第2話

          ファミレスにて鳥のさえずりを聞く ~漢詩風に~

「うんうん、わかるわかる。」「全くわからず。」

「そうそう、うちもそうなの。」「そうなのか?」




                 スパイ

 他人の目が気になる。そういえばさっきからあの人間はこっちを見ていないか。周りにいる人間全てが信用できなくなる。

 だがある時知人がその文書を目にする。見つかってしまった!これで全てがおしまいだ!自分の磔の場面を想像する。しかし知人はこう言ったのだった。「お前難しそうなの読んでるな。」良かった。助かった!

 こうしてまた読み始める。読んでいるのは『金瓶梅』。


(学校の教科書から『金瓶梅』の名前が消えることになるらしい。最悪。)




               『唇のねじれた男』

「もし無人島に本を持って行くとしたら何にするか?」

 先日知人とそんな会話をしたのだが、その知人は司馬遷の『史記』を持って行くと答えた。なるほど、悪くない。無人島にいながら人間世界が一望できる。だが僕なら他の本を選ぶ。となるとやはりシェイクスピアか。

 そういえばどこかで似たような光景を見た覚えがある。誰にも顧みられることなくシェイクスピアを口ずさむ男の姿。確かシャーロック・ホームズにそんな乞食の姿が描かれていたはずだ。それならあの乞食はコナン・ドイルその人でもあったのか。




                ある冤罪事件

 殺人事件の容疑者としてフレディー・マーキュリーが逮捕され、彼は自白した。

「ママ、僕は人を殺しました。」

 彼の母親もその日の息子の言動がおかしかったことを証言した。




                 領土問題

「フランスの地はサリカ法によってイングランド王に正当に与えられた権利ではなかったのか。だとしたら俺のものを俺が要求して何が悪い。それに俺の四肢を横たえるにはこの島国では狭すぎる。俺の新たなベッドを百合の花で飾るのも悪くはない。」

                       ~『リチャード三十世』より~




                  政治家

「あの無知の知の無知の知という奴らか。不動の動者はさっさと動かしてやったらどうだ?」

                       ~『リチャード三十世』より~




                   知識

 知識を得ることは悪くないことだと思う。悪くても小説家になれるし、最悪の場合でも政治家になれる。




                   懺悔

 帳に閉ざされたその部屋の中で告解師は言った。

「これまでよほど罪深い生活を送ってこられた様子。贖罪のためには多少手荒な方法に頼らなければならないのは覚悟してください。」

「痛っ!」

 関節が外され四肢が引きちぎられた。


 懺悔を終えた後、何となく身が軽くなったような気がするのであった。

                         ~初めての整体のあとで~

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