第10話 津倉佐々美、何の成果が出なくても生きてていいかな?
その夜、漁師猫〈タマ〉の収穫は魚5匹とカニ1匹だった。
漁師猫〈タマ〉はなかなかその道の達人らしく、日中はずっと陽だまりで昼寝をしていただけなんだけれど、いいタイミングでしっぽをゆらゆらさせて、垂らしたしっぽに魚がかかったら、つかさず反射的にペシッをしてうまく釣り上げていた。
ここまでいくとさすがだわ。おみそれしました。タマちゃんさん。
漁師猫〈タマ〉は津倉佐々美のことを哀れと思ったのか、釣り上げた魚を全部お土産に持たせてくれた。
「お嬢ちゃん、飲めや飲めや!今日は祝いじゃ!」
デブ猫〈ショコラ〉の家では、この魚が夜ごはんに上り、津倉佐々美の初仕事ということで飲めや歌えやの宴会となった。釣ったのは漁師猫〈タマ〉なんだけどね。
「母ちゃん、酒じゃ酒じゃー!」
食卓にはお酒も用意された。
猫に酒?まあ、異世界だからなんでもありか。こんなことぐらいでもういちいち驚かないもーん。お酒なんて久しぶり。今日はパーッと飲んで陽気に酔っぱらっちゃう?
「まあ、おひとつ」
デブ猫〈ショコラ〉が神妙な顔をして徳利を差し出した。
「あ、こりゃこりゃ、それじゃお言葉に甘えて」
お猪口を差し出すと、徳利から透明な液体が流れた。
「おっとっと」
こぼれそうなのをうまく回避して、なみなみに継がれた透明の液体を一気に飲み干す。
ぷはー。
…のはずだったんだけど。
ぶ。
吹き出しそうになった。
「これ水…!」
「お嬢ちゃん、飲むのはまだ早いわ!この粉ふりかけな意味ないやろ。この粉ふりかけな酔えるもんも酔えへんわ」
その粉はもしかして…。
「それ、またたびでしょう!」
「おお、そうや。うまいでー」
そういって、デブ猫〈ショコラ〉は自分のお猪口に注いだ水にまたたび粉をふりかけ、一気に飲み干した。
「うへへへへ」
途端にご機嫌になる。
「お嬢ちゃん、お前もいっとけ」
そういって、また、またたび粉をおちょこにふりかけようとするので津倉佐々美は必死に阻止した。
あぶねーあぶねー。
デブ猫〈ショコラ〉は、すっかり酔ってご機嫌になり、変な猫踊りを繰り広げた。
本当に猫はまたたびで酔えるらしい。
そんなこんなで2日目も過ぎていった。
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