月がきれいですね

黒宮 圭

月がきれいですね

青春という言葉がある。誰もが通り、誰かとの出会いの時期。

 さて問題だ。この言葉に間違えがあるとしたらどこだろう。

 答え。すべてだ。

 青春というのは、美男美女にしか訪れることはない。そして出会いがあったとしても、空振りでアウト。美男美女にバッター交代だ。

 かの有名な福沢諭吉は言ったそうだ。『天は人の上に人を造らず』と。これは「誰もが生まれつき平等である」という解釈もされている。

 だがそれは間違ってる。人が生まれつき平等なわけがない。

 事実、世界から差別はなくなっていない。自分の肌の色や顔をよくしようとしても、遺伝子に勝てるわけがない。

 つまり、平等という言葉は遺伝子レベルで否定されいる。

 では、どうするか。答えは簡単だ。それは――


 リア充発見、リア充発見!

 戦闘準備、戦闘準備!

 隊長、砲撃の用意できました!

 よし、放てー!

 くらえ、フォルムチェーンジ!


「おい」

「はい、すいません、ごめんなさい、彼女がほしい、反省してます……」

「途中願望が入ってるんだが……」

 俺、黒宮 圭は今、文芸部の部長に説教を受けている。理由は、このようなふざけた小説をコンクールに出そうとしたからだ。

「いくらなんでもこれはダメだろ。気持ちはわからんでもないが……」

「なーんだ、やっぱり部長も彼女がほしかったんですね!」

「よし、歯を食いしばれ」

「すいませんでした……」

 袖をまくり始めた部長をなだめるために、俺は社会人にも劣らない見事な土下座を決めた。

「まったく……。来週の月曜日までには、新しい原稿もってこいよ」

「え、これじゃダメなんですか」

「当たり前だバカ。こんなのだしたら、この学校の懸念に関わる」

「と言ってるけど実は?」

「編集めんどいから、もっと短いのがいい」

「なんで部長になったんですか……」

 俺もだが、この部長も大概な気がする。

 だが、締め切りが来週と言われた俺はある事を思い出した。

「でも部長、俺今週末課題で忙しいんですが……」

「知らん」

「……でも出さないと留年するんですが」

「自業自得だ」

「……」

「歯を食いしばれ」

「わかりました!わかりましたから、構えるのやめてください!」

(やっぱ怖いよこの人!自分の思い通りにいかないことを、すべて拳で解決しようとするタイプだ!)

 部長は空手の黒帯もちだ。戦ったら、間違いなくやられる。

 そんな人がなぜ文芸部に所属し、ましてや部長をやっているのか。それは、この文芸部の七不思議の一つだ。

 曰く、それを問いただそうとした奴は、次の日腹痛を起こすという。

 きっと、腹パンでもくらうのだろう。なんと恐ろしい……

「わかればいい。次はちゃんとやれよ?」

「へーい」

「返事はちゃんとしろ」

「へいへいほー」

「ふん!」

「ぐはっ!」

 俺は部長の見事な正拳を、腹に食らった。


「とは言ったものの、どうするか」

 学校の帰り道、俺は自転車をこぎながら次の小説の話題を考えていた。

 自分的には、一部は真面目に書いたつもりだ。青春なんて、一部の人にしか訪れないのは事実だ。

 中学の時、好きな人がいた。クラスの中でも一番かわいくて、勉強も運動もできる。そんな人だった。

 もちろん、しゃべったことはある。あっちから話しかけてきた時は、自分に興味を持ってくれたのかと痛い勘違いをよくした。

 でも、その人にも好きな人がいた。俺より全然かっこよく、男子からも信頼がある奴だった。

二人は付き合い、結局俺は思いを伝えられず、別々の道を歩んだ。

 そう、現実の恋愛なんて、生まれたときから勝ち組と負け組は決まっている。

 こういうことを言うと、性格で勝負すればいいと言う輩が必ず出てくる。

 じゃあ聞くが、その性格は本物か?

