は、おん…」
「やったのだわご主人様――!!」
「今度はあんたか!!わざと!?わざとなのピロッパ!?」
僕が真実を口にできない世界線なのですかここは!?
「突然怒られたのだわ!良い知らせを持ってきたのに!」
……良い知らせ?
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