第45話

               『男と女』

 僕と同世代の女優、中谷美紀さんが先日フランス映画祭の大使に就任したとかでコメントを発表していた。

「若くて多感な時期にフランス映画を見て多くを学び励まされました。」

 そんな趣旨だったと思う。

 ただその「若くて多感な」全く同時期に僕もフランス映画を見ていたはずなのだ。それならフランス映画から多くを学び「頭を撃ち抜きたくなった」の間違いじゃないのか?

 それとも彼女は男が頭を撃ち抜きたくなるのを見てそこから養分を得ているのだろうか?フランス映画の永遠のテーマ『男と女』。




                クワガタ受難

「この間うちの部屋に黒いのがいてゴキブリかと思ったらクワガタムシだったの。それで箱の中に入れてキュウリあげといたら次の日死んじゃってた。」


 彼の霊に平安あれ。




             綺麗な薔薇には棘がある

 うちのベランダには色々な花があって、雑草まで各種取り揃えているのだが、何故か薔薇ばっかり葉っぱが食われて穴だらけになっている。

 そこから考えると「綺麗な薔薇に棘がある」んじゃなくて、「薔薇はうまいので棘がある」が正解らしい。




                急がば回れ

 最近、同性愛問題へのコメントで有名になってしまった東大の先生ロバート・キャンベルさんの『Jブンガク』という本を読んでいる。日本の古典を英語で味わう、という本である。そこで奇妙な現象が発生した。

 明治より前の日本文学、つまり古文を読むには英語の方が理解しやすいということ。古文の分からないところを英語を通して現代日本語に翻訳した方がスムーズに読める。古文⇒英語⇒現代日本語という不思議な迂回路が成立してしまった。僕でそうなのだからこれから先の世代の人たちはもっとその傾向が強まるだろう。


 そこからさらに進めて考えると、例えば今から500年1000年先の人たちは、日本の古文の持っている微妙で繊細な表現を数値化して理解することになるだろう。

 『萌黄色』   18194

 最初の1は名詞を表し次の81は色、特に1で色の細かい感覚を選択。さらに最後の94でそこから現れる情感を表現。

 『いとをかし』 3035781

 最初の3はveryを意味する副詞。次の0は次の言葉への連結を指示。57で状態を表す形容詞。終わりの81で細かい情感を表す。

 こんな感じ。

 ただ一般の人には縁のない話で完全に人工知能向けの言語になるかもしれない。


 先日電柱に「迷いネコを探しています」というビラが貼ってあった。「色はサバ虎で……」。サバ虎はいったいどんな数値になるのだろうか?

 

 

 

 

 

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