 あの人に好きになってもらいたい、褒められたい。そういう気持ちから出る性格は偽物だ。相手が好きになるような自分を演じているだけだ。

 そんなものは、長続きしない。いつか、ボロが出るのがおちだ。

 ましてや元々の性根が腐ってる俺では、本物の恋愛はできないということだ。

 まぁ、理想の自分を演じても恋愛はできる気がしないけど。

 でも、もし自分のすべてをさらけ出して、それを好きになってくれる人がいるなら。そんな人と出会えたなら。俺は――

「おーい、圭!」

 突然後ろから名前を呼ばれたので、俺は自転車を止めて振り返った。

 見ると、息を切らしながら、自転車を立ち漕ぎして来る少女がそこにいた。

 やがて、俺のところまできたその少女は息を整えながら文句を言い始めた。

「ちょっと……帰るの早すぎよ!」

「はて?どなたですか?」

「ほーう。あんた、幼馴染の顔を忘れるほど寝ぼけてるのかしら?よし、歯を食いしばりなさい?」

「やめろ!一日に二度も殴られたら俺の腹筋が崩壊する!」

「あんた、部活で何をやらかしたのよ……」

 さっき部長に殴られたところが、まだ痛む。

どうやら部長殿は加減ができない性分らしい。

「ほら、あんた宿題忘れていったでしょ?」

 彼女はバックの中から数学の宿題のプリントを渡してきた。

 俺は自分のバックの中を確かめると、案の定プリントはなかった。

「あー。悪い、助かった」

「別に平気よ。昔からの仲なんだし」

 そう、彼女は俺の幼馴染の矢島 春香。この学校で唯一の幼馴染であり、女友達だ。

「でも、こんなことしてていいのか?彼氏さんに申し訳ないんだが?」

「今日は部活で忙しいみたいなの。特に会う約束はないから平気平気」

「俺が言ってるのは、そういうことじゃないんだけどな……」

「ん?何か言った?」

「いや、なんでもない」

 春香には彼氏がいる。昔から、周りに好かれる性格だったから、彼氏ができたと聞いた時も驚きはしなかった。

 ただ、「おめでとう!そして爆発しろ!」とだけ言っといた。

 俺はそのまま帰ろうとしたが、暇だから一緒に帰ろうと言われた。

 少し悩んだが断っても勝手に付いて来そうなので、俺たちは再び自転車に乗って途中まで一緒に帰ることになった。



「で、部活で何をやらかしたのよ?」

 夕暮れ時、俺たちは自転車をこぎながら雑談をし合った。

「やらかしたとは失礼な。この世の理不尽さを語っただけだ」

「あんた、絶対にろくでもない文書いたわね……」

おっと春香さん?ろくでもないは言いすぎじゃないですかね?

