第18話「SNS -土砂降りを視る-」
大学を辞めてから
20代の前半、私はフリーターだった
色んな仕事に就いた
と言っても、特殊な仕事などではなく、
簡単な、どこにでもある仕事
本屋、コンビニ、ライン作業の工場、スポーツ用品店、郵便局など
簡単な「マニュアル」に沿った内容がほとんど
それらが本当に「マニュアル」が必要だったのかはわからない
私の心に沿った方法で「マニュアル」が組まれていたなら
私は、私の人生に疑問を持たずに、そのまま生きていたのだろうか?
「心を失うこと」とは、どういう事なのだろうかと考えた
「疑問を持つことを止めること」
「相手の気持ちを考えることを止めること」
誰かを恨む気持ちがあった
私の心の中、何度も蘇る引っかかりがある
もう、記憶も曖昧になり、正確なことなど覚えてはいない
私の心を回復させたあのひとは
今はどこにいるのだろうか?
何故なのか?
一昨日の予報では、今日は「晴れ」だったはず
この「薄い灰色」フード付きのパーカー
この「スエード素材の灰色」スポーツシューズ
この「色落ちした灰色がかった」ブルージーンズ
空はもう暗く、
夜になり、
私は私自身の身を灰色に染めて、自らの表情を曇らせている
元気かい?
なんだか私は疲れたよ
なんの意味もないことに時間をかけることに
もう何処かに行ってしまったものに
愛情をかけることはできないよ
マクドナルドの夕食
駐車場
雨が始まり
足元を濡らしながら、店内へと向かう
私の衣服には雨が染み、灰色を深めている
人生に転がったまま
色味を失い
何処か行く宛てもない落ち葉が吹かれ
何度も蘇り引っかかり続ける
ーー私の足元をかすめた
落ち葉……
いつのものか
いつからのものか
1年を越えた風にも拾われず
地上の網に引っかかったままで
落ち葉……
いつのものか
いつからのものか
去年のわたしを遺したまま
行方不明にならずに
落ち葉・・・…
今年は
今年こそは
車内で本を広げた
バランスを欠いている
どの部分か
人生のどの部分か
欠けたもの 埋め合わせるもの
物事の厚みと広がり
物事の行方
得ること
失うこと
護ること
喪うこと
バランスに気を使う
バランスに気が向く
人生、うまくいっているかい?
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