第24話

                 秋の蚊

「もう長袖を着てるからお前なんぞは怖くない。」


 高温や大雨で苦労した今年の夏が終わろうとしている。それでも行ってしまうとなると寂しさが残る。

「蚊よ、また来年も来いよ。」




              ゴダールの『男と女』

女「地震なんか来なければいいのに。」

男「地震っていうのは、つまり、科学的に見て地球が正常に機能している証拠であって……。」        

               ドキューン!




                三方一両損

 十月から東京都の最低時給が上がるらしい。それによって会社側が利益を吐き出すのは分かるが、かと言ってもらう側も物価の上昇やら税金やらで得をするって訳ではない。徴税する東京都もオリンピック関連の費用でその金を使い果たすのだろう。だとするといったい誰の得になっているのか?




             横山大観の『無我』を見て

 横山大観の出世作で切手の図案にもなった有名な『無我』を画集で見直していたのだが、気になる点があった。まず『無我』の象徴でもある主題の子供の表情が、『無我』というより『吐き気』を表しているように見える。早くも人生に疲れているらしい。そして子供の周りに描かれた得体のしれない植物。どうやら桜か梅であるらしいのだがあんな植物は存在しない。山水画系統の絵は存在しない植物を書くじゃないか、と言われるかもしれないが、在りそうで無く、無さそうで在る植物を描くのが山水であって、適当に描いている訳じゃない。皮肉に言えば大観の『無我』はマイナスのシュールレアリスムだった。

 若き日の横山大観は技術だけがあって、技術しかなかった。


 しかしそこからどれだけの高みへと横山大観が翔け上がったかは皆さんも知ってのとおり。




                 三匹の楓

 夏に地方に行った知人が林の中で楓の若芽を見つけて三つ持って帰って来たのを一つ分けてもらった。

 林の中の植物の若芽というのは直射日光や今年のような暑さに弱いらしく、日当たりのよすぎる知人の家の楓は一つが枯れ、一つは枯れそうなのを我慢して成長しているという感じだった。それに比べ日当たりの悪いうちの楓は元気に直立している。

 もっともうちは他の植物がよく枯れるのだが。












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