第12話 闘い

「早くやっつけろ」

拳銃の発砲音。サブマシンガンの連射音が何処か遠くで鳴っているのが聞こえて来る。ロケット弾が発射され、爆発する音さえ聞こえて来る。

「何故だ、どうしてこうなった」

物理的な音の他に人の声も聞こえて来る。

「変な声まで聞こえて来る。どうしてだ」

眠りながら俺は考えた。

「夢、いや、違うな。だが、何だろう」

そう思いながら意識はハッキリしているのかに微睡んでいた。

「ぎゃー、おいっ、しっかりしろ。何している。早く撃て」

「お前たち、右に回り込め。足を狙え」

ギャッオン。ドカン、ドカン。

それから静かになり、音が聞こえなくなった。

「どうしてこうなったら。何故だ。何故なんだ」

静かなのにどうして人の声がするんだ。そう思った。目を開けると明るかった。

大きな岩が見えた。その岩の右手に足を抱えて座り込み、独り言を言いつずけている男がいた。髪は汚れ、背広はクシャクシャ。如何にも敗残者と感じさせる姿。やっと頭が回り始め、奴がトマス・マクレインだと気付いた。

「そうだった。俺は奴らに殺されかけた。穴の中に滑り込み、暗黒の空間を落ちて行った。それからどうなったのか」

 目覚めて自分の置かれた状況を確認しようと辺りを見渡した。どうなっているのか。何が起こっているのか。周りを隈無く見渡した。岩が不自然に転がってる。5人の男が転がっている。トマスが震えている。俺が知らない内に奴ら7人全てが何かにやられた様であった。なんとか助かったと思えた。だがここはどこだろうと感じずにはいられなかった。マクレイン研究所の地下ではないだろう。太陽が二つ見える。

「んっ、太陽が二つ」

そんな事があるのかとマジマジと空を見上げていると、大きな影が俺を覆った。

「お前は誰だ。お前も俺に挑むのか」

何が話しかけているのかわからずキョロキョロ辺りを見回していた。

「どこを見ている。俺が見えないか」

「ん」と見上げると大きな恐竜が俺を睨みつけていた。

「あんたが話しかけてるのか」

「俺以外誰がいる」

俺は当惑した。頭がおかしくなったのかと思うほどであった。が、答えなくては相手が怒り出す。それだけは避けねばならない。

「いえ。ただここにいるだけです。こんにちわ。よろしく」

「なら良い。それで良い」

恐竜はそう言うと方向を変え、俺が見てる方に歩いて行った。図鑑では見たことのない形をしていた。緑色でトリケラトプスの体に噛みつき亀の様な頭がついていた。大きさは300メートルはあっただろう。

 

 この戦いは何故引き起こされたか知らないが、俺の人生の転機になった。7人の内一人は生きていた。後の6人は帰らぬ人となって転がっていた。トマスは放心状態で何を聞いても要領を得なかった。狂ったのかと思ってしまうほど錯誤の中で溺れていた。

「ここは、どこなんだ。あんな生き物がいるなんて。夢だ。そうだ夢に違いない」

トマスは自分に言い聞かせる様に独り言をつぶやいていた。俺は俺で考えていた。ブルックリンの橋の上から見えた太陽が二つの光景が思い出された。

「そう言えば、かあさんはあの時親父に電話してたよなあ。あれから俺たち兄弟二人、オババに預けられたんだよな。この世界と親父の研究と何か繋がりがあるのだろうか」

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