第5話

The kids are still alright.

「ご飯食べる前に手を洗って来なさい。」

「それなら足で食べる!」

「足でなんか食べれるわけないでしょ。」

「それなら髪で食べる!」




                 男女関係

男「ドレミファソーラファ・ミ・レ・ド?」

女「ソーファミ・ソファミレ!(平手打ち。)」




                  生贄

 フロイトが『トーテムとタブー』で記すところによれば日本の天皇制の起源は生贄としてささげられる男を死の直前まで手厚くもてなしたことにある、ということだそうだ。現在ではこの学説は支持されていないようだが、フロイトにそう書かせるだけの何かが昔の日本にあったのではないか、と今の皇室を見て思う。




       『その封印を解くなかれ そは汝に禍をもたらす故に』

 掃除をしていたら出て来た。一年前のビールが。果たして得をしたのか損をしたのか。

 生ものだから味が変わるはずだ。でも缶詰だから意外ともつかもしれない。捨てるべきか飲むべきか。

 たぶんまずいに違いない。でも飲んでみなけりゃわからない。ワインのように琥珀に転じているかもしれないし、納豆みたいな驚きがあるかもしれない。


 結果として言えるのはネバネバだけはなかった。




                  人生

ジョン・レノン「全ての人にチャンスを!」

競馬場帰りの人たち「チャンスはあったんだけどな。」




               長く愛される秘訣

二か月前期限の切れた炭酸水 三本の矢はなおも破れず




                 芸術の極み

 アレイスター・クローリーの『ムーン・チャイルド』。ケンブリッジ出の天才が持てる知識を総動員して著した愚痴と想像にあふれる戯れ言小説。だが本人はいたって本気なのだ。全生命を賭した無意味。




             永遠の愛(ロマン主義風に)

蠅よ蠅

何で俺に付きまとうのか

お前が蚊ならまだわかる

俺の何がお前を惹きつけるのか


服は時々洗濯してるし

体もたまには洗っている(それは神がご存知だ)

タバコの煙を焚き染めているし

アルコール消毒も欠かさない

気に入るものなどないはずだ


それでもお前が俺を愛するなら

地獄で二人は結ばれよう

だから先に行って待っててくれ

毛深い恋人よ!




                 現代音楽

 現代音楽は通り過ぎていく。なんの痕跡も残さずに。空気。だが空気を吸うのに金を払うのは馬鹿げている。いったい誰が蝉の鳴き声を聞くのに金を払うのか?

 しかしいつの日か蝉の鳴き声を聞くのにいくら金を払っても惜しくはないという時代が来るのかもしれない。その時僕らの現代音楽は立派に古典の殿堂入りをしてるのだろう。




               火星人来襲の確立

「ねぇ、火星人って本当にいると思う?」

「馬鹿だな。いる訳ないじゃないか。その証拠に専門家はそんな話全く本気にしていない。ただの夢物語さ。」

「そうかな。でも私ちょっとだけ夢に賭けてみたい気もするの。」

「止めとけ、そんなこと。この新聞を見てごらん。火星人の来襲する確率は150分の1ぐらいだってさ。」

「でもそういうことがあった方が楽しくない?」

「迷惑する人が増えるだけさ。」

「私何となく火星人を応援したくなっちゃう。」


 未勝利戦で単勝倍率150倍を付けたその「マーズ・アタック」という名前の馬は馬群の後方へと消えていった。




                  啓示

 音楽を聴きながら寝酒を飲む。酔いも回ってきたのでそろそろ寝るか。時計を見る。AM2:14。ヴァレンタイン・デーを思い出す。与え与えられる。愛。ちょっと得したような感じで寝床に入る。

 だが考えてみれば僕にはチョコレートを食べる習慣がない。いらないものはいらない。そんなことを考えていると酔いが醒めて眠れなくなる。時計を見る。AM3:16。ヨハネの黙示録3節16章「こんな風に、お前は生温かくて、熱くも冷たくもないから、私はお前を口から吐き出そうとしている(岩波文庫)。」それならもう一杯飲んで熱くなって寝るとするか。



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