第14話 生き残りを賭けて

 男はグレーグ・ドラコと名乗り、元外人部隊の大佐であったと話した。

「なぜ殺し屋になったのか」との問いには答えず、死んだ仲間の武器や道具を心配するので集めてやった。

「喜んでいるのに悪いんだが。状況は切迫している。これからどうするんだい」

「アキオ。この道具は此処にはない力を持っている。ただ、今回は相手が悪かっただけさ。相手によっては十分に使える事もきっとある。大事に使えば役に立つ。君にも今にわかるときがくる」

右腕が折れているので力一杯ひっぱり、添え木をしてやった。痛かっただろうに声一つも上げずにグレーグは乗り切った。

「流石だな。あんた、やっぱり凄いよ」

俺の賞賛を聞いても苦笑を浮かべるだけだった。

「頼みがある。背中が痛い。腰が痛い。なんとかして貰えないか」

「ああ。わかった。何か敷いてやる」

草や木を使い簡易のベットを作り、グレーグを寝かせた。


何かを食わなきゃ生きて行けない。だが食われたらそれで終わり。死と隣り合わせの日々が続くのだろう。だが幸運にも水はすぐ近くで湧いていた。水を汲んできて飲もうとするとグレーグは厳しく止めた。

「調べろ。安全かどうかを」

「どうすれば良い」

「口に含んですぐに吐き出せ、もし口が荒れたり、いつもと違う感覚に出会えば諦めろ。決して無理はするな。動物も全てを強敵と考えろ」

「何でだい」

「どんな奴でも生き残るための武器を持っている。あのリスだって毒を持ってるって知ってたかい。見かけに騙されるな。可愛いと見えるのは俺たちだけなのかも知れんのだ」

それから俺は知らないものを口に含み毒を見分ける役をさせられた。


 グレーグの寝床を用意している間に、あのトマスがいなくなっていた。岩陰に小さくなっておかしな言葉を喋っていた男は気づくといなくなっていた。

「グレーグ。トマスが居ない。どうしたか知らないかい」

「居ないって。どうしたんだろう」


 3人で生きようと考えていたが二人での生活になったみたいだった。

近くに生えている草は全て俺が安全かどうかを確認した。拳銃の分解と組み立て。どの部品が消耗品か、捨てるならどれからか。厳しく教えられた。グレーグが寝た後は自習して体に叩き込んだ。ナイフの作り方。弓の作り方に使い方。プラスチック爆弾の使い方。生き残る方法を身につけていった。


 母や父にきっと会えると信じて。苦しい努力も辛くはなかった。この世界で生きる恐ろしい生き物に対抗するための努力は惜しまなかった。グレーグが歩けるようになり体術も教えてくれた。

「この分なら俺を越えるのももうすぐだな。最近獲物いを捕まえるのも早くなった。俺は外人部隊でもサバイバル術にかけては一番だった。アキオ、君には感心するよ。明日からは戦略と戦術を教えよう」


 この世界にやって来てから一年が経とうとしていた。グレーグは全てを教えてくれた。俺は歩く姿もグレーグと同じになっていた。


 ある朝のことだった。いつもの様に朝食を狩に行って、うさぎに似た獲物を二匹捕まえて来た。

「さあ。朝飯にしよう。グレーグ」

呼びかけても返事がない。

俺は何か不安を感じた。いつもと同じあの嫌な感覚だ。とっさに身構え警戒した。





 

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