第20話 水島信也、にゃんこにいいように使われている気がするパート2。以上。


数日後。

水島信也が撮った動画で女子力猫〈ミーコ〉もユーチューバーとして華やかなデビューを飾った。


「白い猫ちゃんがおしゃまでとってもキュート!」

「それにしても、どういうしかけなの?まるで本当にあの白猫がしゃべっているみたいに見える!」

「すごい技術にびっくり!実写ですよね?」

「とにかく人間の女子顔負けのトーク力がサイコー!」


YouTubeの口コミには女子力猫〈ミーコ〉への賛辞が次々とアップされていた。

カウンターすでに200000PV。いまだに増え続けている。

ただの猫のお遊びだと思っていたけれど、あいつらだてにデジタルネイティヴじゃないな。

あなどれない…。たかが猫って思ってました。すんませんでした。心入れ替えます。


今日は画面の女子力猫〈ミーコ〉によるモフモフ毛の作り方の撮影だ。水島信也はデジイチの動画録画モードで女子力猫〈ミーコ〉を真正面から撮っていた。


「ブラッシングするときには少し逆毛気味にするのがポイントなの。そうすると全体的にフワってなるのよ。毛質が柔らかい猫っ毛の猫ちゃんにこそ、この方法は効果的なのよ。ぜひやってみて!これは猫も人間も同じことよ。フワッが大事。あくまでもフワッ。やりすぎるとハゲるから気をつけて」


女子力猫〈ミーコ〉はファッショントークをしていたかと思うと、いきなり

「そうそう、ミーコの今のマイブームは月9ドラマの「恋うま」なの。みなさん見てますか?今週はミーコもびっくり大どんでん返しでした。やるよねえ。りさこが勇気を出してコクったというのに、淳太ってばみんなの前でフルなんて。ないわー。淳太女心わからなすぎ。悪いけど、今週で敵を増やしたね。ここは男としてバシッと決めるところは決めなきゃね。りさこを思ってのこととはわからなくはないけれど、ここはやっぱ女子としては純愛を貫いて欲しかった!」


女子力猫〈ミーコ〉は興奮してきたのか、机をベシッと叩いた。机の上に載った紅茶の入ったティーカップが揺れる。

きっと、見る人にはこれ驚きだろう。女子力猫〈ミーコ〉のしゃべる姿はCGで声はアフレコと思っている人が大半なので、このタイミングに机を叩く猫ってそれだけでおもしれーのかもしれないなあ。


「ふう、でもね、淳太、多分、いやかなり確信があるんだけど、りさこに戻ることはないと思うの」


女子力猫〈ミーコ〉は机の上の紅茶をペロペロッと舐めて続けた。


「きっと、彼…私のことを好きになったんだと思うの。恋に落ちたんだわ!近頃やたらとこちらに目線を送ってくるの。昨日は…ウインクまで。これはもう、ふたりの間でしかわからない合図のようなものなんだけれど…私、わかるのよねえ。心の通じた者だけがわかる合図。ごめん、りさこ!けれど、悩むー。私にはクロちゃんがいるから。いや、淳太のこともだ…」


おい!


「カットカット!!いつまで喋る気だ!延々とカメラ回せっていうのか?!」


女子力猫〈ミーコ〉は不服そうな顔をして水島信也を見た。


「まあまあまあ」爽やか男子猫〈クロ〉がつかさず間に入る。


「ミーコちゃん、よかったですよ。お茶でも飲んでちょっと休憩してください。今巷で流行っている猫型マカロンも用意していますから」


「まあ素敵!いま女子の間で大人気ってテレビにも出てたわ!」


女子力猫〈ミーコ〉はすっかり興奮して、機嫌を直したようだった。

あなどれない…。クロのやつ、女の扱いも長けている。


「さあさあ、ミーコちゃん、猫型マカロンをどうぞ。アールグレイでも入れましょうかね?」


「クロちゃん、大好き!わあ、かわいい!!インスタにアップしなくちゃ」


そう言って女子力猫〈ミーコ〉はインスタ用の写真を撮り始める。


そう、女子力猫〈ミーコ〉のインスタも貴重な収入源になっていることは否めない。今や女子力猫〈ミーコ〉はインフルエンサーだ。


「うふふ。おいしい。それにしてもよく手に入れられたわね?」


女子力猫〈ミーコ〉はマカロンを片手に幸せそうに言った。


「それは簡単ですよ。楽天もアマゾンもありますから。ネットさえ繋がっていれば、いまどきどこでもお取り寄せできますよ」


「ええー!すごーい。お取り寄せって素敵!」


「喜んでいただけて良かったです」


「クロちゃんだーい好き!」


「ありがとうございます。ミーコちゃんは今日も爪がおしゃれでかわいいですよ」

「あ、クロちゃん気がついた?」


女子力猫〈ミーコ〉は自分の爪をニュッと出して、ライトの方にかざした。


「これ、今はやりのフレンチネイルなの。ポップな感じが気分なの」


「ミーコちゃんは明るくポップな感じがとてもお似合いですよ」


「うふふふ」


…。


こんな会話いつまでやっとるんじゃ!2人、もとい2匹はいつもこんな感じで撮影時間を大幅に超える。特に女子力猫〈ミーコ〉の話が長い。

オンナってやつは、人間も猫も変わらねー。すぐ機嫌が悪くなったり、気持ちがコロコロ変わるのもまたオンナ。

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