第7話 津倉佐々美、にゃんこの家でテレビ見てまったりしてもいいかな?
茶の間にはテレビが流れていた。驚くことに、ここでは、テレビも元いた世界と同じものが流れている。つまり人間の出ている普通の番組だ。ずっと気になっていたドラマの続きを普通に見ることができた。
デブ猫〈ショコラ〉はだらだらとテレビを見ながらくつろいでいたかと思うと、いきなり毛づくろいを始めた。
体中ぺろぺろなめまわす。
肉球もなめる。
一度毛づくろいを始めるとやめられないようで、体中あちこちなめまわす。
…長い!!
一通りなめまわすと、今度はあぐらをかいて、楊枝で歯をシーシーしながら、
「最近の若い猫たちは、やれキャットフードだ、やれ猫缶だとしゃれたものばかり食うとるけど、そんなんはあかん。あんなんは邪道や。やっぱ、猫は猫らしく、ねこまんまをいただくというのが流儀ちゅうもんや」としたり顔で話した。
ちょうどそのとき、つけたままのテレビからキャットフードCMが流れた。「モモプチ」のCMで、グラスに盛られたキャットフードがいかにも上等そうだった。
「うまそう…」
デブ猫〈ショコラ〉は画面にくぎ付けだ。垂れるよだれに気づいて、慌てて腕でぬぐいながら言った。
「い、いや、あんなのはやっぱ邪道やな。そうや、そうや邪道や邪道や」
そういいながらも、どうもデブ猫〈ショコラ〉は新しいキャットフードが気になるようだった。
新しいものが食べたいなら食べたいって言えばいいのに…。
この世界では手に入らないんだろうか?
「おっと、今何時だ? 9時か。うほほーい」
デブ猫〈ショコラ〉は、いきなり気づいたように時計を見ると、チャンネルを合わせた。
1チャンネルのNNBで「ねこりん、ぱくりん」をやっていた。これは、いろんな人の裏側を掘って掘って掘りまくる番組だ。なかなか赤裸々な話が聞けて、元いた世界でもわりと人気がある。
異世界でもこの番組が見れるなんて思わなかった。でも、普通に新作だったし面白かった。こっちの世界でも新しいテレビ番組が見れるんだ。アニメのあれも、ドラマのこれも、続編が気になっているものがいくつかあったのでありがたい。
デブ猫〈ショコラ〉は「ねこりん、ぱくりん」を見終えると、いきなりこちらを向いて言った。
「お嬢ちゃん、明日から俺が紹介してやるところで働いてみろや」
い、いきなりだなあ。
「ど、どんなところですか?」津倉佐々美はちょっと不安になって聞いてみた。
「ま、それは明日のお楽しみ。まあ、いろいろと体験させてやっからさ。へへへ」おっさんは、不敵な笑みをこぼしてこちらを見た。
あ、悪い顔。あれは何か悪いことを考えている!
田中ショコラ、恐るべし!
津倉佐々美、大丈夫か?
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