第18話 ギン

 銀色をした恐竜はジッと俺を見る。

「あれは何だ。教えろ」

「どれ」

「あれだ。うず高く有るものだ。さっきまで無かったが」

「ダカシュの出した物」

「そうか、さっきのはダカシュと言い、アレは奴らの糞か」

「あれに登れるか」

「走る。行く」

「そうか。行けるか。銀色」

「銀色。何」

「済まない。名前聞いてなかった。名前は何と言う」

「名前とは何か」

「名前がないのか。それでは言う。俺がギンと呼べば、お前のことだ。俺のことはアキオと呼べ。アキオとお前がいえば俺のことだ」

「わかった」


「ギン。あれに登れ、早く。音を立てるな」

糞の上は柔らかく、音がしない。振動もせず、クバンカには気づかれないようだった。そのうず高い糞の上に立つとクバンカが林立する森のような風景に戦慄を覚えた。

「ゆっくり、音を立てず。あの方向に行こう」

ギンは上手く進んで行く。が、踏み潰されたクバンカの場所に出た。もう動いていない。大丈夫だろうか。ぐるっと回るには時間がかかる。少々危険でもそこを通る必要がある。


「クバンカを踏まずに行けよ」

ギンも恐々進んで行く。やっと渡りきり、次の糞にたどり着き、登り始めた。だが、そこの糞は粘りがなく上りかけるギンの足元が崩れ、糞がコロコロと落ちて行く。動かなかったクバンカの触手にそれが当たった。すると急に触手が伸び始めた。


それに呼応するように今まで動かなかったクバンカまで触手を伸ばし始めた。それを見た俺はギンに「走れ」と大声を出した。


触手は声に引き寄せられ、俺たちに迫る。ギンも速く走りたいのだが。糞の上は走りにくい。それで、糞から降りて走り抜けるように指示した。


 ギンは飛ぶように走り出した。触手は無数に見える。地上を走る振動がクバンカに伝わり、追っかけて来るんだろう。そこで行く先の左右にある糞の山に手榴弾を投げ、走り抜けた。手榴弾が爆発、その振動が俺たちの足音を打ち消したようなので触手の追跡はそこで終わった。

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