第22話 報告
グンとか言うあの嫌な男が出て行ってもうかれこれ三時間はすぎた頃だろうと考えていると、一際大きな声が聞こえて来た。どうも村の門の所で何か騒ぎが起こったようだ。
「おいっ、俺も見に行ってもいいか」
女に尋ねると簡単に許可を出したので、村の壁に登り下を見た。みるとグンともう一人の男がグワジに似た雛のようなモノに襲われている。村の壁の上から矢を撃つのだが倒れない。もうかれこれ二十本も刺さっている。だが目の前の人を食わんと村の壁伝いに男たちを襲っている。
「バンッ」と拳銃を撃った。雛ぐらいなら1発で倒す事ができた。
村中がこの銃声に驚き、し〜んとなり、俺は戸惑った。
壁から降り、振り向くとおババが俺を見て震えていた。
「やはり、只者とは思えなかったがやはりな」
そう言うとグンを呼び、報告を受けた。そして俺に頼むように告げた。
「石は割れていた。お主には黒龍様の裁きの場にいて貰う」
俺は諦めた。
「分かった。ただ俺と一緒にやって来たギンを野に返してやりたい。それは許してもらえるか」
「許そう。そうしてやってくれ」
ギンを連れ、村の門の所まで来ると他所の村からのおババ様参りの一行が着いたところだった。牛車につながれた獣が十匹ばかりいた。
ギンとは色が違い、緑色で体長が少し大きめの走りトカゲが三匹と毛むくじゃらの牛のような生き物が七匹。その全てが村に入るのを嫌がり、暴れていた。
「ギンさようならだ。ここまでありがとう」
「アキオ。アキオ。行く。同じ」
「それは出来ないんだ」
アキオはギンの鼻先を優しくなぜ、別れを惜しんだ。
ギンは三匹のトカゲを見ていた。それでおババにこれらの動物はどうなるのかと尋ねると重々しく答えた。
「あれは生贄だ。受け取ればすぐに占い殺す」
「そうか。俺はおババの願いを少なからず聞いている。そうだろう」
「そうじゃなあ」
「だったら、俺の頼み聞いてくれるか」
「何か。言ってみることだ」
「それじゃ、お言葉に甘えて、頼むとしょう」
「さっきのトカゲを俺にくれないか」
「どうするのじゃ」
「ギンと一緒に野に放す。いいだろう」
グンを呼びつけると直ぐに三匹のトカゲを連れて来てくれた。
「ギン、一緒に行け。もうお前は自由だ。この三匹と行け」
ギンは俺の名を何度も呼びながら立ち去らない。
「もういいんだ。早く行け」
大声で怒った様に言うと、少しづつ後づサリした。俺は下を向いてギンを見ない。それでやっと諦め、三匹を連れ、どこかに旅立って行った。
俺は村に留まり黒龍様なるドラゴンに会うことを決めていた。
その晩はグワジの雛の肉を村中が食べお祭りのような騒ぎだった。俺も食ったがやはり鳥だった。鶏と味は代わり映えするわけもなく落胆していた。が、村中はなかなか食えないご馳走に喜んでいた。
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