 確かにふざけた部分もあったが、真面目な部分は褒めてほしいものだ。

「で、どんな内容なの?」

「いや、それはちょっと……」

「いいからいいから!」

 小説を書いてはいるが、さすがに友人に内容を話すのは気が引ける。

 だって、次の日クラスで「黒宮君て〇〇な小説書いてるんだってー」「やだー、きもーい」みたいなことが起きたら嫌だし。

 だが冷静に考えてみたら、俺にそんな女友達はいないことに気づく。できれば気づきたくなかった……

「はぁ。笑うんじゃないぞ?」

「わかってるって!」

「あはは!こいつ全然わかってねぇ!」

 こういう時の「わかってる」は、大体が嘘だ。

 だが幼馴染である春香なら、多少の信頼はある。

 俺は部長以外の人の感想も聞きたかったので、結局話すことにした。


――数分後――


「あっはははは!ちょっと何よそれ!お、おなか痛い……!」

「まぁわかってましたよ!くそ!」

 帰り道の自動販売機の前。

春香はベンチに腰を掛け、ジュースを片手に大笑いをしていた。

「ご、ごめんて……プッ!」

 春香は涙目で謝ってくるが、笑いが隠しきれてないところが意地が悪い。

 さすがにここまで笑われると、正直傷つくところがある。

「ふー。笑った笑った。そんなに彼女がほしかったの?」

「そりゃあな。だからお前が、ほんと羨ましいよ」

「羨ましい、かぁ。わたしは圭の方が羨ましいかな」

「……は?」

 予想外の返答に、思わず変な声がでた。

 てっきり、自慢してくるものかと思ったが。

「だーかーら。圭の方が羨ましいって言ったの」

「あの……春香さん?もし同情とかで言ってるならやめてくれます?本当に泣いちゃいますから」

「あんたのメンタル弱すぎでしょ……」

 いやだって、恋人なしの男子が恋人ありの女子に同情されるって相当ですよ?

 にしても俺が羨ましい?どういうことだ?

