第36話

                人体実験

 朝職場に行くと同僚がくしゃみをし鼻をかんでいた。風でもひいているのか。お気の毒、と思ったが考えてみると気の毒なのは彼だけではない。実は僕はこれから夜まで彼と付きっ切りで過ごすのだ。


 昼近く、彼が風邪をひいているのはもう明らかだった。そう言えばぼくもお腹が若干キリッっと痛むような気がする。あまりにも気にしすぎたので神経性の胃痛でも起こったのか。それとも……。

 なんとなくタバコがまずい。


 「換気でもしようか」と言いたいところなのだがこの寒い日に窓を開けるのもはばかられる。それに彼の人格を否定して病原菌扱いしているみたいだ。

 腹痛が本物になる。夜まで我慢できればいいが。


 夕方、顔が火照ってくる。間違いない。やられた。うつされた。

 仕事の終了間際腹痛と共に激しい悪寒。


 家に帰ってトイレに直行する。滝のような排泄物。この日一日を全て流した。




               ゴミを買う

 この四月から僕の住んでる自治体ではゴミが有料化される。最近は「これは四月から有料になるのか」とか考えながら分別している。それで分かったことがある。

「僕らは有料ゴミばっか買わされている。」

 過剰な包装やそもそもこんなもの必要あるのかというようなお弁当の仕切りなどなど。すでに有料化の始まっている地域に住んでる方は理解していただけると思う。

 近所のおばさんと話をしたら彼女は延々と自論を語ってくれた。財布を直撃する問題にはやはり女性の方が敏感らしい。実際彼女の話だと家にゴミを持ち込まないためにいらないものはスーパーのゴミ箱に捨ててくる女性もいるという。


 僕だってゴミの有料化に反対だという訳ではないし、できることはしようと思う。それは先の女性たちだって同じだろう。ただそれなら消費者に多くを要求するだけじゃなく、販売者の側にも簡素化の努力をさせるべきだと思うのだが。




             With or without you

 僕がNHKの番組に度々ケチをつけているのをお読みになった方もいると思う。ただ他の局はもっとひどい。見る気も起らない。だから皆さんNHKの受信料を払って欲しい。僕のために。




              吾輩はO脚である

 僕はO脚、いわゆるガニマタである。若い時は見栄えが気になったりしたものだが年を取るにつれてあまり気にしなくなってきた。だがそれよりもガニマタが原因だと思われる諸症状、腰や関節の痛みが深刻になったので整骨院に通いだした。それからもう四年になるらしい。

 生活の中で改善しているという意識はそれほどなかったのだが、思っても見ないところに結果は現れていた。靴底の減る場所が昔とは全く違っているのである。だとすると昔はいったいどんな歩き方をしていたのだろうか。


 今から十年前、もし皆さんが東京近郊で老人のような歩き方をする青年を目撃していたとしたらそれが僕だったかもしれない。




                 流体力学

 鉢状の入れ物の底に埃が溜まっていた。息を入れて吹き払う。

 当然起こることが起こった。

 




                


 

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