第53話
三國志、魏の曹操の遺言
「あれは白磁じゃない。青磁だ。」
今上野の国立博物館で開かれている三國志展を見に行った知り合いが教えてくれた。
何が白磁じゃないのかというと魏の曹操の墓から発掘された品で、これまでの白磁の制作年代を三百年以上遡る貴重な発見と新聞などで騒がれた埋葬品である。白磁というのは僕らが今日常生活で使っている皿やコップなど白い土を焼いたもので、そこに透明の釉薬と呼ばれるものがかかっている。それに対し青磁というのは茶色い土に淡い色の釉薬をかけて焼いたもので、この淡い色がのちの時代に緑がかってきて、最終的にエメラルドグリーンになる。この系統は全て青磁と呼ばれる。三國志展のホームページに写真が載っていたので見てみたのだが、確かに青磁だった。
青磁だから貴重なものではないのかというとそんなことは全くないのだが、「これまでの常識を覆す考古学上の発見」ではない。あの時代の曹操のような王侯貴族にとっては日常の品だったのだろう。
ここで気になってくるのが曹操の遺言である。自身が墓の盗掘をやっていた曹操は「私の墓には財宝は入れるな」と言い聞かせておいたらしい。あの品が白磁だったのならそれは当時の最高級品で曹操の遺言は守られなかったことになる。だが青磁だったのなら身の回りの品レベルのものが一緒に埋葬されただけである。それとも財宝は埋葬されたのだが盗掘にあい、ありふれた青磁だけが残されたのか。
個人的には遺言は守られたということを信じたいのだが。
源氏物語の続編
最近ある東欧の女性作家が書いた近未来小説を読んだ。内容自体はいたってシンプルで、社会的に大成功を収めた女性が結婚も悪くはないと思い始め、人工知能を駆使して作り上げた理想の男性と結婚するのだがやがてやがて満足いかなくなる。そこで生身の男と結ばれるのだが彼の幼稚さにうんざりしてくる。彼女は彼を消去した。そんな話である。
もしこの話に後日談を付けるのならこういうことになるのだろう。
「最終的に彼女は神と(彼女がアジア人なら仏と)結婚した。」
そんなことを考えているうちに分かってきたのがこの小説も源氏物語の一つのバリエーションなんだということ。知的に洗練された女性は洋の東西を問わず最後に源氏物語にたどり着くということか。もののあわれ。もしこの自己顕示欲の強そうな女性主人公に源氏物語風の名前を与えるのなら、東欧はビザンツ、トルコの領土でもあったので派手めな『チューリップ』か『カーネーション』にでもするのがいいだろうか。
この作品が源氏物語の一つのバリエーションと言えるのであれば、世にあるすべての女性の書いた小説は源氏物語の続編と言ってもいいのだろう。そしてそれを書いた彼女たちにもまた花の名前が与えられる。
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