 春香は、空になったペットボトルを綺麗な放物線を描いてゴミ箱に投げ入れた。

「私ね、今の彼とうまくいってないの」

「……」

 俺は何も言わなかった。いや、言えなかったが正しいだろう。正直、どう反応すればいいかわからなかった。

 それが、話を促す合図となり、春香は恋人との現状を語り始めた。


 話は単純そうで、複雑だった。

 初めのころはお互いよく合い、遊びにも出かけた。お互いがお互いを本当に好きだった。

 でも最近は少し違う。

 お互いの嫌なところが一つ、また一つと会うたびに気づいていったらしい。

付き合う前の彼とは全く違う一面が、時には怖くなったときもあったとか。今では、合う約束もあまりしないという。

「でもそれって、付き合ってれば普通のことじゃないか?」

 確かに大変そうではあるけど、人間だれしも近くにいる者の意外な一面には気づいていくものだ。ごく自然なことだと思うが。

「うん、普通のことだよ。でもね、違うの……」

「違う?」

 春香は苦笑いの顔で静かにうなずく。

 言葉の意味がいまいちつかめない俺は、話の続きを待った。

「圭はさ、不満を打ち明けてくれない相手を、どう思う?」

「どうって。そりゃ、あるならちゃんと言ってほしいと思うけど」

「だよね。でも彼は不満があるのに、私には何も言ってくれないの。私といるときも、無理して笑っているのがバレバレで……」

 なるほど。そういうことか。

 でも、不満を本人に打ち明けられないのは、その人に嫌われてしまうのを恐れているからだろう。

 もし嫌われてしまったら、今まで積み上げてきたその人とのつながりが、簡単に崩れてしまうと思っているから。

 それは、傷つけたくないという優しさからの行動。傷つきたくないという自己防衛からの行動。

そして、その行動は嘘でもある。その嘘で傷つく人もいるというのに……。

 まったくもって皮肉な話だ。

「私ね、人の一面を知るのが怖くなっちゃった。知ったら、前に戻れない気がして……」

「……つまり、身近に誰もいない俺は、そんな悩みを持たなくて済むと。だから羨ましいってことか」

「うん……。ごめんね、なんか皮肉っぽいよね」

 春香は最初に見せた苦笑いをつくった。

 その顔を見るのはきっと初めてだろう。春香は人に自分の弱いところを見せようとしないから。

 俺は話の途中からあることに気づいた。そして、それを春香に言うべきか迷っていた。

 これを言ったら彼女を泣かせてしまうかもしれないからだ。

 だから俺は最後に一つ質問することにした。

「春香」

「ん?」

「お前は今、彼氏のこと好きか?」

「え?……」

 突然の質問に、春香は驚いた表情で俺の目を見た。

 俺はもう一度、今度は強く答えを聞いた。

「大事なことだ。答えてくれ」

「……」

 数秒の沈黙。

 太陽が沈み、月の輝きが夜道を静かに照らし始めた。

 そして春香はついに、意を決した表情で答えを出した。

「彼のことは……もちろん好きだよ」

 あぁ、そうだ。それでいいんだ。その気持ちがあれば、きっとまだ間に合う。

 俺は、春香に言おうとしていたことを話すことにした。

「圭……いったい何なの?」

「春香、お前はその不満を彼氏に言ったのか?」

「え……言ってない」

「はぁ?言ってないのか?自分はさんざん言ってほしいと思っているくせに?」

「そ、それは……」

 春香の表情が暗くなる。

 こんなこと言って、春香が何も言い返せないのはわかっている。それでも、言わなきゃいけない。春香のために。

「まったく、彼氏も悪いがお前も悪い。たかが不満を言い合えないなんて。そんなもの偽物の関係だ」

「っ!」

そう。それは偽物の関係。いつか壊れると決まっている関係だ。

俺の指摘に春香は歯を食いしばり、少し震えた声で喋った。

「……近くに誰もいない圭には、この気持ちはわからないよ」

「はっ!あーそうだよ。彼女いない歴、イコール年齢の高校生だからな!お前らリア充の現状を聞いて誰得だよ。俺の身にもなりやがれ!」

そうだ。俺にはお前の気持ちはわからない。

当たり前だ。他人の気持ちをわかる奴なんてこの世にいない。その気持ち、感情は本人しか感じていないのだから。

むしろ、わかるという奴はわかった気になっている馬鹿だ。

だから話すんだ。この俺の気持ちをわかってもらうためにも。

 ついに春香の目に涙が浮かんできた。

 それを見て俺の心は締め付けられるが、ここで辞めるわけにはいかない。

「何が前に戻れなくなる気がするだ。馬鹿か。そんなことで戻れなくなるんなら、日本の夫婦は今頃全員離婚してるわ」

「じゃあ……」

「あ?」

「じゃあ、どうすればいいの!」

 ついにこらえきれなくなった春香が、大きな声で俺に叫んできた。

「何度も言おうと思った!何度も聞こうとした!でも怖いの!嫌われたくないの!」

 これを言ったら確実に終わる。でも——

「だって!そういうもんでしょ!誰しもが正直になれるわけじゃないの!」

これが、この腐った人間にできる唯一のことだから。

俺はゆっくりと深呼吸して、春香の言葉を遮るように言った。

「圭だって嫌われたくない人くらい――」

「じゃあ、別れればいいんじゃね?」

「っ!」

 パンッと乾いた音が響いた。

 俺は、頬をはたかれた。

