第37話

                死亡広告

 去る3月30日、我が家のパソコンが亡くなっていたのが発見されました。享年5歳。まだ若すぎる死でした。死因について詳しいことはわかっていませんが、生前から度重なるストレスにさらされていたようで、最近では奇行も目立っていたということです。葬儀は近親者によって既に執り行われ、近所のごみ箱に埋葬されるということです。なお遺体のそばには辞世の句と思われるものが残されており、それを記しておきます。

 

 もう少しまともな奴に買われれば あと五年ぐらい生きただろうに


 ご冥福をお祈りいたします。




                 花見

 ということで金もないのに新しいパソコンを買わされる羽目になって身動きできず。花見はベランダの白い花。最初クローバーのような草が生えてきたなと思って眺めてたら、数日後に可愛い花が咲いた。スギナだった。まっ、花はなんでも可愛い。

 しかしその可愛さのために抜くに抜けなくなってしまったのだが、この後うちのベランダはどうなるのだろうか。


付記:ちょうど最近読んでいた正岡子規の解説書に子規のこんな言葉が載っていた。

「文士は貧乏なれ。」

 おおよそ正しいと思うのだが、実際はこうであるかもしれない。

「貧乏人は文士になれ。」




                最低の不届き者

 新聞などではやたらと誉めたてているがやっぱり実感のわかない新しい元号『令和』。早くその次の元号が始まらないかな、とか考えていたのだが、『令和』が終わるためには何かが起こらなければならない。何かとは何か。


 しかしその「何か」が起こる前に僕の方が先にあの世に行ってるだろう。

(最近ごみの分別のためタバコの吸い殻だけを別の袋に入れることを始めた。その吸い殻たちが僕が『令和』の間にいなくなることを語りかけてくる。)




                  あの日

 不謹慎な話かもしれないが、世の中大勢の人が死ぬよりたった一人の人間が死んだことの方がその衝撃が大きく後を引くってことはたぶんみんなあるんじゃないだろうか。

 僕にとって今日がそんな日。今から25年前の今頃アメリカで一人の男が頭を撃ち抜いた。それだけ。別にそれで世界の終わりってわけじゃない。ただ僕の人生の中では決定的な一日だった。

「曙と誤認された美しい黄昏……」

 今日はこの後酒を飲む。

 

 書かなくてもご存知かと思うのだが毎日酒を飲んでいる。明日は仕事。





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