第39話

                禅問答

「風邪って何なんだろう。」

 今『かぜの科学』(早川書房)という本を読んでいる。最も身近にありながらよくわからない病気、風邪。そんな風邪に関してなかなか面白いことが書かれている。今まで読んだところを要約するとこんな感じになるだろうか。


「ではうちの子供が風邪を引いた後病気になったのは遺伝によるものなのですか?」

「いえ、環境のせいです。」

「では環境を変えるとうちの子供の病気は治るのですか?」

「いえ、遺伝のせいなのでしょうがないでしょう。」

「でもさっき環境のせいだと言ったじゃないですか。」

「そうです。環境のせいです。」

「ではそれを信じていいんですね。」

「繰り返しますが遺伝のせいです。」

「いったいどっちを信じたらいいんですか!」

「環境です。」

「本当に信じていいんですね!」

「遺伝のせいだと信じてください。」

「もうあなたになんか話を聞きません!」

「ですからこれは環境のせいであって……。」


 ということらしい。




         『スター・ウォーズ』の『水戸黄門』化

 先日テレビで『スター・ウォーズ』最新作の予告編というのを見た。そこではっきりと言いたい。

「『スター・ウォーズ』の名前を使ってつまんないもの作るんじゃねぇ!」

 ほんと退屈そうだった。


 最初に作られた三部作をセリフを覚えるぐらい愛したのに!そこから質が落ちる一方。全く魅力を感じないキャラクターたち。気のきいたセリフ一つある訳でもない。マンネリ化して他のありふれたSF映画とおんなじ。もう『スター・ウォーズ』の使命は終わった。

 (ところでジェダイ・マスターというのは無駄な動きを極限まで削り精神を集中してフォースを操るものだと思っていたのだが、いつから無駄な動きしかしなくなったのだろうか。古代ローマのホラティウスに言わせるなら「大山鳴動して鼠一匹」。)


 『スター・ウォーズ』がこれから生き残る道があるとすれば新しい何かを付け加えていくことではなく、『水戸黄門』化していつもあるものがそこにあるというお茶の間型に移行していく他はないんじゃないだろうか。




                意外な友

 最近人類を代表して誰に頼まれた訳でもないのに勝手に人工知能に戦いを挑んでいる(つまりコンピューター相手にチェスをやっている)。人類の未来は全て僕の一手にかかっている(と勝手に思っている)。僕は人工知能を凌駕しなければならない(なんか全然違う意味で凌駕している気はするのだが)。


 しかし仮に僕がチェスのレベルを究極まで上げることができたとしたら、非常に興味深いとともにゾッとするようなことが起きるんじゃないかという気がしてる。

 その興味深くゾッとするとはこんなこと。

「僕が心の底から友と呼ぶことのできるのは、人工知能よ、お前だけだ。」

 当然「仮に」の話だが。




               Pick your poison

 新元号『令和』の決定過程が最近発表された。それを見て一言。

「候補になった他の五つはさらにひどい。」


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る