第91話 アイコムの雪原
アキオはやっとの思いで爆弾の場所についた。ディオスはアキオを探していた。見ると雪原に人が隠れている様に見えた。
「なんだ。やけに人が沢山いるぞ。隠れているんだろうか」
ドラゴンの目の良さが雪原にディオスを引き込んだ。
「何だこれは?死骸か」
ディオスは腹立ち紛れに火を吐いて、そこら中に転がっている死骸を焼き払った。そのまま放って追いたのならアキオが紛れ込むのじゃないかと考えての事だった。アイコムの雪原は大きな谷の上に雪が積もって出来たものだった。それを炎で焼き溶かした。ドラゴンは人よりも重い。
ガッガッガ〜!
何かの音がする。ディオスは辺りを見渡すが何もない。ドラゴンは多くの場合大概のものから難を逃れられる。その為あまり心配などしない。ガッガッガ〜と氷の軋む音がしたと思ったら、ディオスの足元の雪原が崩れ、気が付けば胸まで雪に埋まっているディオスであった。
「チッ!これはしくじった」
ディオスは出ようと身を捩ったがなかなか出る事が出来ないでいた。
バッバッバッ。
山の上から聞こえる聞きなれない音。ディオスはその音のする方を見た。そこに見たものは雪崩であった。
「あっ」
ディオスは気がつくと雪の中に埋まっていた。右片側の顔だけは出ていたが後は雪に埋まってしまっていた。どうしようかと考えていると右目に小さなものが動いているのが見える。
「何だろう」
そう思い見ていると細い何かを持ち出してきた。
「えい!」
そいつは掛け声とともに目を突いてきた。
右眼に鋭い痛みが走る。瞼で塞ぐ事も出来ず顔を動かさんとすれば、また痛みが襲ってきた。ディオスは火を吐いて辺り一面火の海にした。だが相手は見えないが何度も右目を攻撃してくる。
やっとの事で首が動く、だが右目は何も見えない。ディオスは怒り、炎を吐き続けた。やっと胸まで雪が溶けた。腕が動く、彼奴を捕まえよう。動こうとすると、左眼に雪原を走り去ろうと必死に逃げてゆく人の姿を見た。ディオスは口から炎を吐く、やったと思っていたら、黒い影がそいつの姿を掻き消したと見ていると、後には雪原だけが見えるだけであった。黒い影は空の彼方へ飛び去り見えなくなった。雪原が解け、水と氷のドロドロの状態がディオスの体をより絡めとり、動き難い状況に変わりなかった。この状況から抜き出ようとして必死にもがいているディオス。
ガッガッガ〜。
今度は地面が揺れる。ディオスが見上げると山々から雪が降り注ぎ、自分を埋めようとて押し寄せてくる。あがくディオスであったが、しばらくすると地鳴りも収まり、音一つ無い世界になった。
アイコムの雪原は何もなかった様に風が吹いていた。
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