第6話 マクレイン研究所
小高い丘の上に立つ建物が見える。近ずくにつれお化け屋敷の様に見える。建物の壁は蔦が蔓、門も草むしていた。
「ここは何ですか。何の用で来たんですか」
「アキオ、ここがマクレイン研究所だ。君の両親が失踪したところだ」
「えっ。死んだと聞いていましたが」
「そういう風に伝えられていたのも仕方のない事だったんだ」
ジェフは黙った。研究所の門をマジマジと眺め、手でなぜていた。意を決したように力一杯押し開けた。ギギギギギと、軋む音を立てながら門は開かれた。
「さあ、行こうか」
言葉少なにジェフは先に立ち研究所に入ってゆく。俺は辺りをキョロキョロ見回しながら後ろをついて行った。
もう化け物が出て来てもおかしくないくらい敷地内は荒れ果てていた。だが、研究所の内部は埃が舞っている割には綺麗だった。この落差が俺には理解できなかった。埃の積もってるところがあるのに計器類のメーターや計器盤が読み取れる。おかしいと思いジェフに尋ねてみた。
「ここは誰か管理している人でもいるのですか」
「なぜそう思うんだね」
「あそこもここも、計器類やメーターが読み取れるのはおかしいでしょう。もっとチリや埃が溜まっていてもおかしくないでしょうに」
「そうかもなあ。でも誰もいないよ」
そう言う話をしながら研究所の内部に進み入り、厳重な扉を開けるとそこは中央指令室みたいな所だった。
この部屋の計器類は倒れていたり、半分壊されているものも多かった。極め付けは壁に付けられた大きな爪跡だった。三本の線が鉄の壁に深く、右から左に斜めに付いており、見た人を驚かす。
「どうだい。これを見て」
「どうだいと言われても。何とも言えないでしょう」
「そうだな。これを見た何人もの人が、ここにいた人間は怪物に殺されたに違いないと考えたんだ」
「じゃあ」
「だが。俺は違う考えを持っているんだ」
計器類の並ぶこの部屋は東京ドームの広さと大きさをしていた。指令室の中心部から眺めると、奥に大きなアンテナが左右に一本づつ建っていた。しかし、おかしいことに右の方が半分無くなっていた。
「あれを見たかい。あのアンテナは一つが1トン近くある代物だ。消えた部分だけで500キロはあるんだ。あの消えた部分がどこにもないんだ。不思議だろう。捜したが出てこなかったんだ」
「えっ。なかったの。どうして」
「わからない。そう、わからないんだ。もう行こうか」
ジェフに連れられて研究所の裏庭に出て来た。
丁度座るのにいい石垣が目についたジェフは座ろうと提案した。俺はこんなところに座っても仕方ないんじゃないかと思ったが、ジェフの寂しそうな顔を見ると何も言えなかった。
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