第17話「SNS -人が交錯する場-」


「相変わらず、この通りは人が行き交っている」


マクドナルドの駐車場では考え事が右往左往し落ち着かず

夕方になる前に高速道路を走った


辿り着いたのは、大学生の頃に住んでいた街だった



大学から徒歩2、3分の大通り

駅が近くにあり、今も大学生の姿が随所に行き交っている

通りにあったヴィレッジバンガードは、ファミリーレストランに代わっていた


消えずに残るものは人の行き交う姿だけなのだろうかーー


大学の頃、一人暮らしをしていた

本当にまったく良い記憶がない

私は大学を中退している


初日から肌に合わない感覚があった


そこには馴染めない空気があり

ただ合わない人種の場所で

ただただ、場違いな環境に感じた


私は引きこもり自分を守るための空間を求めた

その頃にSNSを利用しインターネットの住人たちと交流を始めた


主にチャットを行なった


私はマイナーな小説を読むのが好きだった

好みの作家や作品を通じて、コミュニティに参加をした

パソコンの画面はずっと付けっぱなし

私はずっとそこで黄昏ていた

時間の流れを止めるように

私はそこで永遠を感じた


パソコンの前から離れ外に出るとき

下を向いて歩いた


私が視たいものは外にはなかった

背けたいことだった


メジャーな通りには、メジャーな大きな生き方や趣味がぶつかるように行き交っている


マイナーな通りには、マイナーな小さな生き方や趣味で世界から溢れた人の居場所がある



私の現実にはもう居場所がなく、耐えられないことを痛感した


インターネットの中では何かが起こるーー


何かを当てにしていた

SNSを通じて私に訪れる何かを期待していた

なんでそう思えたのだろうか?



大学から徒歩1分


人通りの少ない場所

写真を撮ってみた

昔、大学の頃に暮らしたアパート

ボロい建物だったから、もう誰もいない

中に入ることはもう出来ないようだ


空の色が変わり始めたーー


日没の薄明の中で

私のファインダーには

人を惑わす光の粒子が交錯して、飛び込んできた


ーー私はそこで何かを“視た”ように感じた



私の居場所だったアパートの外から撮った画像は

光で錯乱しながら、永遠の黄昏を映していた


時間の流れのない光がただ漂い、浮いて、記憶されるだけの



久しぶりに本を読もうと思った


今晩の過ごし方は読書にしようと思う

どこかの本屋で買って、またどこかのマクドナルドにでも行こうか


愛車の古い軽自動車と、車の鍵がある時代

10年よく頑張った

この旅で、役目を終えるーー



今日と昨日と、明日の3日間


そこで役目を終えるんだ



車の車窓から西の空に黒い雲が群れる

私の心はどこへ行こうとするのか?


昨日言われたことを忘れ

今日やることに縛られ

明日の気分が億劫になる


自分の歩んだ道すがら

自分がやるべきこと

自分が到達すべき使命

見通せない全てが、予定を引き延ばしてゆく


昔、「3日間あれば、人は変われる。」


そう言ったことがある

誰に対してだったかは覚えてはいない

でも、誰かに対して、そう感じていた


この3日間で自分の感情を纏め上げる




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る