第26話 津倉佐々美、にゃんこのお祭りを楽しんでもいいかな?


「はい、お客さん、金魚すくうときはちゃんとポイを使ってくださいよ」


津倉佐々美はなぜかお祭り会場の屋台の1つである金魚すくいを仕切っていた。

金魚すくいは大盛況。

お祭りは猫たちがいっぱい出てきて大賑わいだ。

この島ってこんなに猫がいたのねってぐらい、けっこうな数だった。ざっと100匹ぐらい?

金魚すくいは子猫だけでなく、大人猫も人気だった。ゆらゆらする金魚にはむずむずしてしまうようでウケている。


けれど、みんなポイを渡しても、ついつい夢中になると手づかみしてしまう。

爪たてられると魚傷むんだけどなあ。


だけど…。

「私、金魚ちゃんペットにするの」という声もあるにはあるけど、かなり少なく、「私おやつに食べちゃおーっと」という声が断然多い。

だから、まあ、猫たちにとっては、金魚はペットというよりお食事なんだろう。

これぞ、生け作り!?


魚もこんなに猫に囲まれてビビるだろうなあ。


「とれとれぴちぴちの金魚ちゃんですよー」


「おいしい魚ありますよ!」


いつの間にか呼び込みの声はこんなものに変わっていった。


「へい、回転ずし食べてってー!」


「今日朝とれたてだよー!」


向かいでは負けじと漁師猫〈タマ〉が漁をし終えたばかりの魚で寿司に握って回していた。

となりでデブ猫〈ショコラ〉も張り切っている。

水槽に入れた魚を取り出しては、爪でバリバリとうろこをはがし、さばいていた。


まあ、なんて便利なことで。


「タマちゃんよー。この魚うまいなあ」


「おい、ショコラ。食ってばかりいないで早く皿に並べろよ」


どうやらデブ猫〈ショコラ〉はつまみ食いが目的のようだ。


「ねえ、スタンプラリーってここはどこにスタンプあるの?」


子猫が首からスタンプラリーの用紙をぶら下げてうろうろとしていた。


「おい、坊主。わしが押しといてやろう」


そういって、デブ猫〈ショコラ〉が自分の肉球をスタンプ代わりにして用紙に押した。


即席だ。


すると奥からデブ猫の妻〈エクレア〉が出てきて「だめですよ。肉球スタンプは誰でも押せてしまうからちゃんと別のスタンプ用意したんじゃありませんか」


「うひゃひゃひゃー。そうだったっけ?」


あの笑い方、確信犯だな。


「えー、せっかく集めていたのに。わーん!」


それを聞いた子猫は泣き出してしまった。


猫なのにわんわん泣くんだ、衝撃的。


あちこちで、いろんな猫たちの騒ぐ声や祭りのお囃子などが聞こえてきた。

にぎやかな田舎の祭り風景を彷彿とさせた。


「あ、6匹ちゃん!」


向こうからリアカーに乗せられて、6匹ちゃんたちが子沢山ママ猫〈ミカン〉に連れられてやってきた。

6匹ちゃんたちはみんなこんなにぎやかなのは初めてなのか、きょろきょろとあちこちを見渡している。リアカーによじ登っている子もいた。


モフモフ…いつ見てもかわいいなあ。

あれ?でも、6匹いないんじゃない?


「お母さん、6匹ちゃん、6匹いないんじゃないですか?」

「え、そう?まあ、そのうちどこかで見つかるでしょう」


え?そうか?

そんないい加減でいいのだろうか?

もしかして6匹の数が徐々に少なくなるということもありえる!?


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