第13話「反発・反動(作用と反作用)」


私たちは、行ったやり方に満足していた。


「マニュアル」により、全ての秩序が整った。


先の見えなかった世の中に、『意味』を顕在化した。


私たちは、生きる意味・生きる目的を与えることが出来た。



「貧しさ」が、私たちを殺さず


「見通しのなさ」で、我を失わず


「息苦しさ」と、自殺を選ばず



ーーしかし、やや時が経ち反発する人間が現れた



私は「GI」の元を離れたあと、新たなグループ企業での勤務に従事していた。


業務としては、母国に於ける「コンピュータ」のサービス・メンテナンスに関わる内容を行っていた。

「コンピュータ」の開発メンバーである私は、「コンピュータ」の父の一人でもある。

人工知能にどのようなディープランニングを施し、育成し、発展させた過程を理解している。

その為、母国に於いての責任者の一人が私でもある。


「マニュアル」に関するPDCAサイクルの進捗に目を通していた私の元に開発メンバーから一通のメッセージが送られてきたのは、定期的なメンテナンス業務を終えた夕刻だった。


 「君の国の人間は、何か特殊な訓練でも受けているのかい?

  どうやら、私たちのマニュアルにも不備があったようだ。

  君の定期的な報告に虚偽なないと信じているが、

  これについては、GIにも報告を行った。

  しかしながら…君も興味を持つ内容であることは間違いないか

  とにかく、今から本社に来るんだ」


妙な汗をかいた理由がわからなかった。

ただ、夕食は会社の迎えのマクドナルドにするべきだと判断した。



本社にはGIの姿はなかった。

すでに自らと数名の担当と共に調査へと発ったらしいとの報告だった。

本社に出向いたメンバー達には、独自の調査を行うようにと資料が配られた。

資料の詳しい内容から『反発者』と呼称された男がアメリカのグループ企業に潜り込みスパイ活動を行っていた事。

拘束した反発者の持ち物を調べると規制が届いていないパソコンのデバイスを所有していた事。

反発者は何らかの団体の一員とみられ、その団体が「独自のコンピュータ」を開発していた事の報告だった。


私たちの「マニュアル」により、全ての人間の「生き方」が統一されてから、

人は余計なことを考えることを止めたはずだ。



人間が学ぶべき教養(社会に役立てるために)


資産運営(消費先を絞り、本当に必要な企業のみが残る)


余暇の創出(間違いのないストレス発散方法の確立)


人間を分類化し、恋愛方法を一本化(孤独な人間を生み出さない)



上記により、人間は「フォーカス」すべき事柄にのみ目を向けるようになった。


それでも、溢れる人間がいたというわけだ。

これには私たちも驚きを隠せなかった。


用意すべき全ての事柄があり、没入できる環境がある。

そこに不満を感じた訳が、理解できない。


欲望は満たされているはずだ…私たちは快楽の用意もしていたのに。


なぜ…?



拘束した反発者の名は『

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