daily02-03


 駒姫と共に処刑された方々の救出は、牧場とベアトリーチェと駒姫の仕事状況を見ながら、二人が行うことになった。全員連れてこられるかは判らないが、ベアトリーチェもやる気を出しているし、駒姫が率先してその役に就きたいというので任せることにする。


 時代特有の文化は、俺よりも駒姫の方が当然判っている。

 知識でしか知らない俺と、実際に生活していた駒姫とでは、接する物事への感覚が違っているだろうしな。まあ、判りすぎて強気に出られないこともあるだろうが、そこはベアトリーチェがサポートすればいい。

 

 けっして、「駒姫を助けられたからもういいや」と俺が思ってのことではないので、その辺誤解して欲しくはない。


 牧場の環境整備や支援者集め……そしてヘラの面倒を見るので忙しく、なかなか手が回らないのだ。

 過去から連れてきたい人物……美女に限る……は、まだまだ居るのだ。連れてこなくても、生で見てみたい人物や史実イベントはある。

 とにかくやりたいことはたくさんあるのに時間がない。


 ミニチュアダックスクロノスは、やること終えたら、酒飲んで床で寝そべってる。暇そうなんだから手伝って欲しいが、外敵ガイアの目を恐れてか、用が無いと家の外へ出てこない。

 無理を頼むこともあるから、ま、いいか。

 だらけて居たいときくらい誰だってあるしな。


 逆に、ネサレテがやる気を出している。

 ベアトリーチェや駒姫と共に、へラのところでいろいろ教えられ、刺激を受けているようだ。

 皆が仲良くしているのはいいことなのだが、問題は、へラが教えてる内容だ。


 「夫の愛をつなぎ止めておく方法」とかいう、わけわからん内容。


 んなもん、今まで通り、優しい気遣いしてくれるネサレテで十分なんだ。

 なのに、ベッドへの誘い方だの、夫をその気にさせる方法だの、更に、カナトスの聖なる泉ツアーなるものを企画しているらしい。


 カナトスの聖なる泉ツアーとは、ペロポネソス半島北東部にある都市のナフプリオにあるとされる泉、カナトスの聖なる泉で沐浴し、溜め込んだ苛立ちを全て洗い流し、処女性を取り戻す旅行のこと。

 そんなツアーがあることを知ったら、世界中のセレブは大金を積んででも参加したがるだろうな。


 ゼウスは処女性を取り戻したへラを好んだかもしれない。

 そこは処女厨だなんだと、他人の性癖に文句を付けるほど俺はガキではない。

 だが、わざわざそんなことをしなくても、ネサレテもベアトリーチェも美しいし、俺は愛情を傾けていられる。

 もちろんネサレテ達が若さを維持し、今の美しさを保つための努力に文句などない。


 恐れているのはただ一つ。

 へラに毒されてしまうことだけだ。

 そして、参ったことにその兆候が見える。


 ネサレテとベアトリーチェは、多分、相談しあっている。

 その日俺のベッドに入るのはどちらかをね。

 で、そこから先は、なし崩しで迫られる。


 抱きつかれてキスし、形の整った豊かで柔らかい胸を押しつけられ、足を絡められる。

 湯上がりの肌の香りを感じたら……そりゃもう愛しさとエロさが全開になるのは当然だろ?


 いや、嬉しいよ?

 ほんと、すごく嬉しい。

 男なら夢見る体験が夜ごと経験できてる。


 女神アプロディテの生まれ変わりと称されたネサレテ。

 十六世紀のローマで、その美しさで関心を集めたベアトリーチェ。


 この二人との睦み合いに不満など全くないさ。

 毎夜、素敵な時間を過ごし、朝も幸せ感じながら起きてる。

 男なら夢見る時間を毎日のように経験している。

 

 だけど、裏にへラが居るかと思うと、落ち着かないのも事実なんだ。

 贅沢と言われるかもしれないが、本音なんだよ。


 へラが来るまでは、どちらかと言えば受け身だった二人が、今では攻めにまわってる。

 どうかこれ以上、毒されないで欲しいと心から願ってる。


 子供ができたら、少しは落ち着くのかな……なんてこの頃考える機会が増えた。

 慌ただしいけれど、幸せな生活を満喫していたんだけどね。

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