 ついに言ってしまった。春香が一番傷つく一言を。

「なんで、そんなこと平気で言うの……」

「……」

 春香は泣いていた。ほんとは今すぐこの場から立ち去りたいはずなのに、逃げたくないという思いで動けないでいる。

 きっと本人も理解しているんだろう。その程度のつながりなら、長くはもたないということ。

 数秒の沈黙がまたしても二人の間に流れる。

 しかし、今回は先に俺の方から口を開いた。

「なぁ、今俺のことどう思う?」

「……」

 質問の意図が読めないという顔で、春香が俺の顔を見てくる。

 俺は静かに答えを待った。

 春香は自分がからかわれているのかと思い、怒りで声を震えさせながら答えた。

「嫌いよ……大っ嫌い。あんたなんか最低の――」

「そうか。俺は好きだけどな」

「……は?」

「あ、恋愛対象としてとかじゃないぞ?友達としてだ」

 驚きの声を出す春香に、俺は遠慮なく言葉を紡いでいく。

「いつも明るくて、たまに口が悪くて、それでいて面白くて。何より、一緒にいて飽きないね!」

「……圭が何を言いたいのか全然わからない。だって私……あんなに怒鳴って、殴ったりもしたのに……」

 まったく、こんなこと口で言うのは恥ずかしいんだが。

 俺は思っていることをまっすぐに伝えた。

「あのなぁ、別にそんな些細なことで俺はお前を嫌ったりしねーよ。何年見てきたと思ってるんだ。幼馴染なめんな」

「圭……」

 そう、俺と春香は幼馴染。それなりの積み重ねてきたつながりはある。そう簡単に崩れるほどもろくはない。

「春香と彼氏。二人がどれだけの仲かよく知らないけど、俺以上の関係なんだ。きっと大丈夫だって」

「……でも」

「俺に言えたんだ。彼氏にも言える。自信持っていけ」

「……もし、別れることになったら?そんなの……」

「もし!別れることになったら、そのクソ野郎を部長に殴ってもらうから安心しろ」

 俺は、満面の笑みで春香に笑いかけた。

 春香が驚きの表情で俺を見る。

 しばらくして、二人の間に自然と笑いがこぼれ始めた。

(あぁ、やっぱ春香は笑ってなきゃな)

 春香のその笑顔が見れたことに満足していると、彼女は俺に聞いてきた。

「あんたが殴るんじゃないの?」

「部長の方が何倍も痛そうだろ?」

「ふふ。確かにそうね」

 今の春香の顔には、さっきまでの迷いはなかった。

 助けになれたかわからないが、ひとまずこれで大丈夫だろう。

「にしても、結構いろいろ言ってくれたわね。圭のくせに生意気よ」

「はっ!俺はいう時は言う男なのさ」

「恋愛経験値0がよく言うわ」

 二人はいつものように冗談を言い合って、笑って、いつも通りの時間を過ごした。


「よし。じゃあそろそろ帰るか」

 俺は、一足先に自転車に乗ってゆっくり走り始めた。

「そうね。もうすっかり夜になって――」

「春香?」

 続けて春香も自転車に乗に乗ろうとした時、突然後ろから名前を呼ばれた。

 春香は少し驚いた表情で振り返った。

 様子を見るからに、聞き覚えのある声だったのだろう。

 そこには春香の彼氏がいた。

「蓮くん……」

 二人はお互いの顔を見るに、気まずい顔になった。

 でもそれは一瞬。春香はさっき俺に言われたことを思い出し、彼氏に近づいて行った。

「蓮くん。ちょっと話さない?」

「う、うん。僕も、春香と話がしたかった」

「……あ、そうだ」

 春香はふと思い出したように後ろを振り向く。

 自分の背中を押してくれた人に、最後にお礼が言いたくて。

「あれ……」

 しかし、そこには誰もいなかった。

 そして、彼が空気を読んでくれたことに春香はすぐに気づいた。

 いつもは気が利かないのに、こういう時になるとすぐ気を使う彼を相変わらずだなと思う。

 春香は言いそびれた言葉を、今も輝いている月に向かって静かにつぶやいた。

「ありがとう、圭」



 夜道。俺は春香があの後どうなったか少々気になりながら、一人で自転車をこいでいた。

「ま、あの二人なら大丈夫だろ」

 見た感じ、彼氏の方も悪い奴ではなさそうだった。一つ気に入らない点があるとしたら、イケメンだったことだが。

 本当にこの世界は不平等だ。大体おいしいところを持ってくのは、美男美女の宿命らしい。俺たち一般人は、そんな奴らの支え役ってとこだ。ほんと、酷い話だ。

 しかし――

「たまには、こういうのも悪くないな」

 誰かの役に立てるのは素直に嬉しい。やり方こそ最悪だったが、これで幸せになってくれたらありがたい。

 今回のことで思った。

 もし、俺にも彼女ができたとしたら。そして、春香と同じ悩みに直面したとしたら。

 俺は不満をすべて打ち明けようと思う。もちろん、相手からも話してほしい。

 お互いに遠慮せず、無理をせず、すべてを受け入れあう仲になりたい。

 そんな理想は実現しないのはわかっている。誰かと一緒にいるということは、お互いに我慢をし合うということなのだから。すべてをさらけ出すのは難しい。

 でも、自分のすべてをさらけ出して、それでも好きになってくれる人がいるなら。


俺は、きっと初めて言えるのだろう。


「月がきれいだな」


 その声は誰にかけたものなのかは、自分にも分らなかった。

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